CLOCKUPさんの「Maggot baits」感想です。


クロックアップさんが放つ、”クルーエルノワールADV”、「Maggot baits」。
2015年11月発売作品です。

体験版をプレイした限りでは、本当に最後までプレイしきることが出来るのかわからなくて、
ちょっとおっかなびっくりだったのですが、プレイし終えることが出来ました。

北関東のある土地は、ある日、地図からその存在を抹消された。
そこは邪法街と呼ばれ、災厄の魔女”ディザスターズウィッチ”が現れた場所。
魔女は、日本の警察など公組織鎮圧を退け、
邪法街には犯罪者や暴力集団が流入……、日本では、なくなった。

邪法街は、いわゆる社会的成功を収めた者達の、極端な快楽を満たすものも提供している。
超常の力と再生の力を備えた魔女を、どうやってか捉えて行うそれは、
異常でしかないもの。

そこへ。
一人の男が現れる。
額に大きな疵跡。手にした散弾銃を片手で扱い、そして瞳には暗い情念を宿し……。

まず、最初に。
システムが親切です。

テキストウィンドウが下部だけに表示されている場合、移動させることもできます。
テキストが結構大事に思えるのですが、そのフォントも大ぶりで読みやすい。
カウントダウンが必要な方には、そのカウント開始数を設定できます。

サウンドテストのアイリーンとヴァレンティノスがなんかいいですよね。

さて。感想ですけれども。

これまでプレイした、どの作品よりも遥かに、ハードです。
ハード、だなんて単語で片付けていいのかどうか、というと、違いますね。
凄惨な展開は、キャラクタの死につながるものばかり。

なのに、良く最後までプレイできたな、と思ったりします。

それは、最初にプレイして見ようと思った気持ちを、ある程度満たしてくれながら進んだから、
なのかもしれません。

異常としか思えない、残酷さが続く世界。
謎を与え、解を少しずつ与えていく。

つい目の前の凄惨な展開にばかり目を奪われがちですが、
それはさておいても、楽しむことができます。

というより、こういうタイプの作品って、とにかく表現が極端だったり、
シーンの連続ばかりで、ストーリーが感じられないモノが多いのですが、
この作品は違います。

それでいて、キャラクタ達が必死に生きて、
己の正しいと確信することを見つけ、それに懸けて。
そして絶望を重ねて。

魔女には、力がある。
力があるけれど、一部の人間達に弄ばれている。
何より、関東邪法街のトップは、至門という50代の男性ですから。

あの最強の魔女と思われるサンディですら、至門(白威大樹さん)をどこか恐れていて。
それは、何故なのか……。
最初のとっかかりは、そういうところだったと思います。

が、公式サイトからでも、エンディング曲のショート版を聞くことができますが、
こういう曲が似合うエンディングになっているんですね。

だから、本当にクルーエルノワールではあるんだけれども、
重苦しいシーンさえ、ある程度スキップできれば、
残りは楽しめると思います。

そこを切り取っても、ちゃんと成立します。

何故、角鹿は現在の形に堕ちたのか。
そして、魔女とは何か。

架上市では、何が起きたのか。

それらも全て、語られています。
ここが、この作品の面白いところです。

角鹿彰護(松岡武丸さん)は元々、日本警察特殊部隊にいました。
そこで今回の発端となる現象に遭遇し、そして現在の角鹿につながる……のですが。
実は、もっともっと前から、角鹿は削られ続けてきました。

あの事件は、あくまで最後の一押し、です。

幼い頃から、確信をもって進み、そしてそれが、別な側面を持つことを教えこまれます。
世間から、世界から。
そこで挫けず、さらに掴みとった確信で、さらに進んでいきます。

これを、繰り返しています。

そのうちに、警察へ入ることになりますが、あの事件は、想像を絶するもの。

それに直面してしまった角鹿は、培った力を振るいますが、
どんなに特殊部隊が精鋭であっても、できることは有限であって。

惨劇から、一つの希望、信念の渇望として掴んだものから、
聞こえたのは呪いの言葉で……。

このように、削られて、えぐられて、折られて。
凄惨なのは、シーンだけではありません。
一人の男を変えてしまった流れも伝えられていきます。

これは、実はブライアン・マックールであるとか、至門。
それから、ヴァレンティノスであっても、しっかりキャラクタの背景があるんですね。

だから、目の前の行動は極端で、全く賛成できないものばかりであったとしても、
……、というより、振り返ってみると、どの男性キャラクタも、応援も共感もできないわけです。
なのに、それでもこの作品を良いと思えるとするなら、
それは、男性キャラクタがすごくよかったから、でしょうか。

そうした男性キャラクタ達が、自身を髄まで懸けてぶつかりあう。

「そうまでして得た明日に、どんな意味がある?」
「明日など、必要あるものか……そんなものは、端から捨てている。俺はただ……」

どんなに手を伸ばしても、過去は過去。変えられはしないのに。
人は蛆虫になる。
……そして、人になることができるのか。

その上で。
突如現れた魔女と、その行く末も。

ルートは2つあり、事態が分かってからの後半、別ルートは、
分岐当初から、暗い未来しか想像できず、このまま進めることに抵抗感がとても増します。

角鹿と共に戦うことにした魔女たちはサンディに敗れ、連れ去られます。
また、同時に元外国武力闘士のブライアン・マックール(縞馬男爵さん)は、角鹿を襲います。

この時点での戦闘が、ルートで大きく違いますが、その影響はとても大きくて。
ものすごくハラハラしますね。

合間合間に挟まれる、事態の裏側。
事件の発端を伝えたからこその、魔女ではなくキャラクタの内面。
それを表現した上で……えぐり込んでみせたり。

再生能力、不死、強大な力。
なのに何故、魔女が妖蛆を恐れることがあるのか。

例えばグロリアは、なぜ強さを求めるのか。
勝利にこだわるのは、安心……。

彼女たちの恐れは、何に由来するのか。
それは、二十六の魔女が、産まれた理。
しかし、妖蛆が産まれた原理を考えてみると、
その液体が表す効果は、ちょっとかけ離れているような気も……。


精神が先か、肉体が先か。
あるいは、同時に両方か。
見ている側の気持ちをすら……。

サディスティックな面もかなり強いので、苦手な方はとてもプレイしにくいかもしれません。
わかります。

わかるのですけれど、あるからこその物語。
恐らくこれは、ある程度必要な要素だったのでしょうね。

あと、クリアしたあとのタイトル画面を見て、こう、寂寥感が……。
エンディング曲とのマッチングがすごいです、本当に。
(ということで、血の収穫のほうが好みですね)

異色な一作でした。プレイする価値はあると、思ったりします。
(でもハードなので無理にはおすすめできません……!)
Maggot baits
Maggot baits