あっぷりけさんの「時を紡ぐ約束」体験版プレイしました。
時を紡ぐ約束 応援中!


あっぷりけさんの新作は、”絆を育む純愛ADV”、「時を紡ぐ約束」。

「ずっと一緒にいよう」
誰もが口にする、儚い約束は、人の一生を意味するようだと――。

電車を乗り継ぎ、半日。
時坂颯人は、娘のみりあと共に小さな無人駅を抜けた。
大きな建物がない田舎町。
住み込みで働ける先を見つけたのだ。

――みりあは、颯人の本当の娘ではない。
颯人たちの後から、養護施設に預けられた子だ。
本当の名前は、佐原未莉という。
体にいくつもの傷跡があって、母親からのものだという。
だというのに、未莉は母親が迎えに来ることを求めていた。

助けたいと思った颯人は、偽りの家族、”おとうちゃん”になった。
未莉は、”みりあ”に。
次第に明るく接してくれるようになった。

事件が起き、颯人は、みりあを連れて施設を出た。
働いていた土木関係の仕事が倒産し、
ここ、湯ノ原へは、最後の望みをかけて、訪れたのだった。

駅で、みりあと遊んでいると、
ミニバンが停まり、助手席から一人の女性が降りてきた。
綺麗な黒髪、似合いすぎている和服。
凛々しい表情。思わず見惚れてしまう。

声をかけると、確かに勤め先となる草壁庵の方らしい。
ただ、応募者である颯人が、男だと知らなかったようだった。

駅から車で14分。
近くにも旅館がいくつかあるようだが、
温泉街の割りに、硫黄のにおいはあまりしなかった。

家族経営らしい草壁庵の面接。
だが、あまり詳しく聞かれなかった。
色々と尋ねられたり、冷ややかな目で見られることは、これまで何度もあった。
だから、さらに受け入れて貰えたことを、颯人は深く感謝した。

賄いはとても美味しく、露天風呂もよかった。
何より、温泉では、長旅の疲れと、新生活への緊張が、とてもほぐれた。

疲れて居たのか早々に寝てしまったみりあも、きっと喜ぶ。
この宿で、この街で。
颯人は、とても頑張れる気がした……。

体験版は617MBでした。

システムは前作と同じ、でしょうか。
シナリオセレクトやフローチャートがあり、シーン再生(プレビュー)機能もあります。
前作と違って、チャートにもきちんと名称が割り振られているところがいいかも。
(前作はコード番号でしたよね)
前よりすっきりしたフローになっているところも、いいですね。

(とはいえ、前作は少しミステリ風だったので、仕方ないところもありますかね)

ただ、バックログジャンプがないのがちょっとつらい。
後述しますけど、かなり進行が駆け足なので、ダイアログひとつの見落としで、
随分印象が変わってしまうんですよね。

さて、今作は、養護施設出身の主人公が、娘扱いしているみりあを連れ、
住み込みで働ける、湯ノ原の草壁庵へ訪れるところからはじまります。

その、湯ノ原の位置関係がよくわからないと、マップが追加されたようですが、
これは同感です。
それだけではなくて、人の動きが今ひとつわかりにくいですよね。

例えば、最初の場面、駅での出会い。
颯人は、ミニバンで駅まで迎えに来てくれた美咲と一緒に宿へ行くわけですが、
位置関係を把握するならここですよね。
その車内で移動しながら会話をするとか、みりあに「とうちゃんあれなんだ?」と言わせたりで。
そういうの、ないですよね。

また、この時点で、助手席から美咲は降りてきたので、
運転している人が居たはずですが、
それが……草壁庵の誰とも該当し無さそうです。

あと、それらをわからなくさせているのは、
一番足りないモノ、余韻を残さないテキストに仕上げているから、ではないでしょうか。

時間経過があっという間で、ワンクリックで場面がくるくる変わっていってしまいます。
それが何だったのか、受け手であるプレイヤーに考える時間がありません。
しんみりした曲が流れても、しんみりしている、と伝わる前に次の場面へ。
今の場面は何で挟まれていたのか悩むくらい。

または、何度かあるんですが、「何かいいことあったの?」と、
ヒロインが他のキャラクタに問われる場面で、(例えば美咲が里中さんにとか)
大抵が、その直前に主人公がヒロインと何かしているんですけど、
直接、主人公から褒められたとか、そういう事で無い場合に、
会話できたから嬉しい、ということになってしまうと思うんですよね。

テキストを、かなり削ぎ落としているので、
嬉しくしていることだけが強調されてしまうわけです。

よく、わかりません。本当は何を嬉しがっていたのかも。

時を紡ぐ約束。
颯人に受け継がれた、時の価値を計る魔法。
それの意味を探す物語でも、あるはずです。
なのに、シナリオ上では、しっかり時を考えさせる進行になっていません。

舞台設定や、人物設定はとても面白そうなのに、もっと大事にして欲しいですよね。

だから非常に舞台が狭く感じるし、
体験版中は、颯人の意識の狭さを感じました。
意図的にやっているのだとしたら、それはすごいと思うのですけれども。
であれば、その理由はなんなのか。

魅せるときは魅せる。
グラフィックだけで表現できないことは、きちんと時間をかける。
必要だと思うのです。

メインヒロインは、神宮美咲(桜乃ひよさん)。

草壁庵の若女将。
着物の着こなしが良く、美人ですが、
その要素を毎回台無しにしていると、颯人に直接言われる。

学園では物静かにし、誰とも会話せず過ごしていたが、
颯人が学園と宿とに関わることで、次第に素顔を出していく。

最終的には、学園でも旅館の時のように、
眼鏡を外し、髪を下ろして過ごすようになります。
そして、はじめての友達もできて。

結構食いしん坊。
歩きながら駄菓子、アイス、夜食を探しに部屋から出てくる、など。

颯人とは、変なところで張り合ったりもしますが、
かなり意識をしている、と捉えていいんですよね……?

記憶力がとても良く、それを活かし、美咲はさらに成長していく……。

他にもヒロインは恐らく3人、いると思うのです。

けれど、ですね。
沢村唯衣(遥そらさん)は、颯人の過去と繋がりがありそうなところがあるので、
まだいいのかもしれませんが、
碓氷先輩や心春は出さなくてもよかったかも、と思ったり。

キャラクタ用意するときに、型に嵌めすぎるのって、良くないと思います。
4人は居ないと、とか。
学園作ったから、宿では会わないキャラクタを用意しよう、とか。
学園はかなり省いて、宿中心に作っても良かったんじゃないでしょうか。
足りないくらいが丁度良い、んじゃないのかなと。

声の担当も、なかなかいい方ばかりです。
心春(柚花蓮さん)とか、里中(美月さん)さんとか、かわいいのは、
これきっと声ですね。あとセリフ。いいキャラではあります。

原画は、オダワラハコネさん、師走ほりおさん。

美人台無し版の美咲デザイン、いいですね。
隠しきれない、という感じに収まっているので、あとは日頃の態度とかで決まりそう。
美咲のデザインは、シンプルかつ落ち着いていていいと思います。
心春も好きですが、作品にマッチしたデザインとは、ちょっと思いにくい、かな。

音楽は、前作「花の野に咲くうたかたの」に続き、鷹石しのぶさん
シナリオは、憲yukiさん、しまとらさん。

今のところ活かされていない、颯人の魔法ですが、
”自分の時間を対価に、過程を省略し、等しい価値の現象を得る”といったもので、
颯人は、母から教わったものです。

例えば。
10秒間でどんな現象を得たいか考える。
その10秒間は何もしない。何も得ていない。
10秒を失っている。
その10秒で、練った構成と失った時間が見合い、現象と等しくなったとき、
過程を省略して現象を得られる。

また、颯人に出来ないことは、魔法としても使えない。
一般的には、あれですね、チャージタイム10秒後に発動する、という感じでしょうか。

この魔法の準備が元で、颯人は時間感覚が鋭く、
時間に価値を見出したいと考えているようです。

けれど、数秒の時間の価値は、たかが知れていると思っており、
母は、人の時間に価値など無いと、伝えたかったのだろうか、と悩んでいます。

ただ、考えている、感じているということは、
本当に何もしていないのでしょうか……?
そんなこと、ないですよね。

それと、魔法のことやみりあのことを周囲に明かすのって、
さすがに違和感強いです。

それと、颯人の選択と、考えも。

今作では、結構描く範囲が広そうです。
颯人が教えられた魔法の意味、時間の価値とは……といったところを掴むことと、
養護施設という環境にいて、辛い思いをしてきたこと、
それが、施設から逃げた今も、追いかけてくること。

似たような悪意はいくらでも転がっていて、それに、巻き込まれてしまうこと。

変えられない現実があり、それに対して、颯人の魔法や、
颯人個人は、とても拙いこと。

それら拙さと悪意と社会は、颯人の居場所を奪おうとしていき、
周囲の人たちにも影響を与えてしまう。

絶たれた約束は、再び、紡ぐことができるのか。

体験版は早めにでていることから、
もう少し練る時間的ゆとりがありそうな気もします。
描きたいことが、きちんと描けるよう、調整に期待します。

2016年3月25日(金)発売予定です。

同梱特典として、ラフアートブック、オリジナルサウンドトラック、
さらに鷹石しのぶさんによるピアノアレンジアルバムがつきます。


ダウンロード販売もあります。