暁WORKSさんの「スイセイギンカ」感想です。
暁WORKSさんの「スイセイギンカ」は、
異星からの何かを扱ったSFサスペンス海外ドラマの雰囲気がある作品です。
ロズウェルとか。
昔、ある事件があり、そして10年後、その中心に居た安藤哲生が戻ってくる……。
そんな導入で、しかし、安藤哲生の性質までが明かされた体験版。
その、SF感に惹かれたところがありました。
さて、それでは感想です。
ネタバレ多めかな。
全ての素材のレベルが高いのが、このブランドさんです。
ちょっと不思議を置いておくことで、それが魅力になり、惹きつけられるわけですが、
本作の場合、10年前に起こったことは何なのか?ですね。
まず、そこがすごく良かったと思います。
そして、その不思議なものがあっても許されるのは、やっぱりこのブランドさんなんだと思います。
体験版で一番惹かれたのは、ここでしょうね。
その不思議が、最後まで不思議として物語上活用されていたのが良かったです。
銀色は、変に擬人化せず、不可侵。すごく良かったと思います。
変に続きの予感をさせずに終わらせられる素晴らしさ。
バッドエンドもしっかり用意されているところが良いです。
その先に居たいざなのお姉さん…じゃなかったお母さんはナニモノ?とか。
むしろ番犬として飼われたい。
終えて全体を振り返ってみると、構成がうまいと思うんです。
本来、これは一本道の物語。
一本道に集約されるべき要素を、あえてルートごとに分散して置いていく。
その上で、最後のルートに進みたくなるように小出しにしていく。
小出しにしていくんだけれど、それぞれのルートで完結感を出す。
それは難しいことだと思います。
やってのけているだけで、まずはすごい。
なので、シナリオ進行は、ほとんど満足しています。
それ以外の、すっごーく、細かいところをいいますね?
例えば、誤字はともかくですけれど、
画面と合わせてから、改めてテキストや表現を直しても良かったのかなと思うところが少し。
演出とのマッチ具合を合わせたほうが。
それによっては、進行を変えたりとかですかね。
例えば、星井雫が気を取り直して歩き出した瞬間、
銃のSE、激痛が走ったと記述、ならすごく良いと思うんですね。
一気にやってしまっているのでもったいない。
体験版でも出てきましたが、
主人公が、特効薬塗られたナイフに傷つけられて、
どんなふうな状態になっているか?ビジュアルでの演出が必要なシーンだと思うんです。
そこは、テキストを読んだ想像に任せて良いところではない。
プレイヤーにとって一番信用に足るキャラクタである主人公が、
こんな存在だった!というのは、こういうタイプの作品を読んでいて、
一番大事な脅かしポイントでしょう。
それを除いてしまうのは良くないですよね。
作品の魅力を削ってしまう。
二つ挙げましたが、
驚かすところは驚かした方がいいと思うんですよね。
ちょっとしたタイミングを前後させるだけで変わりますので。
また、見津鐘さん。
単なる振り返りで銀色を「あれは実験とは別」と語っちゃうのはもったいない。
ルートによるのかもしれませんが、
星井雫の足取りが掴みづらいところがありますね。
阿見が殺す→でも捉えられたという情報。どこに?
→しかし警察では行方不明。
ここがうまく読み取れませんでした。
ミスディレクション。
こういうのってアメリカ連続ドラマではある展開ですけど、
そういう細かいところを、上手く伝える手段が無いと厳しいですよね。
流れは止めず、何かありそうなことを、ほんのわずか一瞬で差し込んでおく。
映像ならできそうですが。
また、小さなディテールを活かし切れてないのがもったいない。
分からないものが、分からないように終わらせたのは良かったけど、
もう少し盛り上げが必要だったかも。
進行は、いざながロックされたルートで、それ以外の進行はフリーですが、
阿見マリア、城ヶ崎桃、星井青香、相馬いざなと進みました。
これがよかったのかどうか……。ちょっと判断がつきません。
いざなルートはいってみればTRUEですから、盛り上がらざるを得ない。
それを除くと、
すごく盛り上がるのは、青香ルートだったんじゃないかなと思ったり。
青香と、桜乃ひよさんとは、もう少しマッチすると良かったのかなと思いましたけれど、
それはそれとして。
変容を目の当たりにして、それが分かりやすく、かつ手に負えない感じが出ていて。
そして、まとめかた。
自らの身を呪い、ぶつける青香。
そして、銀色の世界。
答えを得て、拳を握りしめる哲生。流れる『青く滲む別れの空』。
必要な場だったと思うんですよね。
けれど、その選択。
星井雫は選んで人を殺す。だから誤りだとしていますが、
それは、青香の選択も同じ意味になっているように思えました。
恋人の好きとはなんか違う、といってた相馬いざなが、
ルートに入ると、彼氏になって欲しい好き、と突然言い出してしまうのはもったいない。
もう少しその辺り、感じさせてくれたらいいのに。
10年経っても親友。
けれど、親友らしいエピソードがないので、
いざなからみて、安藤哲生は、後悔の象徴だったのかなと。
そうはっきりと描いてくれたほうが、もっと盛り上がったかもしれません。
演じてくれる声には説得力があるけれど、もう少し何か欲しかった。
体験版の時に、少し駆け足気味じゃないかと思ったのですが、
最近のあかべぇグループさんは、
どうもある程度のボリュームに抑えるようにして見えますので。
もったいなかったな、と思ったりもして。
この物語だったらもっと盛ってくれたほうが良かったかも。
もうちょっと、浸りたいんです。
これ、なかなかない作品だと思いますよ。
本当だったら、見津鐘さんに渡されたもの、
マリアはイタズラみたいなもんだと捉えるのではなくて、
そこから生まれる物語の発展もあったかもしれないですよね?
E化は受け継がれるのか、みたいな実験として。
一方的に不可能として発展させないのでは無く。
納得しにくいのは、終わり方かな。
爆弾抱えて生きているようになる。
安藤哲生はがんばったけれど、全ての物事が安藤哲生のコントロールの外にある。
ここが結構大きいですよね。
すっきりは、しない。
抱えて生きるなら、その流れや思いが必要だった用に思いますし。
ガキ大将らしい、というまとめかた。
そのガキ大将が分からないこともあって。
シーンも含めてですけど、なんていうのかな。
ドラマチャンネルの作品のようでありつつも、そこはしっかりしていました。
生存をかけた上で、つながりがあり、萌えがあるような。
そこはしっかり感じられるんですよね。
良かったと思います。
見津鐘役の河村眞人さんと、刑事の南平大さんが素晴らしかったですね。
哲生にも声を入れてもよかったかな。
やっぱり沢澤砂羽さんはすごいですね。
いさなとしてガッチリハマっています。
最初の方の「ほんっとにもー!」とかボイス登録して何度も聞きたい。
イントネーションすごくうまい。
あとは、星井雫、杉原茉莉さんですね。
逃避行になるとすごく濃厚な感じが。
逃避行以外の退場時は、もう少しだけセリフを、
哀愁感じるものを言わせてほしかったなとは思うのだけれど。
そうだ。あと。
安藤哲生が、ものすごく大人に感じました。
色んな状況であるとか事情は様々あるんだけど、
全部無視して、ただ拳で殴りつけているように見えて、
実は全くそうではないんですよね。
全て飲み込んだ形で、それでもまっすぐに殴る、なんですね。
男前すぎます。男の背中ですよ。
ビジュアル的にはやんちゃな少年ですけどね。
さえき北都さんはすごいですね。
立ち絵にしてもCGにしても乱れがない。違和感を全く感じないんです。
で、体のバランスの良さ。
コメディが必要なところではきちんとコメディを描くし、
シーン中のビジュアルもなかなか。
彩色は淡いので、少しインパクトにかけるかなと思ったのですが、
だからこその、物語のシリアスさが出ていたように思います。
面白かった。
ああそうだ。
あと。音楽面ですが、
『揺れて、濡れて』は「働くオトナの恋愛事情」?
『Crisis』『進み始めた君の一歩』なんかは、「竜騎士Bloody†Saga」?
なんて思えちゃったりするところがありました。
が、良い曲がすごくあったんですよ。
OP曲の『Hydrargyrum』もかっこいいですし、響きました。
『Mercruius』、『雨のように』、『安らかな涙』はもう作品の雰囲気そのまま。
『Dear my close friend』、『青く滲む別れの空』は聴いてると血が沸き立つ曲。
『Yillaster』の到達感。
やっぱりこの人うまいですよね、作曲は西坂恭平さんとtiko-μさん。
……とまあ、曲が相当良かったように思います。
総合的に見ても、やっぱりどこか、暁WORKSさん。
今回は、不思議の方向性がSF色あって、すごく楽しめました。
それにしても伊福部刑事の声って……。
「……美味い」がなんかこう、鬼の平蔵さん……?
2017年2月発売作品。
暁WORKSさんの「スイセイギンカ」は、
異星からの何かを扱ったSFサスペンス海外ドラマの雰囲気がある作品です。
ロズウェルとか。
昔、ある事件があり、そして10年後、その中心に居た安藤哲生が戻ってくる……。
そんな導入で、しかし、安藤哲生の性質までが明かされた体験版。
その、SF感に惹かれたところがありました。
さて、それでは感想です。
ネタバレ多めかな。
全ての素材のレベルが高いのが、このブランドさんです。
ちょっと不思議を置いておくことで、それが魅力になり、惹きつけられるわけですが、
本作の場合、10年前に起こったことは何なのか?ですね。
まず、そこがすごく良かったと思います。
そして、その不思議なものがあっても許されるのは、やっぱりこのブランドさんなんだと思います。
体験版で一番惹かれたのは、ここでしょうね。
その不思議が、最後まで不思議として物語上活用されていたのが良かったです。
銀色は、変に擬人化せず、不可侵。すごく良かったと思います。
変に続きの予感をさせずに終わらせられる素晴らしさ。
バッドエンドもしっかり用意されているところが良いです。
その先に居たいざなのお姉さん…じゃなかったお母さんはナニモノ?とか。
むしろ番犬として飼われたい。
終えて全体を振り返ってみると、構成がうまいと思うんです。
本来、これは一本道の物語。
一本道に集約されるべき要素を、あえてルートごとに分散して置いていく。
その上で、最後のルートに進みたくなるように小出しにしていく。
小出しにしていくんだけれど、それぞれのルートで完結感を出す。
それは難しいことだと思います。
やってのけているだけで、まずはすごい。
なので、シナリオ進行は、ほとんど満足しています。
それ以外の、すっごーく、細かいところをいいますね?
例えば、誤字はともかくですけれど、
画面と合わせてから、改めてテキストや表現を直しても良かったのかなと思うところが少し。
演出とのマッチ具合を合わせたほうが。
それによっては、進行を変えたりとかですかね。
例えば、星井雫が気を取り直して歩き出した瞬間、
銃のSE、激痛が走ったと記述、ならすごく良いと思うんですね。
一気にやってしまっているのでもったいない。
体験版でも出てきましたが、
主人公が、特効薬塗られたナイフに傷つけられて、
どんなふうな状態になっているか?ビジュアルでの演出が必要なシーンだと思うんです。
そこは、テキストを読んだ想像に任せて良いところではない。
プレイヤーにとって一番信用に足るキャラクタである主人公が、
こんな存在だった!というのは、こういうタイプの作品を読んでいて、
一番大事な脅かしポイントでしょう。
それを除いてしまうのは良くないですよね。
作品の魅力を削ってしまう。
二つ挙げましたが、
驚かすところは驚かした方がいいと思うんですよね。
ちょっとしたタイミングを前後させるだけで変わりますので。
また、見津鐘さん。
単なる振り返りで銀色を「あれは実験とは別」と語っちゃうのはもったいない。
ルートによるのかもしれませんが、
星井雫の足取りが掴みづらいところがありますね。
阿見が殺す→でも捉えられたという情報。どこに?
→しかし警察では行方不明。
ここがうまく読み取れませんでした。
ミスディレクション。
こういうのってアメリカ連続ドラマではある展開ですけど、
そういう細かいところを、上手く伝える手段が無いと厳しいですよね。
流れは止めず、何かありそうなことを、ほんのわずか一瞬で差し込んでおく。
映像ならできそうですが。
また、小さなディテールを活かし切れてないのがもったいない。
分からないものが、分からないように終わらせたのは良かったけど、
もう少し盛り上げが必要だったかも。
進行は、いざながロックされたルートで、それ以外の進行はフリーですが、
阿見マリア、城ヶ崎桃、星井青香、相馬いざなと進みました。
これがよかったのかどうか……。ちょっと判断がつきません。
いざなルートはいってみればTRUEですから、盛り上がらざるを得ない。
それを除くと、
すごく盛り上がるのは、青香ルートだったんじゃないかなと思ったり。
青香と、桜乃ひよさんとは、もう少しマッチすると良かったのかなと思いましたけれど、
それはそれとして。
変容を目の当たりにして、それが分かりやすく、かつ手に負えない感じが出ていて。
そして、まとめかた。
自らの身を呪い、ぶつける青香。
そして、銀色の世界。
答えを得て、拳を握りしめる哲生。流れる『青く滲む別れの空』。
必要な場だったと思うんですよね。
けれど、その選択。
星井雫は選んで人を殺す。だから誤りだとしていますが、
それは、青香の選択も同じ意味になっているように思えました。
恋人の好きとはなんか違う、といってた相馬いざなが、
ルートに入ると、彼氏になって欲しい好き、と突然言い出してしまうのはもったいない。
もう少しその辺り、感じさせてくれたらいいのに。
10年経っても親友。
けれど、親友らしいエピソードがないので、
いざなからみて、安藤哲生は、後悔の象徴だったのかなと。
そうはっきりと描いてくれたほうが、もっと盛り上がったかもしれません。
演じてくれる声には説得力があるけれど、もう少し何か欲しかった。
体験版の時に、少し駆け足気味じゃないかと思ったのですが、
最近のあかべぇグループさんは、
どうもある程度のボリュームに抑えるようにして見えますので。
もったいなかったな、と思ったりもして。
この物語だったらもっと盛ってくれたほうが良かったかも。
もうちょっと、浸りたいんです。
これ、なかなかない作品だと思いますよ。
本当だったら、見津鐘さんに渡されたもの、
マリアはイタズラみたいなもんだと捉えるのではなくて、
そこから生まれる物語の発展もあったかもしれないですよね?
E化は受け継がれるのか、みたいな実験として。
一方的に不可能として発展させないのでは無く。
納得しにくいのは、終わり方かな。
爆弾抱えて生きているようになる。
安藤哲生はがんばったけれど、全ての物事が安藤哲生のコントロールの外にある。
ここが結構大きいですよね。
すっきりは、しない。
抱えて生きるなら、その流れや思いが必要だった用に思いますし。
ガキ大将らしい、というまとめかた。
そのガキ大将が分からないこともあって。
シーンも含めてですけど、なんていうのかな。
ドラマチャンネルの作品のようでありつつも、そこはしっかりしていました。
生存をかけた上で、つながりがあり、萌えがあるような。
そこはしっかり感じられるんですよね。
良かったと思います。
見津鐘役の河村眞人さんと、刑事の南平大さんが素晴らしかったですね。
哲生にも声を入れてもよかったかな。
やっぱり沢澤砂羽さんはすごいですね。
いさなとしてガッチリハマっています。
最初の方の「ほんっとにもー!」とかボイス登録して何度も聞きたい。
イントネーションすごくうまい。
あとは、星井雫、杉原茉莉さんですね。
逃避行になるとすごく濃厚な感じが。
逃避行以外の退場時は、もう少しだけセリフを、
哀愁感じるものを言わせてほしかったなとは思うのだけれど。
そうだ。あと。
安藤哲生が、ものすごく大人に感じました。
色んな状況であるとか事情は様々あるんだけど、
全部無視して、ただ拳で殴りつけているように見えて、
実は全くそうではないんですよね。
全て飲み込んだ形で、それでもまっすぐに殴る、なんですね。
男前すぎます。男の背中ですよ。
ビジュアル的にはやんちゃな少年ですけどね。
さえき北都さんはすごいですね。
立ち絵にしてもCGにしても乱れがない。違和感を全く感じないんです。
で、体のバランスの良さ。
コメディが必要なところではきちんとコメディを描くし、
シーン中のビジュアルもなかなか。
彩色は淡いので、少しインパクトにかけるかなと思ったのですが、
だからこその、物語のシリアスさが出ていたように思います。
面白かった。
ああそうだ。
あと。音楽面ですが、
『揺れて、濡れて』は「働くオトナの恋愛事情」?
『Crisis』『進み始めた君の一歩』なんかは、「竜騎士Bloody†Saga」?
なんて思えちゃったりするところがありました。
が、良い曲がすごくあったんですよ。
OP曲の『Hydrargyrum』もかっこいいですし、響きました。
『Mercruius』、『雨のように』、『安らかな涙』はもう作品の雰囲気そのまま。
『Dear my close friend』、『青く滲む別れの空』は聴いてると血が沸き立つ曲。
『Yillaster』の到達感。
やっぱりこの人うまいですよね、作曲は西坂恭平さんとtiko-μさん。
……とまあ、曲が相当良かったように思います。
総合的に見ても、やっぱりどこか、暁WORKSさん。
今回は、不思議の方向性がSF色あって、すごく楽しめました。
それにしても伊福部刑事の声って……。
「……美味い」がなんかこう、鬼の平蔵さん……?
ダウンロード販売もあります。