ハイクオソフトさんの「面影レイルバック」感想です。

2017年9月発売作品。

ハイクオソフトさんの面影レイルバックは、
とある田舎の開拓に進出したい国際企業、吉岡建設と、
その田舎である櫓名の家との対立と協調を描く……という雰囲気を感じた体験版でした。

それでは、感想です。
ネタバレはあまりありません。

簡単にいってしまうと、ものすごくもったいない作品だったと思います。

体験版をプレイした限りでは、すごい要素満載だったんです。
村おこし、復興を目指そうとする櫓名の人々。
しかしその視点は、伝統と名産品を推すこと。

その名産品はやや微妙であり、そのままでは当然、売れていかない……。
なので、新しい名産が必要とされる、というところまでは想像できていました。
けれど、描かれません。特に、その先が。

吉岡建設は、その家の中に魑魅魍魎を飼うといわれ、
いつでも寝首をかかれる危険性がある……ため、
最強と思われた吉岡樹理すら、立場を危うくされる。
それくらい、吉岡の椅子の真ん中にいた人物は、強くしたたかだった。

そこに主人公はどう関わっていくか。
どちらを支持していくのか。
選択によって、関与の度合いも変わってきて、
もしかしたら、樹理と対立することもあるかもしれない。
力の差から、樹理に追い詰められ、慕って味方になってくれた九鬼飛鳥すら、倒れてしまうかもしれない。
あるいは、いろはを支配下に置くようになるのかもしれない。
毒味役の北浜綾を、主人公の手で倒して。


だって、
”対立する両家の2人に巻き込まれていく学園恋愛ADV”、でしょう?

なかったんです。そういうの。


進行が櫓名寄り、吉岡寄りに分かれているような、分かれていないような。
どのヒロインに近づきたいかを選ぶだけで、
どちらの勢力にいるか、は後付けのような選択肢。

あるルートでは、すごい企業のすごい重鎮だったはずの人物が直接乗り込んできて、
狼藉を働こうとする。
またあるルートでは、若き企業家、樹理が画面の外で活躍し、
主人公不在で問題事を片付けてくれます。
どっちの展開も、なんだかなぁ、という風に思ってしまいました。


主人公が何をするかと言えば、体験版で感じたとおり、
特に何もしないのです。

「二人の女性にフラフラしている奴がいて……」
今回の主人公は、こんなことを仰っていました。
恐らく「さくらさくら」の主人公のことですよね。

でも、今回の主人公って、何かしましたっけ。
より、酷くありませんか。

何故。それなのに、主人公で居られるのか。

これに関しては、九鬼飛鳥がはっきり明言しています。
これ、全編に言えることですけど、
「ここの人々はね、マサ兄の事大好きすぎて、頭茹だってるぜ?
 普通でない行動も普通だと思い込んでるからな」

or2

そのセリフが語られた、塩崎檸檬(月下夏樹さん)ルートが、良かったです。
いつも完璧な彼女がおかしくなる……というところを、
周囲が先に気づいてしまう。
流れは定番かもしれませんが、すごくすごく良かったです。

だからこそ、もっと色々と盛り込んで、読み応えを見せて欲しかったなと思います。


音楽すごく良かったと思います。場面が活きてました。
タイトル曲もすごくいい曲ですよね。
面影レイルバック。茶太さんの歌声と、不思議な曲調。
イントネーションを拾う転調、面白い曲です。


本当に、素材、企画、プロットなどなど、良いところはたくさんあったのに、
どうしてこんなに厚みを減らしてしまったんでしょう。
とっても、もったいないです。