RASKさんの「Re:LieF」感想です。

2016年10月発売作品。

RASKさんのデビュー作「Re:LieF~親愛なるあなたへ~」は、
”もう一度学園生活を送るADV”となっていますが、
ある意味言葉通りであり、言葉通りではなく……という感じでした。

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社会福祉公社LieFが行うトライメント計画は、
何らかの都合で社会から外れてしまったものたちへの、社会復帰プログラム。
ネットやコンビニなどがない離島で行われ、
一年後に復帰を目指すというもの。

箒木日向子は、知り合いの奨めもあり、この御雲島で行われるプロジェクトに参加した。
日向子は、しかし、最初の自己紹介から躓いてしまう。
職場を辞めさせられた時のトラウマが蘇って……。

ここでも失敗してしまった。身の縮む思いをしながら、
それでも、この島へたどり着くまでのこと、
背中を押す、手を差し伸べてくれる、新たな友人達と共に……

「試してみるんだ、もう一度。ここは、そういう場所だから」
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それでは感想です。
ネタバレはほぼありません。

この作品、数々の賞を受賞しております。
萌えゲーアワード、シナリオ賞金賞
Getchu.com2016美少女ゲーム大賞シナリオ部門一位グラフィック部門二位

なるほどなーと、納得感がすごいです。

グラフィックと音楽に、とにかくやられてしまった方も多いはずです。
が、ストーリーもしっかりしていた。
いや、ストーリーが、このグラフィックと音楽を必要としていたのだと実感しました。

体験版をプレイしていると、箒木日向子視点で物語は進行します。
モラトリアム。
御雲島の春のような明るい光景。新しいスタート。はじまりの日。
突きつけられる、脆さ。
そして、箒木日向子が、一つ乗り越える。トライメント。

「――箒木、日向子です」
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もうスタートからクライマックスみたいな展開でした。
箒木日向子という存在は、とても健気で魅力的に見えました。

そして、体験版の最後で、視点が急に変わります。
物語が、その箒木日向子を支えた一人、新田司視点に移行するのです。

新田司は、何でもできてしまうタイプ。
それでいて気遣いも上手く、人の手助けも押しつけがましくなくて。
でも、島の廃墟めいた場所で、幽霊を探していたと噂になっていたり。

そんな、新田司視点に移行すると、どうも少しあやふやになってきます。
あれだけ、”できる人”めいていた新田司が、
少しぼんやりした印象を持って、生活していることが分かります。

その違和感に、プレイヤーとしては少し身構えたこともありました。
(ライターさんが変わったとか、体験版までが良かったとか……)
でも、それも大事な演出の一つでした。

新田司自身に由来するもの。
そして、この島に対するためのもの。

この島に少しの謎があることは、体験版時点でも散りばめられていて、
新田司が探していた幽霊や、廃墟で出会ったアイ。
無人にしか思えない、トンネルの向こう側……、
もっともっとありますが、プレイヤーは気になることがたくさんあるはずです。
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決して、ハートフルなものだけでは無いと。
それをプレイヤーと一緒に探し歩くのが、新田司。

……でもあるんですが、新田司自身のことも、重要な要素です。
だんだんと体調を悪くしたり、遂には、倒れてしまったり。
それがまるで、強がり続けていたかのように、少しずつ剥がれていく何か。

一つ乗り越えた箒木日向子を見て、思ってしまう。
そう、彼女は”僕”なんかとは、違うのだ。
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reliefとは、苦痛の除去であり、抱えた心配を安心させることであり、
何かの救済を意味する語句のよう。
本編では、それが始まっていきます。

なんだろう。映画館で見ていたかのような印象です。
映画館だと、目の前で流される映像に集中する仕組みで、
ただ、流される映像を受け入れていくしか無いという面があります。
物語の流れを止めることが出来ない。
進んでいってしまう。物語の終わりに向けて。
一時停止したければ、席を立つしかない。
でも物語はそう創られてしまっていますから、結末は変わらない。

しかもそれが、圧倒的な質を持っていたら。
ちょっと待って欲しい。そんなことを感じながらも、でも続きが知りたい。
もどかしさを感じながら、向き合っていくことになる、そんな印象。

たどり着く救済は、どんな姿か。
誰も彼もが、様々な事情を抱えています。
それでも。

「試してみるんだ、もう一度」

何度となく登場するこの一節は、この作品にとって鮮烈なメッセージであるように思います。
PVにも使われていますし、OPは「Re:TrymenT」であり、
エンディングムービーにも登場します。ED「Re:TraumenD」でもあります。

登場人物達は、それぞれが何らかの躓きがあって、この島へ訪れています。
それでもと、進んでいくことで、何かを見つけ出していくのです。


True展開がある、ともいえる構成ですから、
一部のヒロインの進行や終わりは示唆だけとなっていて、
そこがすごくもったいないと思います。
これは、もっとしっかり観たかったという願望ですけれど。

それでも、どのヒロインも魅力的でした。

よくキャラクタに合った声優さんを割り当てたものだと感心します。
個人的には大舘流花の藤川なつさん。こういう声を出せる方は珍しいと思います。

何もヒロインだけでは無いのです。
新田司はもう黛希和さんだし、佐藤理人は片桐良一さんしか考えられないでしょう。

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けれどやっぱり、箒木日向子の葵ゆりさんを外して語れないと思います。
こんなに見事に日向子している声も、ないと思います。
脆さと芯の強さ。目を離したくなさ。
どのパートでも魅力的で、魅力的で。

世界がどうか、よりも。
自分がどう生きてきて、どう生きていくのか。
これまでを肯定して、もう一度、と何度となく歯を食いしばるような姿は、
すごく良かったと思います。

だから彼女が、もう一度、大切なものを奪われたと傷ついた場面は、
何とも言い難い気持ちになりました。

彼女の存在が本筋とは表現できないところも多いけれど、
それでも一番重要なところに、大切なものを抱いていたと思います。
自分で分かっていないようだけれど、彼女はとても強い人だ
新田司の、箒木日向子評。
最初から強さを持っていたのか、育ったのか。
どちらもだろうとは思うのですが、
彼女らしさはそのままだというのが、非常に魅力です。

困ったような顔。服装。デザインもかなり素晴らしいと思います。
応援したくなったヒロインになりました。

一方で、葵ゆりさん、中村夏菜も演じているんですよね。

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どのキャラクタも、それぞれの持つ強さで、魅せてくれました。
後半のパートは、それぞれのやれることを、それぞれの考えで、向き合うことを選んだ。
圧巻です。

だから、この場所は必要だった。
「自分は何者なのか。何を求めて、何ができるのか。
 少なくとも私は、それを探すためにここに来ました」
誰かが放つセリフは、誰かの気持ちで、そして、登場人物全てに共通する想い。
だから作品全部が語りかけてくるようで。

そのために様々な素材を用意しているんだなと強く感じます。
体験版をプレイするだけでも、どれだけ演出に気を遣っているのかがよく分かると思います。
本編でもそれは変わりません。
たった一瞬のためだけに用意されるイベントCG。美しい背景。
たった2分のためだけに用意される音楽。
全ては、その一場面を描くためになんだなと。
そしてそれは、一瞬でも、強く印象に残ります。
個別にエンディングムービーもあるし、それで正しかったと思うほど。

それらは、長くアイディアを練ってきたからこそ創られたものだと思います。

Boothにて発売中の「Traumend~Intermezzo~」。
エンディングテーマとして使われている『MooN LighT』の様々なバージョンが収録されています。

それも含めて辿ってみると、元々は同人作品だったようです。

商業製品版化するにあたり、様々な試行錯誤が窺えます。


ディレクターの雫将維さん、クレジットを見ていると、
ほぼ全てに関わっているんですよね。
恐らく映像を創り上げたいのではないでしょうか。
全ての素材は、そのように配置して……。
素晴らしいと思います。

一方で、コンフィグ等はもう少し手を加えても良いのではないかと思います。
セリフ一つ一つが大事な作品ですから。
コントロールボタンをクリックすると進行してしまう。それがAUTOボタンであっても。
ウィンドウサイズも可変調整できると嬉しかったですね。
あと、セーブファイルは圧倒的に足りませんよね。
セーブファイルは振り返りに使うんですけど、足りないです。


システム面の不満はありますが、
本当によく、描きたいことを時間を掛けられた作品です。
ぜひ味わっていただきたいと思います。

終わった後、浸りたくてエンディングムービーを4~5回連続で観た作品、初めてです。
「かつて踏み出せた一歩目を躊躇するのは、きっと正しいことなんだと。
 少なくとも私は、そう思ってる」



パッケージは販売終了、価格が高騰しています。
DMMさんではダウンロード版を販売しています。