ensembleさんの「恋はそっと咲く花のように」感想です。

2018年6月発売作品。

ensembleさんの「恋はそっと咲く花のように」は、
レストランフェリーチェを営む、学生でありながら料理人の皇城怜が、
関わっていく6人のヒロイン達との恋のお話。

人気シリーズですが、これまでの作品の違いは、公式サイトにある、この箇所。
恋を育み、その未来にある「結婚」を考えるようになる。

それでは感想です。ネタバレ少し多いかもしれません。
 

体験版イメージそのままの作品でした。良かったです。

まず、ビジュアル。
原画家さんが多いので、皇城怜が違うとか、イベントCGだと表情が違うことはあります。
また、キャラクタによって表情など細かいところが違うのですが、
彩色で見事にまとめ上げていると思います。
なので、キャラクタの立ち絵を並べたときに、
原画による差というより、統一感のある中での描き分けというか。
キャラクタがの個性に留まっている印象です。

やっぱり、ensembleさんで強いのは、このグラフィックだと思うんですよね。
柔らかな光彩をまとったヒロインは、素敵な存在として受け止めることができます。
このクオリティは素晴らしいです。


音楽。
タイトルに花を入れた統一感。ここのセンスはすごいなぁと思います。
『恋はそっと咲く花のように』って、きっと歌入れるつもりだったんじゃないかなと思いますが、
素敵なメロディに仕上がっているんですよね。
『パッと咲いて、ギュッとハグして』は、宮音沙希か来未さなえのイメージ。
『白百合は夕焼けに染められて』は、仕事も終わって落ち着いた時や、
学園の放課後に使われたりしていました。
『一輪の赤いバラ』は、何かにフォーカスするイメージ。
音楽だけでも良いのと、Ducaさんの歌うエンディング曲『Ribbon』が、
エンディングだ~という気持ちをかき立ててくれます。


ただ、システム面にいつも不満があります。
セーブファイルってこれで問題ないですか?
6人もヒロインいて、それなりの長さと、要素が詰まっているんですけど、
セーブしなくて良いと、するほどでもないと考えているのでしょうか。
……と、思うほど、足りません。

それと、ウィンドウサイズ。そろそろ自在に調整させて下さい。
セーブボタンとか押せなくて、システムボタンからセーブへ辿っています。


さて。イケメンシェフ学生の皇城怜がヒロインたちと関わる、のですが、
構成は、共通ルートでヒロインの事情が少し見えて、個別ルートで詳しく分かる、分岐型です。

体験版の時よりも、ビジュアルを大幅に追加しています。
サブキャラクタだったり、料理だったり、背景だったりと盛りだくさんです。

そのせいでしょうか。展開のスピードは変わらないのですが、
非常に良くなっている、伝わりやすくなっている印象です。

ヒロインたちが魅力的です。
ヒロインの数はとても多いのですが、ボリュームを出しすぎない程度に抑えて、
ストーリーを展開させていっています。
だから、ちょっと描写不足だなと思うのですが、
用意されているイベントはどれもが楽しくて、新鮮でした。

要素の選び方が良かったのかもしれませんね。


kh11
「怜くんは、私がいなきゃいや?」
早見美里(礼賀椎衣さん)

幼なじみで、クラスメイトで、美里の家もレストラン経営と共通点が多い。

他のヒロインに皇城が良い顔をしたり、ヒロインにアプローチを掛けられたりすることが、
とてもやきもきする様子。
ただ、作品の性質上、非常にサラッとしていました。

最初にルートを選んで、びっくりしました。良かったのです。

美里の父が有名レストランへ招かれ、引っ越さなくてはならなくなる。
父が喜んでいるので、なかなか言い出せなかったけれど、やっぱり今の学園に最後まで通いたい。
何より、主人公の近くに居たい。
この気持ちを抱えたまま、美里が言い出したのは「料理を教えて欲しい」
何か抱えていることに気付きながら、皇城怜はレクチャーメニューとなったオムライスを教える。
その中で、美里のことを大事に思う気持ちに気付いて。
転居問題の解決策を、なずなと同じように同居することに見出す。
そして、二人の距離がさらに縮まる……という流れ。

駆け足ではあるんですが、人の動かし方がうまいなぁと思いました。

ただ、いつの間にか結婚していた、結婚の場面を印象づけないのは意外でした。


kh9
「ありがとうの気持ち。少しは伝わったかな」
西園寺蓉子(北見六花さん)

街中で声をかけてきた理由は、家出してお腹が空いていたからだった。
そんな出会いをする、一つだけ年上のお姉さん。

何やら家からの束縛が厳しいように見えた容子。
その前の日、駅で電話越しに言い争いをしていたのが気になって、
つい、店を手伝って欲しいと言い出した主人公。

手伝いは順調に進んでいたが、ホテルにいないことに気付いた叔母が、容子を連れ戻す。
叔母からの帰還命令に矢面に立つ主人公に、つい、キスをしてしまう容子。
言葉と違い、それは感謝よりも大きな気持ちによるもので……。

なずなの面倒を見る先輩キャラクタという形にしていますが、
それほど回数多くは無いけれど、なずなのリボンを直しているところが表現されて、
ちょっとなずなの印象が、京都はんなりお淑やか、から外れてしまうのはもったいないかな。

また、叔母との対立を、コミックで落とすのはどうなんでしょうね。
ヒートアップして、爆発させないためというのも解るんですが、
悪く思わせないために入れていると思えてしまうわけですよね。
確かに、叔母と吉乃が会話して解決してしまうだけだと、
それはまた何だろうと思うのかもしれませんが。

あと、告白後から、書く人変わっているのかな?と思うのですが、どうでしょう。
急に話を聞かない人同士の展開に。
というか、給食形式だったんですか、この洋食店。

なずなも、兄様と暮らすことを目的に頑張ってきたことを忘れたような形ですし。

乗り越えるために色々な事柄を置いて、
その上で超えさせようとしたところ、なかなか良かったと思います。
主人公も、本当に寄り添って、一緒に乗り越えようとしてくれました。
だから、その想いが通じて、繋がり合えたのでしょうね。


kh8
「私……ちゃんと、しなきゃって……もっと、頑張らなきゃって……私……」
来未さなえ(歩サラさん)

早見美里の親友で、クラス委員長こと優等生。
最近何かと忙しそうだ……と思っていたら、次の日、学園に赤ちゃんを連れてきた!?
というお話。

ちょっと難しい要素だったと思うんです。
兄夫婦の子供を預かる。
兄は仕事を休めず、義理の姉は産後の体調不良で入院中。
保育園には預けられない。
だからこそ支えよう。そう思ったさなえを、主人公が支えていく。
学園に子供を連れてくる場面は、インパクトを持たせたかったのだと思いますけど、
少しでもやったことがあるとか、そういう場面が入って無くて、
ちょっと無謀なチャレンジに見えてしまっていました。

赤ちゃんと暮らすのもあと少し、となったとき、さなえが泣き出す。

それは、形を変えた依存なのだと思うんですよね。
でも、それもよくわかります。
それくらい、手の掛かることだろうから。
頑張ろう頑張ろうと気持ちを抱えて。これで良かったのか。もっと何かできたのかもしれない。
真面目なさなえらしくて良いと思います。

子供を二人で育てたから、新たに二人で育んでいく。
その時の気持ちを忘れないように、二人目を育てているようなつもりで。

ただ、この兄の子供、みなもちゃんのことだけに収まらないのが……。
何より、親友の早見美里が皇城怜のことを好きなことは知っていて。
由乃さんや、怜の祖父さんの存在感。ほっとします。一人じゃないんですよね。


kh7
「私だったら……頑張って欲しいなって思います」
宮音沙希(秋野花さん)

CMにドラマに引っ張りだこの売れっ子女優。
街で見かけられると追いかけられることもあるほどで、
逃げ込んだ先がフェリーチェだったことから、関わりができるようになります。

その忙しさ故、体調管理が難しく、学園にもあまり通えてない。
お昼ご飯はコンビニのおにぎり。そして倒れてしまう。
励ましたい、応援したいとメッセージを込めて、怜が料理を提供していく。

みんな一緒に食事をしながら、互いに相手のことを気にして。
メールのやり取りの場面も、ドキドキしながらやっているのが伝わって。
徐々に近づく二人の距離、というものが楽しめます。

王道なのかもしれません。
将を射んと欲すればまず馬を射よ、でしたし、
どうしてこういう状況なのか疑問に思うところは解消されていて。
でも、芸能人キャラクタの難しさ。ありますね。

ビジュアル的には一番魅力的でした。
ただ、物語の重要な場面でビジュアルの支えが少ないところも本当にもったいない。
ラジオの公開録音で、感受性の豊かさからお便りメールを読んでいて泣いてしまう、
……と受け取られるけれど、実は公開告白を受けていて泣いてしまうところとか。
本当に良かったですね。



「私が都会に来たかったもうひとつの理由は……兄さまと一緒に暮らしたかったからなんです」
藤堂なずな(藤咲ウサさん)

京都から出て他の場所で見聞を広める。そのために努力を見せて両親を説得してきた。
それもこれも、主人公と暮らしたいという気持ちで。
京都はんなりお淑やか……かというと、そんなこともありませんでした。他ルートも含めて。

幼い頃、知らない土地で道に迷っていたところ、皇城怜が手を引いてくれた。
その頃からの憧れで、隣に歩けるような女の子になりたいと思った。
……ということですが、ルートに入ると、グイグイ攻めてきます。

あの頃と比べて魅力的な女の子になれましたか?とストレートに反応を求める。
一緒に出掛けないかとストレートに誘う。
皇城怜のご飯をよそったり、甲斐甲斐しくしてみせる。
それでいて、「まじでありんす♪」と茶目っ気のある答えを返す。
実は最強の刺客であり、早見美里は最初から負けていたのでは無いかと思うほど。

このルートではボケボケな皇城怜が見られますが、
この状態では、もちろん藤堂なずなには太刀打ちできません。

藤堂なずなの通う学園は、皇城怜とは違う場所ですが、
二つの学園がチャリティーイベントに参加することになり、
二人はそれに参加するという繋がり方。

特典ルートだけあって、非常に展開が早いのですが、
なずならしいストーリーが用意されていました。


kh10
「だとしたら、私は『普通』がいちばん好きかも」
琴石伊織(くすはらゆいさん)

あの日、魅力的な笑顔で、駅に立っていた女の子。
けれどその子は、混雑した電車の中で具合を悪くしてしまいます。

気になる出会い方。
体験版中でも、何か身体の不調を抱えているのが分かるので、
それが何なのか。どうなってしまうのか。そのあたりが気になっていました。

恋を育んでいく過程と、結びつき。
そして体調のこと。

普通のことを望みとして記した「やりたいことノート」。
伊織は、これまで普通で居ることができなくて、
だからこそ、体験版でも怜たちにとって普通のことがやりたいことになっていました。
その、やりたいと思ったことに直向きになれる様が、応援したくなるヒロインです。

衣装も背景もたくさん用意されていて、その分だけ色々な展開がありました。

「前も同じ事があった気がする……」のところ、
実際に遭ったら我慢できるか分かりませんけど、それが皇城怜なのだろうし、
とても伊織らしいですよね。
こういうところ、良いなと思います。

色々あって、色々できるようになって、だからこその選択。
良いと思います。
本当に、一人のヒロインの成長を見守るようなストーリーでした。



kh12

ほとんどのストーリーにおいて、
フィオーレという場所を中心に置いておいているところは、面白いですよね。
何故そんなに広い空間を建てたのかという疑問も無くはないのですが、
主人公のために場を持ち上げることなく、そういうものとして進めたからこそ、
成功したかなと思います。

全般的には、盛り込みすぎてないかと思うのです。
例えば、西園寺蓉子の場合であれば、親子関係、親戚関係。
容子の学園生活。主人公との関わり方。
主人公の祖父との距離感。全て、わだかまりは融解していくわけですが、
どのシナリオも、もっともっと描き篭めた、ボリュームをもたせられたんじゃないかって。
ええ、もっとカタルシスを呼び起こせたんじゃないかって。
それくらい、要素は秀逸。それをまとめ上げたのも見事だと思います。
……なんですけど、盛り込みすぎてないかなと思います。
西園寺蓉子って、他のキャラクタに比べ要素は抑えめですし。

それだったら、キャラクタを絞ってもっと描き篭めてほしかったと思うのです。
このキャラクタが、ずっと愛されるように。


それと、公式サイトの人気投票ですけれども、
これはキャラクタ人気ではないのかもしれません。
ストーリーボリュームや、描かれた展開だったら、間違いなく琴石伊織なんですよね。
それが振るわないというのはちょっとよく分からないんです。
先に準備していたであろうミニゲーム。
用意されていたものと人気投票が合わないというのは。
確かに宮音沙希はビジュアルすごく強いし、好きですが。


動画や四コマも面白いですが、全体を見ていて、
もしかしたら、あれやってみよう、これやってみよう、を盛り込んで続けて、
今はもう、がんじがらめになってしまっているのかな、とも思えたり。


ただ。すごく癒やされる。
ほっとするんですよね。ensembleさんの、この物語。
人気あるの、わかります。
シーンも、二人の愛の過程で、果てにあるのがよく分かります。

今作はシリーズの中でもチャレンジングで、家族となることを描いています。
家族となるということは、二人だけでできることではありません。
そこから逃げなかったのは、すごく良いことだと思います。
――共にすることを、誓いますか?
エンディング曲の『Ribbon』が、すごくマッチしていて、良かったです。
ここはしっかり発注したんだろうなぁと思います。
あなたがくれたもの全てに、ありがとう――。

一緒に過ごす、そしてヒロインと結婚します。
そういわれていて、その内容が良かったら。そういう物語が読みたかったら。
この作品を選んでも良いのではないでしょうか。
「家族というのは、血の繋がりだけで出来ているものではない。
 それまで過ごした時間や、お互いを思い合う愛情が、結果として家族を作っていくのだ」
これは怜の祖父のセリフですが、この作品の根底にあるテーマかもしれないなと感じています。