シルキーズプラスDOLCEさんの「言の葉舞い散る夏の風鈴」感想です。
シルキーズプラス DOLCE 『言の葉舞い散る夏の風鈴』

2018年12月発売作品。

シルキーズプラスDOLCEさんの「言の葉舞い散る夏の風鈴」は、
声優部ラブコメディ。
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家庭の事情で留年した始業式へ向かう途中、
永らくファンだった日華こころの声を直接耳にした波瀬督は、
同じく留年した真額詞葉が、顔出しNG声優、日華こころだと知ってしまう。

その秘密を守りながら、声優同好会を立ち上げようとする野原ゆう、
さらに一年留年している菩提樹仰子、
車椅子ながら演技が上手い百花奏と、声優部としての活動を始めていく……。

という導入でした。
それでは感想です。ネタバレ強めです。


プレイが終わって、あまり良い印象ではありません。
最後まで進めて、納得感はあるのですが、これで良かったのかなと疑問が残ります。

時間がないなかでしっかり製品をリリースされたことは見事だと思います。
延期もないわけですし、これで行こうと決めたところは守れたかもしれません。
けれどこれで全部かな、出し切ったかなとは、疑問に思います。

まず。ブランドアピールはこうです。
「景の海のアペイリア」シナリオを手掛けた範乃秋晴氏と
原画家ひなたもも氏との初のコラボレーション!!
多少なりとも意識した購入ポイントです。
景の海のアペイリア」は面白かったですから。
が、完全につられたなと、しばらく思っていました。

共通ルートを終わっても、ヒロインの魅力が分からないのです。
場の魅力も。

9割以上会話の劇。
コメディ部分とキャラクタ設定のシリアスな部分の噛み合わせが悪いです。
このあたりは、体験版をプレイした時点から予兆がありました。
けれど、製品版範囲に入っても、そのままだとは思わなかったのです。


システムは、オンラインアップデートを搭載している様子です。
ver 1.01がリリースされています。
が、誤字脱字がまだありますね。
漢字変換ミス、てにをは抜け、重複。

特典の主題歌CDですが、ちゃんと歌詞までついてて嬉しいですね。
盤面だけの場合が多いですから。こういうところの気遣いは素晴らしい。
ただ、どちらかといえば、”こころんの励まCD”が付いていた方がよかったかもしれません。
物語が深まる特典。

おまけモードで、シナリオ中にある演技パート再生が付いていません。
セーブファイルで対応してくださいということなのかもしれませんね。
ちょっともったいなく思いました。

BGVが入ってます。
シーン中も、単なる声ではなく、セリフとして入っていて、とても良いと思います。
けれど、バックログ等を使っても再生できないんですよね、BGVは。
そこがすごくもったいない。
こういう部分も、もう少し開発に余裕があれば何とかなったのでしょうか。


彩色は、もう少し明るめでも良かったと思います。
ひなたももさんの原画はかなり良いのですが、彩色がマットで艶のあるタイプ。
この作品は部活ラブコメ寄りです。
こう、爽やかさというかライトな印象がもう少し出ても良かったですよね。
でも、花火の場面。演出すごく光っていたと思います。
こういうやり方あるのかと感心してしまいました。


シルキーズプラスさん。
この作品でも、非常にきれいなCGがたくさん見られます。
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これは本当に見事としか言い様がないです。

公式サイトにも掲載されていますが、これだけ見るとすごく良い場面で、
ヒロインの魅力溢れる場面なのだろうなと思うのですが……。
「手が、つながってる感じが、なんかエロいの」
こんなセリフ……野原ゆうらしいとはいえますが、
イベントCGの出来に負けているキャラクタ作り、シナリオになってしまっています。

野原ゆうは、恋が分からない。
王道ですし面白いのですが、それを大して本人が重要視していないし、
でも官能小説などに親しんでいる設定と、合致していないように思えます。

これ、遙そらさん担当なんですが、かわいいとは思えなくて。
非常に苦手なキャラクタでした。

ほぼ他力だし、考えなしだし、演技が好きという気持ちとちぐはぐ。
気になるところ、際限なく悪く書いてしまいそうなので絞りますと、
キャラクタとしての決め台詞、「何でもするからお願い」は、
何か出来る人が言うことじゃないかと思うんですよね。

登場時の設定も良くないところが多いのですが、
このキャラクタに対し、声が出なくなるというイベントを与えます。
シナリオも短いのに持たせすぎな印象があります。

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菩提樹仰子も同等です。
名は体を表す、ではないですが、大仰な芝居なのは体験版から知っていました。
コメディだからそうしたのか、キャラクタに求める演技だったのか、
指定の理由が未だに分かりません。
後半になると、いつものくすはらゆいさんの声になるのも含めて。
このキャラクタは、友達に対する気持ちに向き合うことが必要となります。

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百花奏は、気になっていたヒロインでもあります。
というのも、車椅子環境ですから、どんな風に気持ちが繋がって、そしてシーンはどうするのか。
珍しいですよね、足が悪いヒロインって。
けれど、意外にいつも通りでした。
秋野花さんの演技は凄まじいと思うのですが、
何かもうちょっとイベントを用意してあげられなかったでしょうか。

このキャラクタに対し、車椅子だから歩く気持ちが分からないとぶつけてきます。
また、真額詞葉の別な仕事を知らないと不自然な流れがあります。

この3人は、真額詞葉のための前座のようです。

口癖を付ける。尖った設定を入れる。過剰な演技でやってもらう。
そして、3人とも、演技で詰まるところは、経験がなく想像の及ばないこと。
ここがキャラクタの心理的な引っかかり。

演技は、進めば進むほど、本人の心と向き合うことになるというのは印象的な一節で、
よく分かります。

けれど、全体的にはインスタント過ぎる印象があるんですね。
声が良い声優さんを用意すれば、シナリオはそこまで煮詰めなくても問題ない、
そういう作り方に思えてしまいました。

なので、駆け足だし、エンディング直前でいきなり上手く演技できるようになり、
読み進めていて、一体何が?と思うほど。

キャラクタあたりのシーンは3回程度。
どのルートもそうですが、そこまで尺を詰めたいのか、シーンが連続するんですよね。
もったいない印象です。
この構成がとても、引っかかっています。

例えば。
野原ゆうも、菩提樹先輩も登場させずに、
百花奏に全てを持たせれば良かったのではと思います。
この物語、四人居なければならなかった訳では、ないですよね。

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けれど、真額詞葉のシナリオ、夏の卒業式では、
他の3ルートを前提として進行していきます。

しかしながら、波瀬督と親密にならないと、3キャラクタは突破することができません。
なので少し違和感が残ったままの進行になります。
各ルートでちりばめられた、日華こころにとって大事な要素。
裏名義のお仕事だったり、ライバルだったり、辞めた理由が提示されており、
あとはそれを乗り越えるだけの進行が、「夏の卒業式」。
なので、少し物足りなかったです。

そう考えると、この作品は、真額詞葉のためにあったようには、見えます。
けれど、その下支えになっているのは、他の3キャラクタ。
両方を取っているように見えるのですが、取れては居ないんですよね。

そういえば、留年設定は何も活かされていないのですが、なぜ用意した設定なのでしょうか。


ひなたももさん原画なためか、
ヒロインの服装がとてもかわいらしい。下着も良いんですよね。
こういうところは、さすがだなと強く感じています。
ヒロインらしさというか、リアリティというか。引き出せている印象です。

それと、声優さん、特に桜川未央さんの魅力をたくさん感じられる作品であって、
ファンの方にはお勧めしたいところもあります。