戯画さんの「アオナツライン」体験版プレイしました。

戯画さんの新作は「アオナツライン」。

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「あー……市内の神社仏閣巡りとか?」
「やっぱり、バンド結成! じゃない?」
「音島の食堂、全メニュー制覇とかどーよ?」

及川達観、向坂海希、榊千尋。
いつも通り朝から三人で通学する。
最近の話題はもっぱら、夏休みの計画だ。
あーでもないこーでもないと、三人で企画を投げては、納得できるものが出てこないでいた。

その話題に、割り込んできた人物がいた。
隣の組の転校生だ。突然のことで、顔が広い向坂海希でも名前が出てこない。
「本日はお日柄も良く、このたび、どうしてもお伝えしたいことが!」
明らかに恥ずかしさの混じった大きな声が、通学中の学生達の目を集めてしまう。
しかも、彼女の見ている視線は、及川達観に向けられていた。
「こ、ここ、ここでは恥ずかしいので……その……放課後に改めて、ではダメでしょうか?」
恥ずかしさから絞り出したのは、放課後の屋上への呼び出し。
蚊帳の外になりつつある友人二人の、わくわくしたような声が聞こえるが、
転校生と同じくらい赤い顔を自覚している達観には、反応する余裕は無かった。

転校生は、仲手川結という名前。
なんでも、横浜都心の超お嬢様学園、七葉学園に居たそうで、
黒塗りの高級車で送り迎えされている、持ってくる弁当は重箱段重ね……といった噂は、
早速、向坂海希が集めてくれた。

約束したし……などと言い訳しつつ、期待そのもので達観が放課後の屋上へ向かうと、
仲手川結は、既に待っていた。
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「ずっと……その、気になっていまして……」
やっと話し始めた仲手川結の、もじもじと指をいじくる仕草。
うっすら赤い頬に、達観は、やはり、と思う。
「そ、そうなんだ……。ありがとう」
ただ、声の震えを誤魔化すことができたかは、自分でも分からない。
「で、では……お返事はOKということでしょうかっ!?」
「で、でもほら、俺はまだ仲手川さんのことをよく知らないから……」
こういう時こそ紳士的に決めなくてはいけない……はずだと達観は思った。
そんな、逃げといわれても仕方ない返事に、仲手川結は提案してくる。
「それなら、お試し……ではいかがでしょうか?」――。

体験版は、1.04GBでした。

原画は、うみこさん。
シナリオは、大地こねこさん、冬野どんぶくさん。


画面の印象がとにかく変わりました。
シンプルなのに素材の良さが感じられるキャラクタのデザイン。
アウトラインを強く描かず、淡い彩色のグラフィック。
これは背景にも共通しています。
作品コンセプトを描くために用意したのでしょうね。素敵です。

システムに新たなフォントが搭載されています。
が、システム面の機能やシステムSEは従来通りです。
せっかくUIビジュアルを刷新されたので、システムSEも変更して良かったのではないでしょうか。

ただ、画面の切り替えなどを行うと、タスクバー格納ができないバグがあります。
アプリとしては落ちてしまっているようですが、バックグラウンドプロセスには残っている。
これが幾度となく発生します。安定面に不安があります。
体験版は、1.01で立ち絵の修正となっていますので、
修正対象とはなっていないようですね。


さて、この作品は、元々のグループだった主人公達3人を中心に、
転入生、そして下級生を加え、
5人グループとなる彼らがの過ごす、ひと夏を追いかける流れのようです。

スタートは、5月。そこから夏休みまでが描かれ、夏休みが個別ルートとのこと。
体験版では6月までプレイできます。

途中まで、非常に楽しめました。
戯画さんも少し改めたのかなと思ったほど。
新鮮味があって、すごく爽やかで。
ビジュアルを整え、サイトの造りを統一、配役をしっかりする。
”シネマティック恋愛アドベンチャー”にふさわしいものを用意する。
制作に携わった方達の名前を見ていますと、
今、人気のクリエイターを起用していると思うのです。良いですよね。

ただ、それが。
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椎野ことね(夏和小さん)
主人公達の下級生。

イマドキ女子学生。メイクもファッションも遊びもイマドキ。
しかしそれは学園に入ってから。元々は地味子で学園デビュー。

イマドキ女子学生グループに入ったものの、ちょっとしたミスでグループに居づらくなり、
そこで仲手川結に声をかけられる。
グループに入り、仲良く過ごせるものの、抜けたグループからやっかみを受け、
そのやっかみは、ことねだけでなく、主人公達にも向けられる。

ことねを狙っていた力の強い上級生の耳に入れ、
その上級生が主人公達へ攻撃をしてくるという……。

この流れ、青春ブタ野郎シリーズでしょうか。
どうみてもラプラスの小悪魔で、がっかりしてしまいました。

とはいえ、主人公がブタ野郎ほど格好良くは無いので、
その後の主人公の手も、ちょっと微妙に感じます。

最初から何かありそう、芯が強い。
そういう印象のないキャラクタが博打を相手に持ちかける。
賭けの対象は、ことね。
主人公が負けたら、上級生がことねを好きにして良い、そんな条件。
それは仲手川結も向坂海希も心配するでしょうね。

でも、全学年の前で勝利を掴む展開も含めて、ブタ野郎です。

変わったかな、と思っていたら、こうですか。

過去、戯画さんは「ハルキス」において、やったことがあります。
確かにやったのはライターさんなのかもしれませんが、
その後、戯画さんが反省を述べたわけではありません。
で、今回のことはちょっと違いますが、分からないはずもない事柄を盛り込む。
前回と同じような事をしている理由は、何なのでしょうか。


それと、確かに今回起用された方々は素晴らしいのですが、
戯画さんの場合、元々の背景の方が良かったと思うのです。
ハルキス」などではY.Mさんとクレジットされていた方のほうが、
実在感のある背景だったように思います。


それ以外は期待が持てます。

会話主体ではあるものの、これまでおざなりだった地の文もフォローされているし、
駆け足だった進行ではありません。
ここがすごく良くて、掲げた恋愛アドベンチャーらしさを感じられます。
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作中で音島として描かれる、江ノ島の地を惜しみなく表現して、物語の強度を高めています。

主人公達が良く過ごす、古民家を改装したカフェMICOでは背景が活きて、
実際にある場所に思えてイメージが掴みやすい。
MICOの厨房はさらにそれらしくて良いですね。床がタイルです。

ハワイアンバーガー店は江ノ島にありますし、人気です。
屋台車が密集しているところもあります。
そして空には実際にトンビが飛んでいるんですよね、かなり多く。

音周りもかなり気を遣っていて、環境音というのでしょうか。
トンビのSEだけではなくて、風の音がしっかりしているんですね。
遠く、波音が聞こえてきそうなイメージです。
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教室に差し込む陽光も、青春の印象です。

このあたり、これまでの作品なら、その場所を知っているわけでもないのに、
知っていて当たり前であるかのように、描かれませんでした。
参加されたクリエイターの皆さんの、どこまでも落とし込もうとする姿勢に脱帽です。

こういう場所でなら、青春物語を送っていそうなキャラクタたちが居そう。
そう思わせる、音島を作り上げてくれています。


主人公はぼんやりした印象になってしまっていますが、
登場人物が軒並み魅力的に描かれているのです。
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まず、向坂海希(小鳥居夕花さん)の描き方が、非常に良いです。
末っ子気質というのも良く伝わります。
三人が三人で居られたのは、間違いなく根明でフレンドリーな向坂海希のお陰だと思います。
男子二人と同じように接しながら、でもきちんとお礼を言える。
幼なじみらしい”アレ”で通じる距離感と、
でも仲手川結が近づいてきた時は主人公と近づけようとしたり、
または椎野ことねの面倒を見ようとしたりと、これはモテるのが本当によく分かります。

男性友人キャラクタの榊千尋が、またすごく良いですね。
通常、男性サブキャラクタって本当に脇に置いておかれがちですが、
榊千尋の場合はそんなこともありません。
安東朝夜さんの声も、ものすごくマッチしています。
口は悪いかもしれないけれど、絶対に悪い存在では無く、
許せないことは許せないとハッキリ言える。
こんな友人欲しかった、そんなタイプかもしれません。
前の学校でバスケをやっていたが、事件を起こし退部していますが、
そのあたりの話も読めると嬉しいですね。

この二人と、主人公を合わせて3人。
彼らを見かける昼休みのバスケットコートは、キラキラしていたでしょうね……。

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突然、涙を見せた仲手川結に動転して、どちらからともなく握り合った手はそのままだった。
しばらくすると落ち着いたのか、
みんなで一緒に過ごせていることが夢のようだと思ったからだと、仲手川はこぼした。
本当のところはわからないが、様々な感情があったろうことは、及川達観にも理解できた。
謝ってくる仲手川に、達観は安心させようと笑みを返す。
「大丈夫だよ。……こういうのも、なんかいいね。……青春っぽい」
泣いていた反動もあるのだろう、勢い込んで仲手川が言う。
「そっ、そうですね!これが青春……アオハルですね!」
「……、アオハルっていうか、もう春は終わっちゃうけどね」
5月も終わり。6月に入り、長いトンネルみたいな梅雨を抜ければ……、
「春は終わっちゃいますか……」
結は、少しうつむき考え込んでから、目尻に残っていた涙を拭い去るようにして言った。
「それなら、私たちは、アオナツですねっ」

そう。
――暑苦しいけど、一年で一番賑やかな季節がやってくる。
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うみこさんのF3サイズのキャンパスアート、アクリルスタンドが付いた、
SUMMERTIME BLUE Editionと、



サウンドトラックCDのみが付属するBLUE Editionの2通りがあります。

2019年3月29日(金)発売予定です。