みなとカーニバルさんの「和香様の座する世界」感想です。
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2019年4月発売作品。

みなとカーニバルさんの「和香様の座する世界」は、”神様姉妹のお世話をするADV”。

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亡くなった祖父の神社を継ぐ、といってもどうしていいのか分からないが、
とにかく管理という名目で住むことになった梅園遼河が、
妙な水音に引かれると、不思議な場所に封印されていた神を解放してしまう。

最初は喋ることもできなかった恐ろしい姿の神は、特売カップラーメンと水を与えると、
翌日には喋ることができるようになり、ワカと名乗る。
ワカの要求は、妹だというルルハを探すことで……。

それでは、感想です。
ネタバレはありません。

うん、面白かったです。

今の世の中にある要素を、うまくまとめ上げた作品といえるでしょう。
作中に倣い、編纂といっても良いのかもしれません。
その上で物語として、面白く展開させていっています。

このあたりは、企画・制作総指揮のタカヒロさんと、
シナリオの田中ロミオさんらしい巧さが光っています。

体験版をプレイされた方は分かると思いますが、非常に進行が軽やかです。
グラフィックは冴えていますが、地の文はほぼ無く、キャラクタのセリフで進んでいきます。

一番良いのは、設定、構成の部分かもしれません。
または、仕組み。

日本神話を軸にしながら、物語をどのように進行させるか。
この部分が非常に巧みだったように思います。

だから、キャラクタの魅力という面からすると、少し抑え目になってしまう。
これは仕方ないですね。

そういう意味では、アピールが難しい作品といえるのかもしれません。
物語の構成を明かすわけにはいかない。
ADV作品ではネタバレが致命的なものですが、特にこの作品では明かせないのです。
構成で魅せるものだから。
こんなふうになりますよ、という示唆すら厳しい。

それでも、全体的には魅せる展開が待っています。
なかなかこういう作品は無かったように思いますし、満足度はかなり高いです。
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さて。不満点。
ほんの少しですが、あります。
アップデートバグが起きたようで、何度か製品を再インストールしました。
環境設定でのエラーが何度も出るのです。
そこは何とかクリアしたのですが、1.10アップデートをすると、
その後のファイル検査でエラーが必ず出ます。
途中でおかしな動作をしないか、不安になりながらプレイしていました。

主人公、梅園遼河について。
会話主体の進行だから、仕方が無いとは思いますが、
「え?」という発言が多いです。
人一倍鈍いのか、それとも、物語を進めるためなのか、
あるいは、接続詞代わりなのかもしれませんが。
発している遼河がとにかく良く思えません。
実際、上記のような理由で使っているのが見受けられます。
というか、遼河って終始ぼんやりしていますよね。
確かにそんな環境になったら、上手く立ち回れるかといえば難しいとは思うのですが。


体験版体験版2とリリースされ、少しずつ変わってきているのが実感できていましたが、
体験版2から製品版へも、また変わっているとは思いませんでした。
ストーリーの追加がなされています。
これはは、あえて見せないようにしたのだと思います。
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進行は、シール集めが必要。
シールが集まり、テキストウィンドウ右側にある、ふることぶみを読み、
神話に触れていかないとルートが進行できない冒頭。
これを最初にやらせておこうと設計したのは上手いですね。

また、ふることぶみの神話も、かなり噛み砕いて表現してくれていて、面白いです。

日本神話所縁深い葉倉の土地で、妖怪伝承、そして神話の再演するような物語へと。
ほんと、このあたりの構成は舌を巻くというか。すごいですよね。
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ただ、体験版の時の気持ちを振り返ると、期待していたことが違うのだと思います。

和香様、琉々葉様の二柱に振り回されながら、現実、例えば金銭面などをやりくりする。
神の力の及ばないところ。
NKKのように妖怪退治をして臨時収入を得られることを知り、
少しずつ資金問題も改善できていく。
そのうち大きな物事に巻き込まれるけれども、最終的に帰ってくるのはいつもの日常……、
そんなことを想像していました。

それくらい、冒頭の日常が良い膨らみを感じさせてくれていたんですよね。
バイト先も困窮、再会した友人からは業務用スーパーの特売肉を恵まれるほど。
生活の苦しさから、お替わりはありませんと伝え、縄文定食を捧げるしかなく。
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二柱もこんな表情ですよ。

残念ながら、この作品の構成は、前半の流れをかなぐり捨ててしまっているんですよね。
あならいずとか、そのあたりも含めて。
これは完全に好みの問題で、そうなっていて欲しかったな、というだけのことではあります。
すごく面白かったには、面白かったのですが。

もうちょっといえば、最終エンディングがどこなのか今ひとつ分からない。
エンドロールは、最終エンディングだけにしておくべきだったと思います。
そこまでは全て良いのに、スッキリ終われなかった気持ちに。


とはいえ、小ネタにしろ、構成にしろ、使い方が本当に巧み。
これなら角が立たないというか、悪くは思わないな、という差し込み加減で、
それでいて、この物語はどうなるのか、気になって一気に進めてしまいました。

あとあと。
BGMがすごく良かったです。
最初に耳にする『太陽は毎日天まで昇る』や『宵闇に広がる灯り』『夕暮れ風の涼しさ』からは、
この葉倉の土地が、不思議なものと隣り合う場所だと伝えてくれるようですし、
『また違う夏の一日』ではちょっと事件捜索の雰囲気を醸し出しつつ。
『神おわすこの世』では解決を感じさせて。
『廻る久遠の世界』は聴かせてくれますよね。
このBGMがあるから、スムーズな進行でも説得力が高かったように思います。

そして声優さんが豪華で、だからこそ、この進行でうまくいったのだろうなと強く感じています。
必要なキャスティングをちゃんとしている。
それでいて、このキャスティングは、なかなか揃わないだろうなあと思ったりもして。
お得ですよね。

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それと。このパッケージの耳は最高です。箱を傷つけずきれいに開けられます。
定番化して欲しいくらい。

和香様を中心に進んでいく物語。
妖怪も神も入り乱れ、綴られるのは新たな日本神話。
座する世界は、どんな形をしているのか。


これは続編があっても良いかもしれません。