ensembleさんの「恋はそっと咲く花のように~二人は永遠に寄り添っていく~」感想です。

2019年3月発売作品。

ensembleさんの「恋はそっと咲く花のように~二人は永遠に寄り添っていく~」は、
2018年6月に発売された「恋はそっと咲く花のように」のアフターディスク。
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6人のヒロインとのその後が描かれています。

それでは感想です。
ネタバレは少しあります。



プレイし始めは。
ファンディスク、アフターディスクという位置づけでリリースされていますが、
長めのエンディングなのかな、なんて思っていました。
「そこからだよね、わたしたちの関係が、幼馴染みから恋人へ動き始めたのは……」
始まりは、ヒロインの語りから。
恋心を抱いた時、そして共になることを誓った時。
本編で綴られた物語を、どんな風に感じていたかで語られる始まりは、
まさに、色々あったねと、あの頃を振り返る長いエンディングじゃないかな、と。

でもそれは、大分違いました。

強く感じたのは。
エンディングって、そこで物語を区切っているだけに過ぎないんだということ。
「あなたに恋をしたあの日から、ずっと願っていた夢が、今日……」
通常、恋愛ADVにおいて、エンディングとは、二人が愛を誓っている場面が選ばれます。
けれど、キャラクタにとって、そこからが新たなスタートになるはずです。

そこから描かれた物語は、他の作品には無い展開を見せてくれました。

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美里(礼賀椎衣さん)
今も幸せ、これからも幸せのつもり。そんな気持ちで過ごす美里。
勘違いするクセは昔から変わらず……ということですが、勘違いって本編で登場していましたっけ。
二人は新たな家族を迎え、その後の生活は……。

ちょっと全般的に駆け足。
もうすぐ出産なのに普通の立ち絵が表示されるのが惜しいですね。

イベントCGの原画の、身体バランスがちょっと気になるものがあります。
とはいえ、見応えのある、すごく良いイベントCGもたくさんあって、
本編より良いと思えるヒロインの姿が描かれていたりもします。

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ええ、植物公園で花を見て楽しむ藤堂なずな、すごく良いですね。
背景彩色の色合いともしっかりマッチしていて。さすがensembleさんです。
シーン中のなすなも、お風呂中で髪をアップにしているなずなも、すごく良い。
かなりグッときました。

藤堂なずな(藤咲ウサさん)と皇木怜は、親戚同士。
なずなは怜に憧れて、京都を初めて出た。
学園こそ違うものの、同居することで長年温めていた気持ちを伝え、怜もそれを受ける。
しかし、親戚同士であるため、その関係が全ての人に快く受け入れられるわけではない。
そう考えた二人は、怜の母、由乃にも打ち明けていなかった。
そして、なずなの母、明乃がフェリーチェを訪れる……。

重要なのは人との関わり。
例えば、怜となずなが知り合った老夫婦。
なずなの両親、明乃と勲。そして、怜の母、由乃と、怜の祖父。
家族ですから、人との新たな繋がりが出来ていくんですよね。
亀裂は簡単には塞がらないとしても、進めたから、進んでいくのです。

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さなえも本編よりかわいらしい。
とはいえ、別なCGでは表情がおかしく感じるところもあって、ちょっともったいない。
これ線画に少し差があるのだと思います。

さなえ(歩サラさん)は、事情により兄の子供を連れて学園に来ることがあった。
そして、皇木怜のことが好きな美里とは、親友。

継がれるもの、渡していくもの。
意図しなくても、繋がっているもの。
この、さなえシナリオは、本編では導入こそびっくりしましたが、
それ以降、このアフターディスクシナリオでも、かなり良い流れです。
やや属性が過剰なキャラクタでもあるのですが、来未家とは、実は血の繋がりが無いからこそ、
良い流れを生み出せているのだな、と思います。

このアフターディスクは、本編で良かったテーマを描いていて、
本編で根底にあるテーマかもしれないと感じた、怜の祖父のセリフ。
アレを見事に活かしていて、このさなえシナリオが一番好きですね。

人は、たくさんの人と繋がっている。
そして、それは大事にしようと思うからこそ、良い関係になっていく。
一度壊れても、何度だって。

怜も悟ります。
「つまり、努力次第で、何度でもやり直せるってことだから」
さなえとでなければ、出来なかったことなのかもしれませんね。

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容子(北見六花さん)
伝説のお姉様。叔母の珠江(海原エレナさん)との関係は改善されたものの、
引っかかっていたことがいくつかある。
恋人となっても、夫婦になっても、二人の関係は良好でも、
良好だからこそ、それ以外の人との間にあった事柄が残っていた。

もしかしたら、わだかまりに向き合えるようになったのかも、しれませんね。
夫婦になったから。親になったから。子を持ったから。
だからあの時の気持ちが分かる。向き合える。

後から悔いる。そう書くんですよね、後悔って。

好演してくれていると思うんですよ。
ちょっと苦手なキャラクタではあったのですけれども、母とのことを語ってくれた容子さん、
いや北見六花さん、間の取り方も含めて、すごく上手いと思います。

そして語られる、ちょっと違った夢の話。
そこから見つけた、新たな真実。
きっと、その時から苛まれていたから、きちんと見ることができなかったのでしょう。
「自分が親になって、その気持ちが初めて理解できたような気がする」
ただ、これは全体的になのですが、演出がとにかく少ない。
イベントが駆け足気味になってしまう。追いかけているのはテキストだけで、
本来なら、その夢を想起させるようなイメージ画像、
つまりイベントCGを起こすべきだと思うんですよね。
すごーく、もったいない。

このルートの皇木怜もすごく良いですね。きちんと話を聞く役に徹したり。
忙しい最中、何かできないかと考え、そして素直に周囲を頼って為そうとしたり。
なるほど、これならモテるだろうなと思ったりしました。

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沙希(秋野花さん)
一足先に学生を卒業した怜と暮らす沙希。
姉の希美(柚木双葉さん)とはお互いに誤解が解けて、仲良く過ごせるようになっていた。
沙希は、卒業を待ち望んでいた。その後に結婚が控えていたからだ。
けれど、結婚後の女優業はうまくいっていなかった。
結婚ではなく、マナーの悪いファンを指摘したことで逆恨みされてしまい、
スポンサー企業へ不買運動を仕掛けた……。

一番CGが安定しているように思います。笑顔がすごく魅力的に仕上がっているし。
イベントは色々あったのに、演出があまり無くてもったいないです。
ただ、陣痛を表現したのはここが唯一。

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伊織(くすはらゆいさん)
皇木怜との出会いで、すべてが変わった。
病気を克服した。そこから、少し欲張りになった。
大学に進学し、栄養士を目指すようになった伊織。
まだ自分にやりたいことがないと言いながら、それでも新たな一歩を踏み出そうとする。
そのうちの一つが、術後の定期検診の他に受けたもので……。

本編でも同じように思ったのですが、もう少し見せ場を創って上げて欲しいです。
センターヒロインなのに。
重たい展開を差し込むのも良い、けれど、次のターンですぐ解決させてしまうと、
それは物語じゃ無くてイベント、記号化されたものになってしまうかなと。

とはいえ、本編でもそうでしたが、ゆっくり、しっとり育む流れは悪くなかったです。


相変わらず、システムが優しくなく思えて、
セーブファイルが足りないとか、でもセーブしてもAUTOモード解除されないのは素晴らしいし。
OPムービー製品のどこかで見たい時に見られないし。

できれば、さなえのお兄さんには声が入っていたほうが良かったかもしれないし、
勲さんは入っていたのに、とか。
本当は、本編で、少し美里とこじれても良かったと思うし。


けれど。
決して、本編で幸せになったことを傷つけるような流れにしていません。
続編作ると、幸せになったはずなのに、あのエンディングが好きだったのに、
そこを壊してしまう。そういうことがありません。

そして。
本編で、これがテーマかな、と感じたセリフがあります。
それぞれの後悔が元になっていたり、でもそれと向き合ったからこそ、分かること。
それが描かれているのは、本当に好感度高い物語です。

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どのルートでも活躍するのは、怜の母、由乃(有栖川みや美さん)と、
怜の祖父(多富満さん)。

祖父に結婚を認めてもらえなかった由乃は駆け落ちし、フェリーチェを開店。
怜の父、つまり由乃の夫は他界して、怜がフェリーチェのシェフになっています。
折り合いの付かないまま他界させてしまい、怜にもうまく接することのできない祖父。
それは後悔の形。
由乃にしても、人を支えたり上手く立ち回ったりはするものの、
表に立ち続けることは無かったのでしょう。やるときは、一時的なものとして。

誰かに伝えた思いやりが、巡ること。
気遣いは、世代を超えて伝わること。
関わり方が変わっていくこと。

怜のセリフの通りなのです。
「王子さまとお姫さまが結婚して、めでたしめでたしってわけにはいかないんだよな。
 人生ってやつは」
その後だって、生きている。
でも、そこに新たな喜びや幸せがあるのです。
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それは雪解けであったり、蒔いた種の芽吹きであったり。
そっと咲く花は、恋だけでないのです。
それらが織りなす、新たな景色なのです。

意欲作でした。
この作品のように、その後の幸せを描こうとする物語が増えても良いなと思います。






単体でプレイするよりも、セットで一気にプレイされた方が良いと思います。
お得でもありますし。


音楽、『フラワーシャワー』、素敵でした。