Azuriteさんの「タマユラミライ」感想です。

2019年3月発売作品。

Azuriteさんの「タマユラミライ」は、どこか異郷の香りがする深野で描かれる、
”ヒトと妖異と魔法使いが織りなすミステリアスADV”。
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妖異幻怪の多い土地、深野市。
夜羽睦月は、日頃は学生として過ごしながら、
この深野の魔法使いとしての役目を果たして過ごしている。

深野出身の小伯白には妖異が見えないようだが、
身の回りのことは、サキュバスの水晶石みだりにしてもらいながら魔法の研究を続け、
学園に住む水妖、トイレの花子さんから噂を仕入れ、
人と妖異の間に生まれるトラブルを調停していく。

経立という大きな猿のような妖異が、山から現れ、
どうやら狙っているのは、今年の夏から深野に現れた、強い力を放つ二人の女の子。
神掛由岐奈と神掛蒔奈。

経立を倒してくれるのかと頼ってきた二人は、
夜羽睦月が完全に味方にならないと知ると立ち去ってしまう。

魔法使いの役目とは、土地の、妖異人と調和を取ることだから。

それでは感想です。
ネタバレが少しあります。


そうですね、概ね面白かったといえるとは思います。

けれども。
与えるイメージが不足していること、無駄がない作りであること。
これらが余韻に影響して、もったいないと感じます。


舞台の深野は、遠野がモデルなのかなと思います。が、
それをプレイ前に知らないと、舞台イメージが思い描けず、
物語から受けとるべき場面印象が弱くなってしまいます。

旅情感というか、深野らしさが伝わる場面が少なすぎるのです。
期待していたのですが、なかったんですね。

背景画像などは素晴らしく、きれいで楽しめる、のですが、
そこにあるだけになってしまっているようです。
舞台を、短く伝わるテキストで表現されているものは、ほんの一部。
深野ならでは、が欲しかったです。
たぶん背景を描いた人の想いほどにも、作中で深野の雰囲気は登場しません。
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こんなに綺麗に描かれているのに。

ですので、読む側にそれなりの知識を要求される作品です。
例えば、おしら様という存在が登場しますが、イメージが掴めず話が終わってしまいました。
何となく人形のようだなとは思っていましたが、よく分からなかったので、
画面外に意識を移して、検索サイトで検索していました。
画面の中で満たしてほしいんですよね。できれば。


作品の構造に少し不満というか、もったいなさを感じます。
小伯白の物語がメインとなる構造で、それ以外のヒロインルートでは解決に至らない、
どうにもスッキリしない形で終わってしまう。

いわゆるTrueがある構造。
この構造では、ある程度は仕方がない場合もありますよね。
けれど、小伯白のルート以外では本質に迫れない、だけではなくて、
深い事実と関係のない進行をしていても、スッキリしない形でルートが終わってしまう。

さらに、その過程では、キャラクタの魅力が引き出されていないように感じたこと。

ペースが早いとは思わないのですが、全体的に無駄をそぎ落としており、遊びが足りない。
かと思えば、シーンを連続的に詰め込んだ進行になっていたりして、魅力を感じません。


確信に迫るのは、神掛由岐奈のルートから。
ですので、小伯白ルート前、3番目にプレイするのがお勧めです。
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本当だったら、猫天宮花子はこの土地で力の強い水妖だし、
水晶石みだりはサキュバス貴族だし、二人ともバックボーンが大きいので、
もっと大きな物語になっても良かったと思うのです。
何よりこの二人、かわいらしいですし。
でも、物語の中心には成れず、割とあっさりルートが終わってしまった印象があります。
残念ながら、読んでいて上手く入り込むこともできませんでした。

また、首を傾げてしまうのは、小伯白ルートへ入るにも、共通の選択肢から、だということ。
話の続き方としては、神掛由岐奈ルートの内容が終わった後、
かつ、神掛由岐奈を選ばない……。
少し、読み手の頭の中で整理がつきませんでした。


テキストは色気があります。
深野の夏は短い。
すでに残暑さえ尻尾を見せ始めている。
こういう表現は、おっ、と思ってしまいますよね。

グラフィックはかなり高いレベルでした。
乱れもないし、キャラクタは、茉宮祈芹さん、あめとゆきさん原画で、非常に魅力的。
背景も、グラフィックも、お名前をよく拝見する方が多くて、納得の出来です。
それを使った画面演出も良かったと思います。
OPムービーでも使用されている、この水晶石みだりは、素敵ですよね。
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音楽も耳に残る印象的なものが多いです。
『夏風の始まり』は夏らしさがあるし、
『タマユラミライ』では、この作品の行方を教えてくれるような気がしていました。

音声面でちょっとだけ気になるのは、例えば紅。
本来、「ウソですっ、ウソです!」と駄々をこねてるほうが声は大きくなるのはないでしょうか。
でも製品版では、「私が心配したところで、なにも変わらない……」と呟くように言うほうが、
音量が大きいんですよね。これは収録時の問題かな。

深野感が物足りないように、学園の設定、必要なかったように思います。

「彼女は落とし物を探している」というフレーズ。
落とし物、という語句を削ると、ダブルミーニングになって面白かったかも。
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と、あれこれ書いていますが、神掛由岐奈のルートから始まる核心の小伯白のルートでは、
仕掛けも面白いですし、小伯白と小伯紅を描いた「紅と白と」あたりはすごく好きです。
ここだけで、作品をお勧めしても良いかなと思うくらい。ドラマティックな展開です。
ビジュアルによるイメージで、ストーリーを後押しして欲しくなり、
もったいないところはあるのですが、それでも良い場面が描かれていました。

ただもうちょっとマットというか、落ち着いた進行が求められると思うのです。
この仕掛けならば、尚更のこと。
深野という土地なら、さらに。

そういう意味で考えると、このストーリーと、
この明るくかわいらしいビジュアルとは、噛み合わせが悪かったのかもしれません。



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タマユラミライ【萌えゲーアワード2019 5月月間賞受賞】タマユラミライ【萌えゲーアワード2019 5月月間賞受賞】