3rdEyeさんの「レイルロアの略奪者」感想です。

2019年10月発売作品。

3rdEyeさんの「レイルロアの略奪者」は、”ファンタジー異能力バトル冒険ADV”。
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今から100年、あるいはもっと先の未来。
人口は大きく減少し、10万人程度となって、文明レベルも落ちていた。
街には馬車が通り、発掘が生業となる世界。
人々にはデュナミス、異能力が備わり、生活に根ざしたものになっている。
一方で、異能力を用いた犯罪もあり、過去には、暴走し堕神ナレハテとなるものもいた。

統制士団に属するレノは、ナレハテ討伐を為した者だが、英雄とは見做されていない。
人から奪うことでしかデュナミスを発揮できない略奪者スナッチャーは、良くないもの。
人々にそう認識され、虐げられている。

汚れ仕事を続けてきたグレイドリックもスナッチャー。
今は身を隠すように過ごしている。
しかし、同居人のフィが、異能を失い、ナレハテとなる可能性のある、
神憑エラーとなってしまう……。
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それでは、感想です。
ネタバレは少しあります。


3rdEyeさんの5作目になります。

今作では、カットインをうまく使い、ビジュアルを動かすことで、
バトル演出をしようと努めた作品です。


この公式ゲーム紹介を見ると、分かりやすいでしょうか。
体験版では、より”略奪”などの動きが分かりやすく味わうことが出来るはずです。
これが全編に渡っているというのが、珍しい作品といえます。

ダブル主人公を続けているのも、3rdEye作品の味といえるでしょうか。

また、蒔田真記さん原画、CG統括をあまがたさんが行うビジュアル、
今作も結構好きです。
略奪状態のレノ、オルシュタット。男性キャラクタがまず格好いい。
イシュティナやシア、ミリアリスにイースラ。女性キャラクタも魅力的。
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今作では、イベントCGのようにキャラクタを大きく描いたものですら、画面の中で動かすためか、
例えばイースラの姿勢がセクシーだったり、ティルトの動きは、動を限りなく活かしたポーズだし、
ミリアリスのアクティブが活きるカットなら、たとえCGが動かなくても動き出しそうです。
グレイドリックの”略奪”カットは、本当に格好いいですよね。
こう、バトルキャラクタのアクティブの中にセクシーさをきちんと感じさせるというのが、
何より良いと思うのです。

音楽。
まももさん作曲による音楽は、今作のようにファンタジー世界であっても、
素晴らしい楽曲ばかりです。

ですが、やっぱり骨子となる部分が良くなかったです。

まず、システム。
バックログジャンプは搭載すべきだと思います。
何がどうなったかを動きで表現しているため、把握しそびれると、
発言だけが見られるバックログでは、意味が無くなるのです。

それと、その動き。
チャレンジングなことは間違いないのですが、どうにも分かりづらい。
せっかくのバトルシーンが分かりづらいのは、
例えば、ティルトの動き。これが全く分かりませんでした。
ティルトは剣戟を放っているのか、剣先から雷を放射しているのか。
追跡前に放電していることから、身に纏って移動速度を高めているのかもしれませんが、
すると、剣は必要ないわけです。雷の優位性は威力と速度にあります。
そういう原理が今ひとつ伝わりません。例えば”略奪”の原理が理解できたのは、最終章でした。
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演出や監修が全体的に足りなかったように思います。
地の文を廃し、会話で成り立たせようとしているのですが、これに無理があったと思います。
場面が良く分からないところが多いです。
例えば都市レイルロアが戦場となる場合、街を俯瞰で見せた上で地点へフォーカスさせ、
戦闘を見せるとか。
全体戦況を見せないと、戦力や規模感が伝わらず、散発的な戦闘に見えてしまうと思います。
それでいて、説明セリフをキャラクタが発することがある。
キャラクタの発言ってキャラクタそのもの。おかしいです。

そして、シナリオ。
残念ながら、これが一番良くなかった。
端的にいえば、無駄なバトル場面が多く、登場人物たちが利己的すぎたと思うのです。
たぶん、この辺でビジュアルの動きを見せるための戦闘を入れて、
ここでやり取りさせて、別離を作って、敵味方になってと構想した。
でもそれは、魅力的な引きに感じませんでした。

その仕組みで、大事なリソースを見せきってしまう。
例えば、それが名曲たち。戦闘CG。キャラクタの魅力を。
素材はファーストインプレッションが大事で、できればそこで片付けた方が良いわけです。
ラストバトルを感じさせる曲なら、ラストバトルでのみ用いられるように場を進める。
決着が冗長に感じられるのもおかしい。
瀕死、致死のように描きながら気絶で終わるのも、
良いところまでいくと必ず横槍が入る戦闘も、緊張を削いでしまいます。
確かに人は悩むものでしょうけれど、
足を引っ張ることを目的にしているのかなと思うような行動は、魅力的に見えません。

結果、キャラクタの魅力を減らしてばかりいました。

それでいてキャラクタの掘り下げ、向き合うことが足りない。
どうしてその結論に至ったのか?それで解決にさせてしまっていいのか?
長く引っ張った割に、納得できるエピソードがありません。

だからか、最後の選択では、この登場人物たちがいる人間たちに任せると、
早々に人類世界が破綻するのでは無いかと感じてしまいます。
好意的にエンディングを迎えられませんでした。

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意に介さない。だからエピソードにもならないのは分かりますが、
レノは迫害を受けていたのならば、そこを描くことが前提で、
その上で本編の道中が、彼の成長に至っている感じが全くしないんです。
グレイドリックも同じ。二人の過去は今ひとつぼかされています。
フィは振り回すことしかしないし、イースラもその気配があるし、
ティルトは下手を打ちまくる。
これらのキャラクタを中心にしているため、物語は大きく蛇行して進んでいるように感じました。

これは物語のために、そう行動せざるを得なくなった面が強いように思っています。
一気に戦闘を終わらせてしまうと、描けない。
だからティルトは、毎回、見え見えの罠に引っかかる。ある意味、敵を信じている。
ティルトに対する評価は、ミリアリスが伝えています。
「学習しないヤツだなー。赤ん坊でも一度火傷すれば暖炉に手を突っ込まないぞ」
力があっても、慢心と油断で出来ているようにしか思えなくて。

ここで敵を倒してしまうと、描けない。
だからフィは、毎回トドメを刺そうする場に介入する。
面倒くさいお荷物キャラクタになってしまう。

ゼタの扱いに集約されているかもしれません。
ずっとお調子者として登場していたのに、突然不心得者に化け、
何故かフィに救われ、でも命を落とす。
この下りに、シナリオの良くないものが集約されている気がしました。

だからトラブルが身内から発生します。
キャラクタによっては社会的地位がある存在で、こんな簡単にトラップ引っかかって、
それでよく地位を築けたなと思うほど。
これで運営されるレイルロアは、未熟なコミュニティと捉えてしまいました。
だから、繰り返しになりますが、最後の選択では、人類は早晩途絶えると思います。
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さらに、グレイドリックの場合は、その性質が好きになれませでした。
人にする時は「それくらいいいだろ」。人からされると「ひでーことしがやって」。
「キミのヘリクツっていつもその場で出て来るの? だとしたらすごいね、キミの人間性」
イースラの評価ですが、本当に同感です。
だからか、シーンがあることを望まなくなっているんですよね。
こんなキャラクタに色々と許していると、そのヒロインの価値まで下がると思えて。
イケメン無罪なのか。

お調子者、でも社会の裏側にいたグレイドリック。
統制士団、警察的な組織にいるレノとの対比として用意されたキャラクタなのでしょうが、
グレイドリックのキャラクタが邪魔していると思います。

レノはレノで、統制士団からのドロップアウトを描くのなら、思い悩む場が足りない。
ただ移籍しただけ。
しかも何故か最後にルルニアを想う。首を傾げます。

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キャラクタデザインと、声の配役は素晴らしかった。
グレイドリックは苦手ですが、胸肩腎さんは決めているときとお調子者感とがバッチリ。
オルシュタットの英雄オーラは、一之瀬昴さんによって増幅されていました。
レノは二重人格のようなところを、瑠璃之晃さんが格好良く決めてくれて、
一歩踏み出したレノをも、伝えてくれました。

女性キャラクタもそう。
ルルニア(藤咲ウサさん)、俺セリフが上手かったですね。
花園めいさんは、イースラに声が合いすぎていてびっくりしますよね。

全体的にシーン数が少ないのはちょっと残念。
イ・シュテナ(汐路美晴さん)の艶姿が見られてありがたい、のですが、
シア(美波りおさん)はあんなにかわいらしいのに、もっと仲良くなれる場が欲しいですよね。
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すごく後悔しています。
ここは選択肢をください。お願いします。

エーデル(あいま醸さん)もそうだし、ツェット(かわしまりのさん)だってそうだし。
仲良くなれなくて残念に思うキャラクタが多い。

こうしてみると、一番魅力的に見えたのは、ミリアリス(和央きりかさん)だったかも。
自由奔放な雰囲気、天才を自称する、でもずっと貫き通す。
ミリアリスといたら、振り回されても楽しいことしか無さそう。

「人生を多いに楽しむ秘訣、その22。”苦しい時こそ笑え”!」
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だから本当にもったいないと思います。
舞台設定にしろ、物語にしろ、大筋を最後まで描ききった。
異能力バトルの面白さは全編に行き渡っていました。
本当は凄い作品になるはずだったと思うのです。


音楽はすごく良かったです。
40曲超で描かれるレイルロアの世界は、間違いなくこの音楽で支えられています。
どこかケルティックな香りも感じる、
『都市レイルロア』では、野菜や花売りが立ち並ぶ中を、馬車の行き交うような活気、
仕事の成功を麦酒で祝う人々が見えるようであり、
タイトル画面で聞ける『新しい空、遠くにある青』では、
大地に根を下ろし生活する人々、その中にいる主人公たちの物語の幕が上がる、
高揚感をもって広がる空の向こうを目指すような感覚があって。
『目を背けたくなる現実』というタイトルですが、謎や神秘を目の前にした雰囲気。
『グレーゾーン』は体験版でも尋問の場面で使われていました。
『郊外を行く』と馬車の音の相性。
『白き象徴』は絶対的な存在として。
曲名は笑ってしまいますが、『やべぇ』は本当に『マジでやべぇ』。
『Invincible』『Who Brings Immortality』を登場曲として背負うのは、ヒーローならでは。
『Snatcher』は、悉く了解!となりますよね。

楽曲たちは、キャラクタやレイルロアの世界を、バトルにおける勇ましさを、敵たる壁の高さを、
全て描いてくれたと思うのです。


このトレイラームービーで流れている曲は、冒頭から最後まで今作のBGM。
背景やテキストで彩られたムービーで、わくわくしましたから。

好きでない曲がありません。また全体的に高級感がありますよね。
音楽に、全く隙がない。
むしろ、この音楽が無かったら、もっと悪く捉えていたかもしれません。

仕上がりは残念なところも多かったですが、
ファンタジー作品で、ここまでの厚みを、味わえる作品って、珍しかったりもします。



ダウンロード販売もあります。

完全に邪な思考なのですが。
ミリアリスがイタズラというか迫った後に、レノはティルトに行った、とも見えなくはないですよね。
その上で、シアが諦めない世界であってほしいです。