ういんどみるOasisさんの「はぴねす!2 SakuraCelebration」感想です。

2019年2月発売作品。

ういんどみるOasisさんの「はぴねす!2 SakuraCelebration」は、
”はーとふる魔法学園ADV”。
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魔法は、20歳をピークに、その後は消滅する。
その性質を、桜ヶ丘学園が保護していた。

この地では10年に一度、桜の年と呼ばれる時間が訪れる。
春になると1カ月は桜が咲き続けるのだ。

今年は、まさに桜の年。式年祭が行われる。

小さな女の子、弥篝真白は、市内を歩き回っていた。
誰かに聞かれたときは、地図を作っていると答え、目的を進めていた。
街角に、隠蔽処理された魔方陣の確認をしながら。
「『Project Happiness』は、始まったばかりなんですからーー」

それでは、感想です。
少しネタバレがあります。



幸せ、足りてる?というキャッチフレーズの作品です。
このキャッチフレーズは、幸せを提供します、と読み替えることができます。

けれど、残念ながら、ちょっと違うように思えてしまいます。

直接的で暴力的。
適当に流す。
キャラクタを魅力的に思えないところが多いのです。

グランドルートがある物語なのですが、敷かれた個別ルートに気持ちが満たされない。
もう少し丁寧に進めて欲しかったなというのが、全体的な印象でしょうか。


システム面は素晴らしく、さすがのCS2。
動作が軽い、なのに演出は細やか。
セーブファイルが増やせなかったのはとても困りましたが、
ウィンドウサイズでプレイしていても、文字列やグラフィックに歪みがない。
(縮小してしまうとぼやけるシステムもあります)

何より、画面演出です。
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この凄さは、地の文の少なさが表しています。
なのに、キャラクタの表情が朗らかに、豊かに感じられる。
声優さんが素敵な演技をしてくれていますが、立ち絵が細やかに動いて、
その声にあった形で、キャラクタの表情を伝えてくれます。

だから、ちょっとしたイベントがすごく楽しそうに表現されて見えます。

地の文で、目が泳いでいた、なんて書かないといけないところを、
立ち絵を自在に動かして処理しているんですよね。

セリフ一つに対して豊富な立ち絵を使って、場を魅力的に仕上げている。
ういんどみるブランドのウリといえます。
スクリプト設定は大変だったと思いますが、この演出監修にはとても感謝しています。
画面を見ていて楽しいのです。

音声、最高レベル。
声優さんがベテランです。
サブ男性キャラクタの九重統也でも、古河徹人さんを起用し、聞き応えのあるセリフになっています。
また、他の作品をプレイしていると不満に思うような、音声の悪い部分が全くありません。
きちんとリテイクや音声処理をしているのでしょう。
収録をきちんとしたところ、BraveHeartsさんで行っているのもあるでしょうね。
グランドルートの一部で、音の反響が入ってしまっていますが、
そもそもの音質が良いですよね。

音楽もそうです。
タイトル画面で流れる『暖かな風に乗って』のメロディの良さ。最初で掴むのはとても大事です。
Ecnemuseさんはさすがですね。
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画面や音、システムは良い。
けれどシナリオが好みではなかったかもしれません。

ブランド過去作を引き合いに出してしまいますが。
ふわっとして柔らかい、けど大きな何かと向き合う。幸せを掴む。
魔法用いた過去作、「祝福のカンパネラ」は、受容に満ちあふれた作品だったと思っています。
画面の隅にいる、サブヒロインだって魅力的。
2万本以上を売り上げたのは、きちんと理由があると思います。


ところが、今作は今ひとつ。
問答無用で怪我どころではすまない魔法攻撃を仕掛けたり、
魔法を用いて記憶操作、闖入の痕跡を隠したり。殺伐としています。
また、一条和綺が怪我を負っても、ヒロインが気にかけなかったり。
主人公の怪我を放置して、現れた人物を賞賛するキャラクタまでいます。
人の話を聞かないことも。
どうして魅力を削ぐ進行なのだろうと、ちょっとがっかりしました。

一条和綺の性格設定、または物語の進行手順がその理由なのでしょうか。

鈍くないと、様々な選択を受け入れることができないと思ったのかも知れませんが、
そんなことは決して無いはずです。
誰かが何かをしようとした時に、人の変化に気付かず、適当に流してしまわないと物語が動かない、
そんなことはないはずなのです。

読んでいてとにかくモヤモヤし続けました。

例えば、グランドルート。
事情が明らかになり、一堂に会するヒロイン達を、一条和綺は強いと評します。
それは強いのではないでしょう。
この場で記された”強い”とは、傷つかない、傷があっても前を向くことを意味しています。
傷つくような何かをしているのならばケアするべきで、
そもそも、一条和綺が後ろ向きになったり落ち込む要素はどこにあるのでしょうか。
この場で、自分のことしか見ていないのは良く分かりません。
既にある事実を認め、みんなが大事だと主張すれば良かったのに。

となると、イケメンなのでしょう。あるいは、とにかく力があった。意思は無くても。
それだと面白くないです。
ヒロインは、一体何を好きになったのでしょうか。
一条和綺に魅力があるのなら、それを伝えて欲しかったです。

また、イベントの記号化も多いです。
何の切っ掛けもなく膨らみもない会話のやり取り。キャラクタ魅力を引き出せていません。
立ちはだかる意志をみせている相手が、納得させられる言葉には思えない、なのに折れる。
不思議な展開がとにかく続きます。
スムーズな進行といえますが、伏線が伏線として機能していないのはもったいないですね。
個別ルート、さすがに展開も読めてしまい、読む集中力が減りました。

とはいえ、ここまで広げた物事ををまとめようとするグランドルート制作は大変だったと思います。
誰か一人に背負わせるのでは無く、不幸は、みんなで一緒に、ちょっとずつ受け持とう。
この概念はとても好きですね。
みんなで一緒に生きていこう、共存共栄の意志があるように思いますから。

ただ、ヒロインが認識した”過い”。
肯定できるような事柄には思えないものもあります。

例えば姫川花恋は、無かったかもしれない絆をかき集めるよう手を伸ばす、唐突な告白展開。
それを肯定してみせました。
体験版の範囲とはいえネタバレになってしまいますが、
思い出の同士だと、楽しそうに語り合う姫川花恋と一条和綺は、
お互いの過去がズレていることに気付いていきます。
一条和綺が憧れていた女の子は、桐ヶ谷璃乃であり、姫川花恋ではなかった。

これ、アイディアはとても良いと思うし、好きな展開でした。
けれど、自分が絆を持ってないことを認めたくない、だから告白する。
それは執着ではないのでしょうか。

アイディアは好きですが、もうちょっと重い恋愛模様、
三角関係を描くのに向いた要素だったかもしれません。
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幸せ、足りてる?
良いお話も、メッセージとして印象づけてはくれない、さらっとした進行。
この物語では、幸せをプラスしてくれなかったかな、と少し残念に思っています。


呪文は、前作と繋がりがあるものなのでしょうか。
日本語表現のほうが良かったのかも。
セリフを言う側も詠唱語句に気持ちが通ってないように聞こえてしまいました。

使鬼守が憑いた一条熾月のセリフ綴りも、古めかしいようで徹底されていません。
熾月とは、ちょっとしたお互いの確認不足、意思疎通不足で、場面が作られてしまう。
もう少しはぴねす!を感じられる場面づくりであって欲しかったかな。

姫川花恋、一条和綺の流血を見てパニックを起こすのが妥当な気もします。
それが恋愛スタートで良いのか、とは改めて思います。

九重楓子は、遙そらさんのハマり役だと思います。
人をからかったりできる、そして秘密持ち。
守りたい人、支えてくれる人。新しいつながり。
誰もがはぴねす!を目指したからですね。
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一条瑞月は、慕っている兄姉の秘密を聞かされてしまって、魔法神事に出場を決めますが、
そのあたりもしっかり考えてあげて欲しかったですね。
呪いの標的と呪いの代行者が組んで出場するのに。魔法は得意ではないと知っているのに。
決してサラッと流して良いところじゃないです。

桐ヶ谷璃乃は、一条和綺の思い出の人物だとバレる場面がもう少し。
明かしたいけど言えなくて、かんしゃくを起こすように魔法を行使、それを一条和綺にに聞かれます。
これ、射撃型魔法っぽいのですが、どうしてもう少し優しい魔法を場に添えなかったのでしょう。
明かりを灯すとか。

二人が御咲山で道に迷って暗くなり、禁じられていたけど灯りの魔法を使う。
一緒に抜け出た時の思い出……としたほうが優しさに満ちていませんか。
明るいね、怖くないね、なんて会話をしながら。
こうして誰かを守る、誰かの手を引けるようになりたい。それでいいじゃないですか。
優しさがちょっと足りてないかなと思います。


とはいえ。セーブファイルはとっくに満杯です。
何度も上書きしました。
スムーズな進行、魅力的なビジュアルが満ちています。

橘海音(花丸あすなさん)、弥篝珠洲子(手塚りょうこさん)という大人役キャラクタも魅力的でしたし、
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桐ヶ谷璃乃(成瀬美亜さん)がフラグをばらまいて、クラスメイトにからかわれている場面などは、
”いいんちょ”として親しまれていて。
桐ヶ谷璃乃はグラフィックもすごく良いですよね。
なんかこう、璃乃がいるって気がするイベントCGが多かったです。

弥篝真白の、にへっとした口元好きです。
「あ……、一応体裁もありますから、ぎゅーっと抱きしめておいてくださいね」
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安玖深音さんの声とマッチしすぎてますよね。

橋本みゆきさんが歌うED曲『Blessing bloom』、すごく良い曲ですね。
さすがの菊田大介さん。桜散る場面とすごく合っています。
桜並木を駆け抜けていくような疾走感。続く未来を示すテンション。
アップテンポな曲と橋本みゆきさんの完成度。素晴らしいです。


まだまだ、ういんどみるさんの力はこんなものではないはず。
そう感じています。
新たな作品の登場を待っています。




ダウンロード販売もあります。
はぴねす!2 Sakura Celebrationはぴねす!2 Sakura Celebration


また、海外版発売の予定もあります。