TOKYOTOONさんの「マルコと銀河竜」感想です。

2020年2月発売作品。

TOKYOTOONさんの「マルコと銀河竜 / MARCO AND THE GALAXY DRAGON」は、
”カートゥーンアドベンチャーゲーム”。

恩田丸子は、6才でピアノコンクールに出場した直後、攫われた。
それから10年。マルコは宇宙でトレジャーハンターをやっていた。
出会った銀河竜アルコと一緒に銀河回遊宇宙船を繰り、ある星でトカゲ石を手に入れる。
宇宙の支配を目論むアスタロトがトカゲ石を狙っており……。

それでは、感想です。
ネタバレは少しあります。
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素晴らしい体験をさせてくれる作品でした。
長編映画を見終えた気分です。

その表現手法は、圧倒的なボリュームのCG。
合間にトゥーン、動画表現もされますが、それがなくてもCGの物量で動いているかのようです。

そのCG枚数を怒濤のように見せて、体験密度が高い。
その密度もテンポの良さも、体験版だけで止まることなどありません。
最後の最後まで、貫き通していきます。

映画って、見終わってみるとあっという間という印象を持ちますが、
それに近いものがあると思います。
読後感に倣って、鑑賞後感とでもいいましょうか。
映画館でこの作品を上映してくれても良かったと思います。もっと集中して見たい。

デフォルトのAUTOモードでプレイすると、6時間半以内。
プレイ時間と見做さないほうがよく、映画3本を見たとカウントしたほうが良さそうです。


不満がないわけではありません。
HARUKAZEブランドとしてリリースされたものを過去作と指定すると、分かりづらいところが多い。
もう少し分かりやすさに依って表現してほしいと思うところがちらほら。
物語を味わいたいと思って購入するので、なおさらそう感じるのかもしれません。

最後まで詰めて設定しているのかは、悩ましい箇所もあります。

少しですが、場面と演出、切り替えなど合っていないと思う場所もあります。
例えば、マルコの瞳が変わる位置。
「石っころなんかに頼ってんじゃねえよ」でバンとSEが鳴る時と同時かな、と。
例えば、歯を磨いているあたりは、歯ブラシ音を入れても良かったのではないかと。

地の文を省いてスピードを上げるためのCG枚数だったはずですが、
後半の戦闘で、何故急に地の文で説明を入れ始めたのか分からないです。
吹き飛ばされるハクア、って。
前半にも、同じように説明的な地の文が入ることがあるのですが、
この場、戦闘では良くない。あれはここまで維持したスピードを下げてしまいます。

歌曲が流れる場面がいくつもありますが、歌に収まっていないのですよね。
これは何とか調整してほしかった。

ついクリックしてしまうと、エンディングが見られない。
これはAUTO進行を固定化させるべきです。
じゃないと、原に乗ってそれで終わってしまうので。
映画だってスタッフロールは長いと思います。2曲以上流していますものね。
というか、絶対このエンディングは、飛ばしてはいけないものだと思うのです。
すごく大事。

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とはいえ。
大きな宇宙を舞台にしながらも、町内を舞台に移し身近に捉えさせたりと、
場の扱い方などは相変わらず。描きたい雰囲気はこういうものなのでしょうね。
(「ノラと皇女と野良猫ハート」でも、死者の国、冬の国のような異世界から、
 主人公たちが住んでいる街をメイン舞台としましたね)

どこか遠くにあるのではなくて、そこにある。
そんなテーマをイメージしていましたが、今作にも共通していると思います。

マルコが手に入れた、宇宙の騒動に巻き込むトカゲ石。
売却して食費にしたい。そして残された宝の地図で宝探しをしたいマルコ。
盗賊頭ドスゴロから強引に休暇をもらったマルコは、
宝の地図に映る、地球の金紐市ゴールドコードに辿り着きます。
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地球では、10年前に起きた大量の人さらい事件から学び、各地で防衛プロジェクトが動いています。
ゴールドコードでは、砲台を建造したり、地球防衛担当者を募っています。

マルコが出会った、地球を防衛しようと伊勢崎学園に集まった人達は、
皆、親を亡くしているようです。
10年前、それ以降も頻繁に訪れた異星のミュータント。
襲ってくるのは一つの異星人に限らず、移住を決め込んだ者もいます。

そんな状況の地球で探す、母親という宝。
道中で、様々な人と出会います。

最終的には、マルコと銀河竜アルコへフォーカスします。
CG1,000枚を惜しみなく、二人の関係性だけ表現することに注力した描き方。

そのため出番が少ない、もっと見たいキャラクタも多い。
描こうと思えば、市長(春野杏さん)がどうして市長やっているのかだって、描けたはず。

本当の意味で、贅沢な使い方だと思います。

タイトル通りなのですよね。
「マルコと銀河竜」。
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こういう記事があります。

体験版の時、意図は分かっていました。
テンポ良く、でも状況をしっかりと伝えたい。
だから、CGで情報量を増やすことにしたのだと。目を釘付けにすることにしたのだと。

これから作品作りを志そうとする方は、見習うべきものがあると思います。
企画だけでなく、代表者も。
何をもって予算を掛けるのか。
それをやりきったこの作品は、体験は、希有なものだと思っています。

プレイする時は、気楽に。
映画のような作品と捉えて、ポップコーンと大きめのドリンクでも用意して、
気楽に楽しんだら、それで良いと思います。

 
konoreさんが歌う、『飢餓と宝玉』は、何回見ても、何回聴いてもすごく良いなと。
このOPに惹かれたら、迷わず手に取って良いと思います。


GALAXY EDITION、パッケージ重量が重いです。
計ってみたら950g。1kgくらいあるわけです。
厚さ1cmの設定資料集も含まれていますので、納得です。

そうそう。パッケージにもこだわりがあって。
DVDパッケージを2枚貼り合わせているような形で、間仕切りがあるのですが、
ディスクパッケージを抜くと、マルコと銀河竜がマルコとアルコになるんですよね。

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こんな美麗な背景イラストも見ることができますよ。


さて。
この作品は、細かい感想や、考察するよりも、そのまま観た方が楽しめると思うのですが、
少し疑問に思ったことがあるので、書き残しておきます。

あくまで想像ですが、ネタバレになるのでご注意ください。

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恩田ミツコについて。
冒頭で、6才の恩田丸子を捕まえようとやってきた者たちに、
丸子の母は宇宙銃を突きつけられ、射撃音がして場面は暗転します。
その後、丸子はコンクールドレスのまま墓の前に居ます。
母親が撃たれて亡くなったかのような表現です。
ところが、ミツコは実存している。

これはどういうことなのか。
恐らく、丸子の何か、最後の戦闘で見せた覚醒めいたものが発現して、場は収めたのではないかと。
撃たれることだけは回避させられた。

その後、結局連れ去られてしまった先で出会った銀河竜は、丸子を食べようとした。
マズイと吐き出したものの、一部は摂取した。
悲しい記憶。丸子を食べようとして、ミツコの悲しみも食べたことになっているのですね。
関連する存在からも摂取してしまう。

では、墓の前にいた場面は一体何なのか。

展開を考えてみると。
さらわれそうになる→力で撃退する→力を使い果たしてダウン→銀河竜がひとかじりして放置→
やっぱりさらわれる→ドスゴロが横から奪う→奴隷惑星で再会してアルコがドスゴロ一味になる→
それから10年、という形かなと思っています。

なので、恩田丸子の悲しみが銀河竜を引き寄せて、あの墓は、丸子の意識の中の世界。
同じような事は、アルコと出会わず成長した恩田丸子の未来の可能性と会話していたことと近いのかも。

記憶がなくなり、恩田ミツコは新たな人生を歩んだ、なのかなと思っています。

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共通していた寂しさについて。
銀河竜は、恩田丸子を食べようとし、けれどマズくて吐き出してしまった。
「まずいね。今まで食べた物の中で、一番マズイよ。君はどうやったらそんなにマズくなれるんだい」

アルコは虫歯になってしまっています。
銀河竜は名の通り、銀河の中心。
口の中はブラックホールになっている、そんな性質のアルコが。

銀河竜の歯は、気持ちを食らうそうです。
悪い感情触れると、蝕まれてしまう。
美味しくないものは、悪いもの。身体に合わないもの。
丸子が美味しくないのは、それだけの絶望が、悲しさで満ちていたから。

ずっと独りだった銀河竜。
息をすると喉の奥に含まれた炎が誰かを焼き、寝返りを打てば誰かを傷つけてしまう。
除け者にされ、孤独だった銀河竜が出会ったマズイ食べ物、丸子。

その時の丸子は、孤独と絶望で満たされていました。
銀河竜(アスタロトも)がその瞳から感じ取ったのは、寂しさや絶望だと思うのです。
自分と近いから。
「面白いね。その瞳、まるで銀河の中心だ」

銀河は、きれいだけれど寂しい。
銀河創生から居たであろう銀河竜と、絶滅した竜の一族のアスタロトは、
寂しさの感情があったように思います。

感情を否定して、何かが輝くことを否定して。
アスタロトは、銀河竜になりたかったのかもしれませんね。
方向性を明らかに間違ってしまっていますが、力があれば孤独じゃなくなると考えていたのかも。
それが光るものだと狙ったのかも。

竜は絶滅したらしいのですが、アスタロトは竜の一族を名乗ります。
ハクアは娘扱いしていますが、どこかの星から拾ってきたのかもしれません。
出会い方や成長の仕方によっては、マルコとアルコのような関係を築けた可能性もあったのかも。

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アスタロトの宇宙船について。
ポット頭は、ダメージを受けると「いたい、つらい」と叫ぶんですよね。
そんな配下ばかりのアスタロトの船を、ブラックホールの奥に閉じ込めようとした。
確かに、悪い感情に満ちていたのでしょう。
そんな中でエルだけは、よく心を守って生き残ったなと感じます。
どうやって、そのままで居たのでしょうね。おでん店舗増えるといいですね。


銀河竜の宝玉ついて。
銀河を支配できるといわれるトカゲ石。
暗黒フィールド(?)において、トカゲ石から顕現する場面が描かれます。
あの石は、銀河竜の一部なのでしょう。

トカゲ石を見つめていた場面では、その力に吸い込まれそうになる人が多く居ました。
万能感、心神消失。同質の物なのでしょう。

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アルコとマルコについて。
「なにびびってんだ!」
マルコはアルコに叫びます。自分から遠ざかろうとするなと。
寂しいのを分かっている。マルコが大事なことも自覚している。
けれど銀河竜は、悲しい物を閉じ込める装置のような生き方しかできない、のかもしれません。
少なくともアルコは、やるべきことと知っており、
その上で、名前のついてない感情に殉じたのでしょうね。
「笑って、いてほしい」

マルコは、独りになった気持ちがあるから。
絶望した気持ちがあるから。
腫瘍に見せた気持ちは、孤独を避けることでした。
他人にコロッケを分けたのは、幸せを分けることだったはずです。

マルコとアルコは、伝えられない気持ちもあっても、一緒に居るとあたたかい気持ちになれていました。
それこそが宝だと、お互いに思い合えたのだと思います。
腹が減っても、そのことを言い合える関係。孤独だった二人の、独りじゃないこと。

話題が逸れますが、「マルコとアルコと銀河ラジオ」を聴いていると、
井澤詩織さんは、そのままマルコっぽくて良いですね。
吉田有里さんは面白いです。めっちゃ笑ってますね。

ガルグイユの水着、似合ってますね。あと黒崎(大森日雅さん)も。
ガルグイユ(田村睦心さん)は、どや顔がとても好きです。
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瑠璃(ファイルーズあいさん)の人気高いは分かりますね。
世の中辛いこと多いけど、いつも明るい。うるさいくらいに元気。

ラッカ(鈴代紗弓さん)も好きなのですが、
公式サイトに”FXで財政を支えている”と書いてあってびっくりしました。


希望について。
エルが奪われた心が、記憶で甦りました。
とすると、銀河竜に奪われた記憶も、もしかしたら。
「あたしに似た、アンタの名前だ!!」
求めていれば、いつかは。
「もし記憶が消えても、気持ちは決して消えたりしない」
お金を貯めて、マルコのアカウントを使った相手と取引の場で会う時には、
名前を呼べるといいですね。
そしてまた、一緒に宇宙を旅しているといいな。そんな風に思います。
二人で、一緒に。
「はやーい、地球はやーい」
「はやいはやーい」
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色々考えていくと、しっかり練り込んだ上で削ぎ落としたのだと思います。

が。
ハクアだって、それなりの立場や力はあった。
けれど、自分は何をどうしたいのか。意志を明確にみせたのは、本当に終わり間際ですよね。
自分を見つけたら、きっと前より笑うこともできるはず……なのですが。

見終わった後に、ハクアを把握できるか、です。
多少の時間が、わかりやすさが必要だと思うのです。
前述したように、分かりやすくなっていないんですよね。
だから、キャラクタのストーリーが物足りないと思われるかも知れません。

でもそれは、もうちょっと「マルコと銀河竜」の世界に浸らせてほしいなと思うから、なのかも。


※追記
エンディングロールを観ていたら、モンスターデザインにてんまそさんのお名前がありました。
てんまそさんのサイトを確認すると、確かにモンスターも描かれていますね。

それから、悠樹真琴さんもグラフィック参加をされていたようです。

サウンドトラック聞いていたのですが、『タランテラ』のピアノすごいですね。
『約束』『ゴールドコードブルース』はオシャレですし、
『皿いっぱいの。』『見えない宝』『でんでらりゅうば』『心豊かなる少女へ』を聞いてると、
ほんともう……。