ASa Projectさんの「かりぐらし恋愛」感想です。
『かりぐらし恋愛』を応援しています!

2018年3月発売作品。

ASa Projectさんの「かりぐらし恋愛」は。

幼い頃暮らした町に戻ってきた瀬戸田拓馬だが、
独り暮らしをしようと向かった昔住んでいた家は、廃屋そのものだった。

住む場所に困った拓馬は、馴染みたちの家にローテーションで泊まらせてもらうことになった……。

という導入です。
それでは感想です。ネタバレはありません。


楽しかった、というのが何よりも先に出る感想です。
とにかく会話の掛け合いが楽しくて、止め方が分からないほど。
選択肢が出ると少しホッと一息、というくらいに、スムーズに会話を楽しんで進めることができます。

この構成は、”かりぐらし”、幼馴染みたちの家を数日ごとに住まわせて貰う、
”はしご生活恋愛ADV”をしっかり盛り込んだからこそできたことなのでしょう。
まず、いい企画だと思います。

家に行くわけですから、どんな家なのか、どんな部屋なのかを見られる楽しみもありますし、
当然、相手の家族とも顔を合わせます。
面白いのは、ほとんどのヒロインに親がセットで登場し、楽しいやり取りをしてくれること。
ヒロインも相当だと思いますが、
ヒロインによっては、いえ、全てのヒロインの親のほうが、キャラクタが濃いです。
どの家庭でもドタバタなコメディ展開があって、飽きることがありません。

また、プラスワンの存在、サブヒロインとも仲良くなることができます。

システムもかなり満足していますが、
できればウィンドウサイズは大きく自在に調整したい。
あと、セーブファイルはギリギリでした。
120箇所+クイックセーブ12、全てフルに使い切りました。
ちょっとした会話が楽しいので、ここ良いなと思うとセーブしたくなるんですよね。
それほどにまで、魅力的な展開、魅力的なキャラクタを見せてくれたと思います。

不満は、このカットインの振り返りが見られないこと。
体験版でもありましたが、テキストと音声が当然のように違います。
Q:杏姉は参戦しないんですか?という質問に、
「えー?だって見てる方が面白いんだものー」音声で答えてくれます。かわいい。
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この画面ではセーブもできませんし、鑑賞モードで振り返ることもできません。
仮に鑑賞モードに搭載するとして、前後も必要な場合が多いのですよね。
どう組んだら良いのでしょう。
それでも見たいくらい、ちょっとしたおしゃべりが魅力的なのです。

そう、キャラクターが上手く完成されているなと思うのです。
何を喋るかというのは、キャラクターそのものを表しますが、
明るく楽しい会話のみ。

これくらいは作中の流れからすると割と普通と思えたり、実像と思える内容に納まっていて、
変に特定のヒロインを貶めることもなく、淀みなく進めることができます。
他のルートに進んだ時、キャラクタと合ってない、いわゆるブレも感じません。

会話中心の展開で上手いなと思ったのは、
何よりも、ヒロインのギャップへ派生させることだと思います。

そこまで設計したのかは分かりませんが、軽妙なトークのやり取り、
それが前置きのように効果を出していて、
全てのヒロインにギャップを感じる展開となっています。
そして、そこがとても魅力的なのです。

kr15
「まー正直なとこ、アタシも結婚とかよくわかんないや」
新妻ひより(くすはらゆいさん)

今作の変顔担当。
会話に乗るだけで良く分かってないことも多い。

体験版で一番惹かれたヒロインでした。
が、想像通りですごく良かったです。

このひよりが意外に常識人で、なんかかわいいのです。
友達感というのでしょうか。ひよりって、変に気取ったところがないんですよね。
これは……くすはらゆいさん、すごい。良いですね。こういうキャラクタ意外にも合います。

一緒に居て、自然と仲良く、関係性が育める。
「そうだなー、なるときは勝手になるだろー」
これ、別な意味合いでのセリフなのですが、本当にこういうスタンスなのです。
身近にいる安心感を感じさせてくれました。

町の商店街で暮らしている雰囲気が強くて、パジャマのまま二人で買い物に出たり、
一緒に台所に立つ場面がとても良いですね。

このキャラクタに、新妻という名字を与えた。素晴らしいと思います。
拓馬を振り回す顔芸キャラではなくて、家だと母親のみよりさんに振り回されていたり。
これも良いですね。

一緒に居ると気遣い細やかでびっくり。
少し、頼り甲斐すら感じるときもあって、
幼い頃の拓馬も幼馴染みを表面的にしか見られなかったのかもしれない、
実は幼い頃からかわいかったんじゃないか、なんて思えるほど。

他ルートに行っても、ずっとヘアアクセサリーを付けっぱなしなところとか。
その時の気持ちを大切にして居そうですよね。

もう少しだけかわいらしいところを見せる場があっても良かったと思います。
くせっ毛はアイデンティティと誇るけれど、
でももし、拓馬にかわいいと思ってもらえてなかったらどうしよう、とか。
これは、もっと見ていたかったという要望なのですが。

少し残念なのは、どういうわけかひよりの声がほぼ全て遠く聞こえます。

和風喫茶店を営んでいる、みより(緑栞夏さん)もかわいいですね。いいなあ。
迫ってくる頻度が高いので、こう、母娘ともに……な展開になるのかと。

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「ちょっとぐらいいいじゃん。まだ時間あるし……ね?」
荒波杏(花澤さくらさん)

幼馴染みたちの中では頼りがいのある姉貴分だったはずが、汚部屋の住人。
スタイルはすごく良いのに、何もしない、何もできない、何かすると惨事。
家族は苦労人で宿泊業経営のお父さんと、杏姉の未来が具現したかのようなお母さん。
苦労を分かち合える人だと、惣時(平マサルさん)と透子(京楓さん)のほうが
杏姉とくっつけることに積極的。

他の人と一緒に居るときはしっかりお姉さん、
自宅では一気に脱力。ゆるっとしているのが良いところ。

ただそれは見ていれば楽しいのであって、
本当にもう、惣時さんの苦労が偲ばれます。でも立派な旅館を経営していて、
すごくがんばったんですね。学生時代からのお付き合い。
でも、透子さんに惹かれてしまう気持ちもわかります。

親同士の仲も良く、親子丸ごと泊まりに来る展開も面白かったです。
そこから火がついてしまうのって、ふとした隙間、ですよね。
恥ずかしがるポイントが変わっていたり、ちょっとずつ好かれるよう変わろうとしていたり、
きっと二人はそれからものんびりした雰囲気で過ごすのでしょう。

杏が自らの魅力を理解しているのが分かるこのポーズが好きですね。
立ち絵から魅力的。

珍しく、音声がおかしいところが一箇所だけありますね。

kr14
「ファンサービスです(くいっ)」
世計絢花(鹿野まなかさん)

家族が変わった人ばかり。
威圧してくる父の龍之介(天然才さん)、男性が怖く潔癖症の母の茉莉花(春河あかりさん)、
目と唾で攻撃してくる妹の丸(北見六花さん)、弟の弾(花音さつきさん)と、
作品中一番人数が多い家族でもあります。

この家庭がいちばんおかしい。布団に入るまでに必ずドタバタします。

絢花自身もほんのり黒くてむっつりスケベ。
兄が欲しかったと、拓馬を兄呼びします。
最初は付き合いを幼馴染みたちに隠して過ごそうとして、むっつりさが切っ掛けになって。

なお、丸が意外にかわいらしくなるのも、絢花ルートの派生。
丸は絢花のことがとにかく好きで、絢花に近づく拓馬を邪魔して。
ストレートに迫ってくるのが良かったですね。
かなりグラマーなスタイルがシーンCGにも活きていて、ちょっとびっくりしました。

あと、茉莉花さんも悪い人ではないようで、少し慣れてくれたのは嬉しいですよね。
龍之介さんはもう少しですかね。
あ、きっと絢花がいってた「そういうのはファンディスクで」ということなのでしょうね。うん。

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「せっかくかわいいキーホルダーつけたのに」
桜木橋理兎(歩サラさん)

家族は海外で過ごしているため、独り暮らし。
家事もしっかりしている。エコバッグだって手作り。

幼い頃は男の子に思える外見と行動をしていたため、拓馬の中で再会した現在の姿と繋がらず。

拓馬が泊まりに行ってから変化が起きて、触れることで寂しさが際立ってしまったのか、
風邪を引いてしまうあたりでは、触れあいを積極的に求めるように。

まーかわいい。ほんとかわいい。
どのルートいっても大抵可愛い。

手を繋ぐという行為が、理兎にどういう意味を持つのかが印象的。
手繋ぎを求めるようになってしまったのは、幼い頃の追体験して、再確認したからなのでしょうね。
他のルートに行くと、手を離して欲しくないとアピールするのもそうだし。

独り暮らしのしっかり者、自分のことは自分できちんとする。
そんな理兎とは、二人で創り上げる生活を楽しめます。
二人でするのなら、食品の買い物だってデートになる。
これを実感させてくれるのがとても良いですね。

髪を下ろしている差分の時に、急に髪を結わえている差分に戻るのはちょっと頂けない。
せっかくの二人のつながりの後だというのに。
でも9割9分9厘かわいいのでよしとしましょう。
歩サラさんは本当に素敵でした。堪能しました。

kr18
シーンの良さもあります。
一緒に暮らしているからこそのシチュエーション、というのが多くて。
ひよりとは、パジャマのままベランダで、とか。
理兎とは、ユニットバスらしい狭さで、とか。
絢花は、興味があったラブホテルで、とか。
杏とは、一緒に行ったランジェリー店で買ったものを身につけて、とか。
生活感のある場で、一緒に居る感覚を増してくれるものが多かったですね。

もちろん一緒の空間で休むからこそ、ピロートークも完備。
この一緒に居る感覚を育ててくれる進行が良かったですね。

kr19
キャラクタビジュアルがすっきりしていてかわいらしいんですよね。
だからこそ、掛け合いをしていても楽しい、じっくりセリフを聞きたいと思えるのでしょう。

キャスティングもとても良かったです。

共通ルートで楽しいやり取り、ギャグで軽妙に進ませて、
個別ルートでヒロインらしさで引っ張る、そんな仕組みです。
誰かとルートが決まっても、その楽しい時間が続くように設計されています。

最近、あまり笑っていないかも。
掛け合いが楽しいものを味わってないかも。
そんな時に、特にお勧めです。



ダウンロード販売もあります。

そういえば、アニメにするのならば、という話題もあるようですが、
「かりぐらし恋愛」は最適だと思いますね。順繰りヒロインの家を回るところなど、向いていると思います。