Whirlpoolさんの「pieces/揺り籠のカナリア」感想です。
『pieces/揺り籠のカナリア』を応援しています!

2020年5月発売作品。

Whirlpoolさんの「pieces/揺り籠のカナリア」は、
2019年3月に発売された「pieces/渡り鳥のソムニウム」のアフターディスク。

4人のヒロインのその後と、追加ヒロイン伊集院貴美香との物語も味わうことができます。

それでは、感想です。
ネタバレは、強く多くあります。
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まず。「GameHeadline」様で今作のインタビュー記事があります。

「pieces/渡り鳥のソムニウム」をプレイした時、衝撃を受けました。
記事にもありますように、それまでWhirlpoolさんの路線とは違っていたのです。
そして、充分に満足しました。素晴らしかった。
そこへ、新たに「pieces/揺り籠のカナリア」がリリースされる。
まだ語るべき何かがあるというより、さらに何か起きるのだと思っていました。
起こしてくれる期待を持ちました。


だから、ティザームービーを見たときに、感じ取ったのは不穏さだったのです。

そしてプレイし始めて、久しぶりに進めることを躊躇しました。
こういう感覚をお持ちになった方もいると思うのですが、
進めると、終わってしまうんです。だから進めたくない。
でも、先が知りたい。進めたい。

しかし、不意にネタバレのようなものを見てしまい、
頭の中からそれが抜けるまで置いておき……。


インタビュー記事にもあるように、ドラマとイチャラブがしっかり味わうことが出来ます。
ルートごとに登場人物の道のりが違うため、注意が必要です。

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「どうして、こんな……」
伊集院貴美香(水野七海さん)

クラスメイト、いつも授業で寝てばかりいる高坂燕を夢に見るように。
しかも王子様のように格好良く貴美香を助ける場面ばかり。
自分の気持ちが分からず燕のことを振り回してしまう貴美香。
使用人にしてしまおうとするが、頼みがあるのかと思ってついてきた燕とは気持ちがズレてしまう。
そして、何か用事があるのか帰りたがる燕の後を付けると、森の奥の洋館に入っていく姿を見る。
モヤモヤが募り、さらに燕を縛ろうとする貴美香。

そこから始まる、伊集院家~華麗なる一族の歴史~。

ファンディスクらしい展開でしたね。
とても笑えましたし、楽しい展開でした。
空回り続ける貴美香も、暴走する貴美香も。
振り回される燕も、ちょっと踏み出すと空振りする燕も。意外とお似合いかも知れません。

クラスメイトも結構、楽しんで生活してますよね。ゲテモノ選手権とか。
高笑い。悔しがる。貴美香は水野七海さんのハマり役だと思います。

このルートでも他のキャラクタたちまで面白くて。
いやー、紬もありすもいいですね。

公式サイトのグラフィックページにもありますが、
天使と宣っていた貴美香に、ついに天使衣装が。もちろん輪っかのオプションも。
描くのは大変なのではないかと思いますが、縦ロール髪が魅力的だと思っていました。
フェイスがすごく映えるのです。

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「昼寝部の活動はこれにて終了です!」
藍野美織(そよかぜみらいさん)

卒業を控え、新たな一歩を踏み出す美織。
「今より3時間くらい1日の中で使える時間が増えるって思うと、夢が膨らむね~」
医者になることを志すが、長年染みついた昼寝習慣は取れにくい。
起きていようとすると、不意に意識を無くしてしまう。
さらに終了宣言した昼寝部が、ありすと燕によってボランティア部へ新生。
なんとなく居心地の悪さを感じてしまい……。

こちらもアフターディスクらしい物語です。
気付いたのは、様々な衣装を用意して、それを着る場面を作ろうとしていること。
そしてシーンに至れば、その衣装が映える。
選択画面にも登場していますが、美織の場合は、バニースーツ。
美織の場合でそれ以外に3種類。
シーンも1ポーズで終わること無く続くので、満足感が高いのです。
それだけシーンの長さがあるということです。

彩色が良くて、美織の身体は本当に柔らかそう。
最高のマリアージュ。
作中なかなか出てこなかった水着まで搭載。しかもオルシュタット学園指定。
美織に着せたというのが良いですね。

美織の物語は、終わってしまった後の物語。
ある別れの、後の話。
本編で大きな物事が動いたため、多少気の抜けたところもありましたが、
二人の関係にフォーカスできたと思います。

燕は全く器用ではないし、運も味方するわけでもないし、いわゆるヘタレ。
でも。
「……燕くんはそうやっていつも私のことで一生懸命になってくれる」

そよかぜみらいさんはかなり良いですね。
日頃から寝てばかりで、寝ながら喋っている、のんびりしたニュアンスの美織。
だから、衣装や接水で問題が生じた時、慌てたり焦りが切実に感じますし。
問われて答える「愛してるよ?」の当然感。
テキストとニュアンスの違うセリフ使いもなかなか。

セリフの前に動作を表すような表現をしてくれています。
例えば、「気にしいか……うん、そうなのかな? そうかも」。
相手のセリフを受けてのリアクションが入っていて、
言われてみればと考える吐息、受け止める吐息が差し込まれ、
美織の考えが納得に移るのが伝わりました。
そして、納得しかけて、納得するのは納得いかないとなるところも。
シリアスなだけでなく笑いに戻すのが、二人のこれからを感じさせました。

そしてあの山彦は、この世界にいた誰かに伝えるようでもありました。

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「ねぇねぇ、ジャーマネおにーさん」
美城ありす(鹿野まなかさん)

”離れていても、お互い頑張る。”
約束を胸に、ミッテベルの象徴的な存在となったありす。
毎朝町に子守唄を届け、レッスン、トークショーから新聞取材と忙しい。
「ありすがいつも元気に頑張れるのは、おにーさんのおかげですよ」
燕はマネージャーとしてありすに関わり続け、スタッフからは二人の関係を生暖かく見守られていた。
ある日の病院の慰問で、単なる孫を愛でる扱いを受けてしまったことから、
持ち歌を増やすべきと考えた、ところに吉川晃司が現れる。
作った曲は、紬があっさり絶句する出来。しかしありすはもっともらしい理由で乗り気。
そこで燕は……。

ありすは元々コミカルなところがありますから、ファンディスクに向いています。
ちょっとしたイベントも、ありすが全力なので楽しめるとでもいうか。

でも燕とありすの絆を大事に描かれていて、朗らかに見守ることができました。

燕は結愛を頼って、でもヘタレて締め切り日まで出せないところ。
とても燕らしいと思ってしまいます。
そんな燕にどこか期待しているありすも、良いですよね。
『キミのとなりに』聴いてみたかったですね。きっと素朴なラブソングでしょう。
『おはようのうた』『星空のギグ~天使が微笑った夜~』も。

この他にもイベントが盛りだくさんで、たくさんの幸せが詰まっていました。
ありすは作品のテンション上げ担当ですから、数ダイアログに1回は笑わせてくれます。
結愛も紬も、カステラも。
良い関係ですよね。お互いを思うありすと燕のことを、助けてくれます。

そして約束を胸に、ありすは誰かを助けようとします。
役目、役割を広げたのは、上手い物語展開だと感じました。

他のルートで顕著なのですが、ちょっとウザい感じになっちゃってますね。
もう少しクレバーな子で、その明るさは色々抱えているからこそ。
元気な自分を見せたい、弱い部分を見せたくない、が混ざったものだったはずなのですが。

シーンビジュアルも本当にきれいですね。
キャラクタの厚みも感じる。かわいらしい。足や脇や腹といった部位の描写がすごいです。
線画もさることながら、彩色良いですよね。

それにしても「とぅわ!」のバリエーションの多さ。
日頃は弾むボールのように動き回るありすでも、
お母さんに声を掛けるときは違うのが分かって面白いですね。
どんな言葉を、どんなイントネーションで掛けるかというのは、人物関係性を表します。
きちんと差異をつけて演じてくれているのが好印象。

病気の演技も上手いです。
ありすらしい元気さは残しつつ、熱にダメージを受けているのが良く分かります。
鹿野まなかさんは見事でした。

「SAI☆YOU!」くらいの発声をしてくれているので、
テキスト側が寄せてあげてほしかったかな。「採用」そのままの表記でなく。

「90点?」と聴くのがものすごくかわいい。これぞ信頼しきった相手とのやり取り。
あと、ヤマノテセンゲームの文屋版も。ちゃんとゲームしていますよね。

小悪魔衣装のマッチング度合いすごい。

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「言えないよ、燕……」
小鳥遊紬(鈴谷まやさん)

片道一時間半のハイキング。二人で水着になり、川魚を釣り、焼いて食べた。
紬が持ってきたサンドイッチと一緒に。
二人きりで一緒にいれば刺激的なこともする。紬はしっかり受け入れてくれているように思えた。
燕は思っていた。
あの時間を取り戻すことはできない。だから進むんだと。

紬は思っていた。
水着になると目立つ傷跡。あの夜が思い起こされる。
忘れていない。忘れてなんかいられない。
燕のことを好きなだけの自分になれたらいいのに。

お互いを思って言えないこと。
だから遠慮無くやり取りする部分を傍から見れば、素っ気ないものになる。
周囲からは熟年夫婦といわれるのも、それが理由。
そしてありすに「問題は紬おねーさんの方にあります」と言われてしまい……。

いやー、紬って良いですね。
なかなか居ないキャラクタだと思います。
落ち着いて、お姉さんとして構えている時はとても頼れる。
推理や勘で燕を先回りし、助ける。
しかし妙に打たれ弱いところがあって、慌てたり照れたりはする、こともある。
燕と似た部分では、間が悪く場面をバシッと決め切ることができなかったり。

燕は、「紬と一緒にいると、何をしてもだいたい楽しいから困る」と感じますが、
紬も感じているのではないかと思うのです。似たものの二人だから。

1点だけ。掃除により洋館の蔦が減りますが、
数日後、訪れた時には無かった蔦が、紬と燕が洋館を出るとびっしりに。
こういう部分が気になってしまうのは、あれでしょうね。
演出なのか、それとも何か起きたのかと考えてしまうからでしょう。

紬のビジュアル、とても魅力的ですね。
カットインで紬の立ち絵全身が映りますが、等身やバランスが良いですよね。
シーンもかなり色気を感じました。
体験版にも収録されていましたが、紬が川に足を入れているイベントCG。
水辺の綺麗さと、足の美しさが目を惹きます。
水着を選んだありすには、甘いものをたくさん買ってあげて良いはず。

何回見ても、水辺で遊んでいる場面は良いですね。
紬と燕って、こういう距離感なんだなと良く伝わります。

「ムード作ったり……一生懸命頼んだりしてその気にさせてよ」が特に魅力的。
日頃言えない、こういうシーンでの素直さが。
一方で「燕くん」シーンも凄かったですし、
翌朝の「モーニーン!」は、上手くいえませんが、よほど紬にとっていい夢だったのでしょうね。

紬が良い子すぎて、なんでしょう、もう鈴谷まやさん以外の声は考えられないです。

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「……まだ、夢の続きを見てるみたい」
結愛(夏和小さん)

結愛がオステンシュタット学園に復帰する。
本人も緊張していたようだが、それを上回って燕は心配していた。
授業を抜け出し、結愛のクラスへ見に行ったり、下級生に紛れ込んだり。
「燕はわたしのこと好きすぎて、危なっかしいことも平気でする予備軍なんだから」
燕は、それでも気になるし心配なのだ。

少しずつ学園に溶け込んでみたり、やっぱりそこまで溶け込まなくても良いかと思い直したり。
結愛の学園生活は……。
「夢見ているみたいに幸せなの」

物語の鍵となるヒロインです。
多くの作品で、結愛のように背負わなければならないものがあるヒロインは、
いわゆる萌え指向の魅力が感じにくい。
ところが、結愛の場合はきちんと魅力を引き出しているのです。
そこがWhirlpoolさんのすごいところ。

つっけんどんになることも多い結愛が、これではいけないと、燕への対応を変えようとします。
そして登場メイド衣装。
日頃の結愛が違うからこそ、良さが感じられますね。
しおらしいところがかわいらしく思えましたし、衣装もすごく合ってました。

クールになりきれないところがとても魅力的。
澄ました表情は、夏和小さんの声がぴったりです。
照れたりするとわたわたしてしまうところも、らしいですよね。
狸寝入りの感情豊かな「ぐーぐー」は最高でした。超肉さんのSDによるへの字口がとても良い。

一瞬表情を曇らせる差分を見せ、何かあるんだろうなとささやかに匂わせる演出も。


ここまで充分に楽しませてくれたと思うのですが。
そうです。ここからが「pieces/揺り籠のカナリア」。
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「……なあ。眠りから覚める時って一瞬怖くない?」
同じように気持ちを伝える燕。
その度に、結愛は少し悲しそうな顔をする。
「もしも、よ? もし……」

結愛の涙を見た、と思った。
燕が起きると、カレンダーが学園祭の日であることを伝えてくる。
燕にとって大事な日だ。だから朝から結愛の元へ走った。

燕の願いを、何と捉えたのか。
願いを聞き届けた、後の世界のはずが。

誰かに語りかける、誰かの声。
「キミはどう思う? キミだって見てるんだろ? そうやってまどろみながらさ」――。

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この画面になると、豊富なシステムボイスすら無くなります。
タイトルコールもです。
徹底した演出。迎えるエンディングへの道が開けたことを表しています。

オープニングムービーにあったフレーズ。
”Somnium”は”夢”を表す言葉ですが、”Omnium”は”全”を表します。

実は”Omnium”ルートに入るまで、歌曲を含む10曲近くが未使用のまま。
期待が高まりました。
不思議に思ったのです。前作Trueのどこに繋がれば、結愛と燕は”そこ”にいるのか、と。

「前作トゥルーENDの解釈を明らかにしたうえで、これ以上はないというくらいの結末を見せる」
「前作の解釈とは全く異なるエンディング」にしないこと。
ということでした。

pieces/渡り鳥のソムニウム」のTrueを読み直しました。
改めて読まないと、この先は特に進めてはいけないように思ったのです。
何回読んでも胸を打つ。
そうでなくても、あの物語は好きで、結局7回は繰り返し読み進めています。
少なくとも後1回は、もう一度味わいたいと思うほど。

では、以下はネタバレになってしまうので。


最初にいってしまうと。
この”Omnium”で得たものもあれば、期待したほどではなかったかもしれない、ということでした。

解釈の異ならない提示、なのかもしれない。
けれど、あの感動を否定されたと感じています。
あのTrueのカタルシスを失わせていました。
読み誤っていたら申し訳ないのですが、だって、どう読んでも否定されている。
全てのキャラクタと想いまで。

あれは、独りよがりで、偽物だったと。
ノアの言葉は、そういっていました。

これが”全”、完全なものなのだとしたら、Trueは何だった?とすら思ってしまいました。


これが”全”の解釈提示だとすると、Trueにおいて、空を飛び人間の町を眺めているあの場面は、
新たに創った人間の町を眺めていたことになってしまわないでしょうか。
自画自賛、そんな天使だったでしょうか。
夢から醒めた人々が再び出会ったことも、創られた出会いになりませんか。
再会に涙するのも。
渋谷が少しモチーフの背景まで用意して、ここが現実だと思わせたのはミスリードだったのでしょうか。

あれが彼らの現実だからこそ、汽車で還る場面が盛り上がるのであり、
その還った先に自分たちも移動するから良かったのであって。

飛び去った鳥を見た結愛の涙も、無かったことになります。
失ったからこその涙も。

違うだなんて、公式にいわれるとは思わなかったのです。

Trueラストの紬との会話、すごく好きなんですよね。
なんであんな会話紡げるのだろうって。
あれ、紬との距離感でなければできない会話ですよ。最初から二人は相性が良かったのです。
そして、「心配しないでね?」……。
この場面で流れる『微睡みの国』を聴くだけで、気持ちが揺らぐようになっているほどに。
ありすが元気に活動しているからこそ、再会の約束が篭められた歌が活きるし、
天使の贈り物なのだと思っていました。
背中に飛びつきたくなるのだって。
そして、想いがどこかに残っていたからこそ、涙を零す。
美織が連れていたのだって、本当に良かったと思えた。ねえ、シュナイダー。
その寝顔を見て胸の奥が掴まれる様な気持ちになるのだって、プレイヤーの気持ちと一緒でした。

あの、夢のような再会は。二人を繋げてくれた、そっと降る優しい羽根は。

そうか、昨年は本当に良い作品に出会えていたのだなと。
改めて感じました。

でもそれが、否定されてしまった。


”Omnium”、力を入れていることは感じました。
仕掛けが良かったですよね。
ティザームービー、そしてオープニングムービーから、ふんだんに匂わせてくれていました。



ティザームービーを見た感想は、ある意味で正しくて。ある意味で決定的に違っていました。
「わたしは、いつまでも微睡んでいたいのかも」
結愛のセリフは、決して、ポジティブなものではなかったこと。
不安を誘う色は、正鵠だったこと。
I'll return to that dear place.
ムービーは、恐ろしいほど中身を理解した作りなのです。
プレイ前。プレイ中。そしてプレイ後に見ても楽しめるのには、恐れ入りました。
瞳の中に映るのは誰なのか。
何故、燕が霧散するのか。
何故、結愛の名字が消えるのか。このあたりは見事でした。
そして、籠の中の鳥を見上げるように寄り添う鳥……。

製品版を起動するとオープニングムービーが流れるのですが、毎回見てから物語を再開していました。
『オルニス』。
メロディが良く、さすがeufonius菊池創さんだなと思って聴いていたら、
実は、歌詞も大分考えられていますよね。作詞はeufoniusのriyaさん。

歌い出し、”何かが足りない、そんな日々で”と始まります。
pieces/渡り鳥のソムニウム」の後であることを、歌詞が伝えてくれています。
これは、あのTrueの後だと。燕の視点で、結愛の視点。
”もう一度、つかまえて”。
これも、そうですよね。

”Omnium”の展開そのものは好きです。見事だと思います。
取り残された、燕の揺り籠。だから同じ時を繰り返す。辿り着くために。
ノアの存在は少し惜しい。
主な役割は説明に収まってしまいました。
そして探し物を見つけることもなく去っていく。

欲をいえば、もう少し演出に力を掛けても良かったと思うくらい。
燕が結愛を探す展開は、もう少し重たく仕上げても何か出来たと思うのです。
パズルのピースを集めていく画面をもっと入れても良かったのかも。
エンディングでだけ、結愛の指輪が収まっていそうな箇所を光らせるとか。描いてないとしても。

静かになった場所では、音楽すら消す。素晴らしいと思います。

もし、”Omnium”が別解釈としての提示なのだとしたら、
結愛を追いかけたのだとしても、燕が他のヒロインにも慕われるのでも良かった。
信頼より、もう少し先へ。
どのキャラクタも魅力的で、誰かを選ばないといけないのが苦しいのです。
「気が多いのはメッだよ?」と美織にいわれてショックを受けたりしましたが、
そうできないからこそ良い物語として成立したのかな、とも。

エンディングの場面をあの立ち位置に寄せたのは、様式美ですよね。
もう少し別なボーイミーツガールでも良かったとは思いますが、
最初からこの位置で会わせようと設計したのかなと思って、嬉しくなります。

結愛ルートで他ヒロインが少しおかしいのは、結愛と燕以外がいなかったからでしょうか。
サブヒロイン化しすぎているというか。

結愛はどうやって器を得たのか分からないのと、
どうやって名前、この場合は実在感でしょうか? 得たのかが分からないです。
燕が探せなかった、なら、結愛という名すら失ったことになりませんか。
誰かに結愛と呼ばれたから存在が確定した?量子の話になりました?
新たに産むことができないルールで、新たに産んで人との縁を絡ませたから見逃してくれた?
となると結愛は何らかの繋がりを周囲と持っていないとおかしくなりませんか。
燕が結愛を探す過程で、人との縁がパズルのピースをはめ込むみたいに、
この世界で形成されたから?とも考えましたが順が違う。
ここが難しいです。理解が及ばない。
スッキリせず、モヤモヤしたままエンディングに辿り着いてしまいました。

でもやっぱり。
あのTrueに繋げてくれても良かったじゃないですか。
殊更否定する必要ってありましたか。
結愛は知って、何とかしようとする。けれど、やっぱり燕によって改めて夢を醒めさせられてしまう。
そして結愛は窓の外を見て呟くのです。「ツバメさん」。
それでは、いけなかったのですか。
『カナリア』は良い曲でしたが、場面が曲にやや負けてしまっているように思います。

前作のエンディング、『微睡みの国』からはじまる一連の流れと、
迎えた最後の場面。『ソムニウム』の組み合わせには、感情が遠く及びません。
あれこそ、完全な受容、誰もが待ち望んだ願い、肯定できる祈りのカタチだと思うのです。


ともかく、じっくり楽しませていただきました。
進めたいのに強制的に休憩入れながら進めたのは久しぶりでした。

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今作、リリースされて良かったと思っています。
改めてヒロイン達、世界観や音楽、グラフィックや演出の良さを感じられたから。
良いキャラクタばかりですよね。
だから、終わってしまうと思うと、やはり寂しい。

全体的には、紛うことなきアフターディスクでした。
全く駆け足ではなく、最後まで盛り上げてくれた本編が前提にあって、
だからこそ、そっと差し込まれたものに気持ちを揺さぶられる。

フルプライスではないのですが、フルプライスのボリュームがあります。
シーンも同じで、かなりボリュームがあります。しっかり。

ファンディスクとしてみると、ヒロインの衣装が様々用意されています。
これがまず良かった。
そこで、まあいいじゃないですかと、プレイヤーを宥めるように展開を急く作品もありますが、
全く慌てない進行が好印象。
衣装が登場する流れがきちんとあって、その衣装でシーンまで楽しませてくれる。
そして萌やす、物語へ進むという展開。
満足感は高かったです。
きちんと、二人でしていることだと伝えきるシーン構成も。

Whirlpoolさんらしさの笑い。きちんと今作でも盛り込まれています。
無理して無くて、かつパロディネタはほぼ無い。
ここも恐らく気を遣ったのだと思います。
声出して笑える展開が多いですよね。これも良かった。

キャスティングの素晴らしさ。サブキャラクタであっても。

吉川晃司(芦久比剥巳さん)の「イェア、ロッケンローーーール!」は最高のシャウトでした。
是非ヒット曲を量産して欲しいですね。
「膨大な量のテキストをビジュアルと一緒に楽しむことで得られる、作品への感情移入」
「そこから得られる感動やカタルシス」(「GameHeadline」様インタビュー記事
この志向には賛成です。本当にそうだと思います。

今後も楽しませる作品が登場してくれると、期待します。
こんなに気になるブランドになってくれるとは、思わなかったですから。



本編未プレイの方はセットがオススメです。


ダウンロード販売もあります。