fengさんの「夢と色でできている」感想です。feng8th『夢と色でできている』応援中です!

2019年2月発売作品。

fengさんの「夢と色でできている」は……。
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幼い頃、幼なじみたちと、”防衛軍”と名乗っていた。
それぞれカラーベルを持ち、レンジャーのように役柄があって。
七人は、本当に仲良く過ごしていたのだ。

けれど、リーダーの姫色が引っ越すことになって。
そしてリーダー役を引き継いだ乙原藍は、防衛軍を解散した。

それから長い時間が過ぎて、乙原藍が神門学園二年となったある日。
時期外れの転校生が現れた。
かわいい女の子だが、その挨拶が変わっていた。
「あたしの一番の目標は、世界の平和を守ることです!」
周囲から見れば、変わった挨拶なのだろう。けれど、乙原藍から見れば、変わっていない。
想い出のままの姿で、飛鳥井姫色は帰ってきたのだった……。

という導入でした。
それでは、感想です。
ネタバレは少しあります。


『夢と色でできている』。作品タイトルと曲題が同じですが、
相変わらず、堀江晶太さん作曲、佐咲紗花さん歌唱の曲は素晴らしいですね。


さて。
全体的にいえば、不満があります。

体験版をプレイした時点では、ノスタルジックな雰囲気がありました。
昔、仲の良かった7人が、再び出会う。
中心人物、飛鳥井姫色の転入によって。
幼い頃と現在を繋いで、そして物語が動き出すような期待がありました。
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幼い頃の立ち絵を用意して場面を作っているのですが、
幼い頃から変わっていないと思えるところは笑顔で見ていられますし、
現在も、仲が良すぎてやや幼く感じる会話ではありますが、軽妙さがあります。

だから思うのは、今は疎遠だとする理由が全くないこと。

防衛軍は解散。でも関係が壊れるのかといえばそうではなく。
乙原藍にしても、積極的に人を遠ざけては居なかった。
物理的距離の生まれた飛鳥井姫色や黄良涼助はともかく、
他のキャラクタと「久しぶり」と挨拶を交わすこともないわけです、本来は。

性格上、絶対にやりませんが、
仮に乙原藍がメンバーに相当な罵倒をして距離を離したところで、
乙原恋と同居している時点で、それは崩れます。遠ざけられない。
ストーリー開始前の前提条件が少し怪しい。
あの時に還る以上の、仲の良さ。

気になる矛盾を飲み込んでしまえる展開があるのだったら、納得したと思います。

そして、ブランドさん側は、このシナリオで良かったのでしょうか。
何を見せたかったのか、掴めませんでした。


では、要素を個別に。

まずシステム。
吉里吉里Zです。体験版の時にも感じていましたが、上手く調整されていて、機能豊富。
使いやすいです。セーブファイルが自在に追加できるところが良いですね。
サスペンド機能を初めて便利だなと感じました。
また、セリフ音質、音楽音質ともに素晴らしい。
デフォルトのバランスで進めると、音楽はかなり大きく鳴っている。
けれど、音声がまったく聞こえにくくならない。音周りがすごく良いのです。
そして画面はフルHDサイズで、魅力的なキャラクタを楽しむことができます。

原画はKaroryさん。
幼い頃のキャラクタ作画は九条だんぼさん。これもかわいらしいですよね。
そしてなちゅらるとんさんは、SDキャラクタとサブキャラクタの一部。
金子先生と銀杏が担当しています。

Karoryさん原画家作品は8年ぶりになるのですが、
fengさんにとってもフルプライス作品は6年ぶり。

公式サイトオープンは2018年ですが、この作品の開発は長引いており、当初2015年に発売予定でした。
開発、シナリオは、2014年にはある程度進んでいたのではないかと考えてしまいます。
作中で携帯電話が登場し、通話とメールでコミュニケーションを取るという部分を見ますと。
何故、年のことを挙げるかといえば、素材の年代がバラバラであるように見えることと、
一部スタッフの方が他ブランドで後にリリースされた内容と似通っていること、
また、当初予定通りに発売されていれば、受け入れていた可能性があると感じるからです。


この作品は、ルートロック型の進行制御があります。
進めているうちは、その制御理由が分からず、何故、固定選択肢が表示されるのかも分かりません。
クリアしてもその理由が分かりませんでした。

謎の提示が上手くありません。
この作品における謎とは、どうして乙原藍が防衛軍を解散したのか。

作中の雰囲気はとても明るく、仲間との楽しいやり取りが楽しめますが、
解散に関係する事柄だけは、重要そうに扱われています。
いつまで経っても明かされないのです。
ヒロインが5人いますが、4人終えた時点でも明かされない。溜めに溜めている。

それほど大きく重要な事柄だというのか。
……と、思ったのですが、さほどでもないのです。

謎が明かされずに4人のヒロインルートがどうなっているのかといえば、
ノスタルジーを感じさせる体験版パートが、個別ルートになるとほとんど活かされない。
かと思えば、現在のヒロインと一緒に乗り越えるものも、あまり無かったりします。
あるにはあるのですが、前述の通り、ここでも謎の提示が上手くないため、
出てきて終わる雰囲気。

キャラクタの魅力は出ているのですが、見ている側からすると、
本筋のお預けを食らった状態のままなので、これは正しいのか、
安心できる未来なのかがわからず、楽しみ切れませんでした。

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例えば、七夕紫織。
用心棒のようにとても頼りになる、防衛軍のパープル。
幼い頃は、なちゅらるとんさんのSDイラストで峰打ちの無敵さを、
成長してからのお姉さんらしさを、白月かなめさんの声で感じさせてくれたと思います。
体験版の時、最近体調が悪いことを示し、
あれだけ強い人に一体何が?と思わせてくれていましたが、体験版後、すぐに解決。

学園長が七夕紫織の母親。
個別に入るか、別ルートに入るととそれがすぐ明かされますが、
物語の山となる存在として扱われません。
猫のミドリとの別れは予告された通りとはいえ、そこで何を掴むといったこともありません。
乙原藍にとって初恋の人に似ている紫織ですが、それをさほど匂わせません。

ほんの一部しか使われない紫織のドレス差分が魅力的ではありました。
白月かなめさんの声は、こういう華やかなタイプと合いますよね。

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例えば、飛鳥井姫色。
少なくとも、キャラクタ設定あるいは物語を変えてあげて欲しかった。
猪突猛進型のリーダーで、周囲を引っ張るところが輝いて見えたと乙原藍はいいますが、
話を聞かず、学ばず、周囲の考えにも聡くない……と、乙原藍のようには姫色を良く思えません。
安請け合いをして困り、それでも強がる様は、もう少し考えて行動させて欲しいと思ってしまいました。
本当の姫色は気弱な子だったのだから、それが今も変わらないのだから、
周囲を気にすることのほうが多くなりそうですよね。

用意された山場が、きちんと対話をすることだというのが、作品のテンションと合っていないように思います。
軽妙な会話が主体でセリフが多い作品で、省みることができないのが強調されてしまって。
本当は気弱で、ヒーローに憧れているだけ、というのを最初に出しておいて、
もう少し本人の成長を喜べる展開だったら、と。
他人の事情を考慮せず振り回してしまっていた。そのことに気付いて、
表面上だけで仲良くなっていると藍あたりに指摘されて。
本当に欲しいものは、憧れはなんだったのか見つめ直す……そんな展開だって作れたと思います。

何よりも、再会というボーイミーツガールを演出しながら、これなのかと残念に思いました。
それに、幼い頃の姫色は、大切にしてあげて欲しくなりますよね。
一緒のものが好きで、だから一緒に肩を並べて歩いて欲しい願いは、最初から分かっていたはずなのに。

姫色のテーマカラーと、桃山いおんさんの声はピッタリでしたけれども。


それと、黒羽かもめ。
この3人のうちどれかを進めると、刻乃雲(柚原みうさん)が「刻が動き出す」と語りだし、
刻乃雲のルートが解放されるのですが、やっぱりルート制御する理由がわからないのです。
特別に何か明かされることがない。
他のルートでも同様に、雲が「もくもく」とかわいい場面が多く見られることくらいで。
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というか柚原みうさん、すごく合ってますね。
「あまり私をぺろぺろしないほうがいい」というのは、もっとしてくれという要望に違いありません。

雲が見ていたのは乙原恋が見た景色ですよね。
恐らく場面を出したいために見せたのだと思いますが、
何故その景色を見ていたのかと考えると、分からなくなってしまいます。


そして最後に、乙原恋。
「むっつりスケベであろう、むっつりスケベであろう」というセリフが藤咲ウサさんの真骨頂。
さすが、シーンシナリオ担当の和泉万夜さんが力を振るう属性を請け負うキャラクタだけあって、
他のヒロインたちよりも一段上の役を全うしています。シーン中の表情もなかなか良かった。
ですが、メインヒロインとしては見ることができませんでした。
最後に持ってくるのであれば、乙原恋に与えられた設定を重く表現しても良かったと思います。
それこそ、記憶が一部無いこととか。

たしかに不幸な出来事なのかもしれないけど、事故は単なる事象であり、誰かが責任を感じることでもない。
キャラクタの幾人かが自責の気持ちを吐露しますが、その理由も今ひとつ伝わりません。

まして、事象を留めた雲が責任を感じる理由はない。
聞かされる藍も、責任について否定をしてあげない。
藍が自身に責任があると述べることでは無い。それは、自分のことしか見ていないから。

この流れを作るために、恋と恋愛をする理由は無かったと思います。
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それと、乙原恋が秘密基地の先の崖に行く理由も無かった。
あそこでなければならない理由は、何となく分かるのです。
同じ規模の事件を起こす。
誰も注意を向けていない、それこそ手の届かない海外にいる誰かが事故に遭うような事象を回避する。
ただその考えに至った理由が提示されないのですよね。

段階的な演出が無いのです。
何かの気配、起こりそう、別な事件が起きる、本当に起きるといったような。
それまで何の気配も無く、いきなり。
だから、乙原恋の行動も突発的にしか思えない。ここ、この時という必然が表現されないばかりに。

何を守りたかったのかも今ひとつ。
解散の理由を伝えると、メンバー誰かへの見方が変わってしまうと乙原藍は言い、
確かに乙原恋をかばっているけれど、恋をフォローしやすいようにしているだけ。

であれば、もっと積極的に距離を取ろうとする、それこそ他県の学園へ行くと思うし、
付かず離れずが良いのであれば、最低でも独り暮らしをしようとするのではないか。
そこまでの気力が無い、鬱屈した存在には描かれていません。
ずっと他者を騙し続ける気概を見せているわけでもありません。
乙原藍の性格設定とは、合っていないように思えます。

そもそも、乙原藍だって、奇しくも乙原恋を助けたのです。
幼いながら、命を繋いだ。
そのことを善しと思えなかったのは、何故なのでしょう。


最後には、乙原恋以前の4人と繋がったのは、夢だったかのような表現があります。
4人は前座なのであれば、もう少し構成の仕方もあったのではないかと、最後まで進めて思いました。


全体を見渡してみると、一番良かったのは黒羽かもめ(小波すずさん)。
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象徴する黒色のカラーベルを無くしている。
飄々としていて、乙原藍をはじめ周囲を煙に巻くような言動が多い。
他人に言わせている時は「愉快痛快」。でも自分が言わされる時は照れ混じりに「くっ」。

からかいもするけれど、どの場面で出てきても良いキャラクタ。思い遣りがあって優しい。

いやー、小波すずさんの演技が冴えます。

見ていて面白いキャラクタに仕上がっているのは、セリフの良さだと思うのですよね。
何を言わせてキャラクタにするか。シナリオの腕。
それを、声優さんの演技が具現化する。キャラクタを膨らませて魅せるのは、まさに演者の腕です。

「……」という文字列を、どう演技するか。
何も言わないで、次のセリフの溜めにする。それもありでしょう。
次のセリフの切り出し方に被せる。それもありです。

どちらも、小波すずさんはやってのけています。
他ブランドで近い役柄は演じられていますが、遙かに演技の冴えを感じます。
このあたりは演出の差と、黒羽かもめが感情表現豊かな分だけ、より感じるのでしょうね。
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「貯金少女ウミネコ☆ブラック」
ノリとテンションが藍とピッタリ。いいパートナーになるでしょう。
ギャグの時は、ダメ押しをしてくるのも好きです。

コスプレが趣味ながら、メンバーには隠していたのですが、
もう少し色々見せて欲しかったかもしれません。
でも水着差分の髪型もかわいいからよし。

これが一番良いルート。
うっかり最初にルートに入ってしまったのですが、それで正しかったようです。
他ルートで乙原藍に対して言っていることが冗談めかしているけれど、
黒羽かもめは本気なのですよね。そのことに気付けるようになるからです。

昔から、藍のことが気になっていた。
だから「藍限定読心術」なのでしょうね。ずっと見ていたから。

けど、作品としては、黒羽かもめは前座です。

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どうして凛子(七瀬こよりさん)はヒロインになれなかったのだろう?と思います。
そこが全く分からない。
良いキャラクタですよ。かわいいです。
幼い頃に乙原藍と出会ってから、元気に振る舞うように努めてきた。
ずっと憧れていたから、見つけて追いかけた。
一番縛りが無く、素直でまっすぐ。魅力の塊だと思えます。

藍は、気付いていたから突き放したのかも知れないと振り返っています。
藍は、まだ向き合えなかったから、なのでしょうね。
ちょっとかわいそうで、だから先に再び出会い直したいと強く感じますね。

凛子は最後まで良い子でした。
あと、私服がとてもおしゃれです。

どれもこれも、良いキャラクタなのですよね。
声優さんの配役も良くて、よいキャスティングだったと思います。

少しだけ謎解き要素があるので、犯人を捜す選択肢となる場合もあるわけですが、
仲間を疑うようなことプレイヤーにさせる理由もわかりませんでした。

シーンが連続するのには何か理由があるのでしょうか。
どうも消化すべきことになってしまっているように思えて。
紫織との2回目は特にそうなのです。1回目が終わって2回目が急に始まる。
そして2回目が急に終わったら2クリックで新たな事態が展開します。
本当に、この箇所へ差し込んだだけとしか思えない。頭の切り替えが早すぎます。

エクストラストーリー乙原藍も、曲に合わせて収められていない。
もう少し上手くできなかったでしょうかね。


ちょっとしたことですが、背景画像のこれ。すごいですよね。
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乙原藍の部屋なのですが、綺麗。
景田学さん、珠品上夫さん、ykさん、それと、よう太さんも背景協力でクレジットされています。

柊涼さんデザインのタイトルロゴもとてもオシャレですよね。
カラフルにしたのは、キャラクタたちのテーマカラーを。
そしてスタイルのよいフォントにしたのは、ノスタルジーを匂わせますから。
素敵です。

素材の良さはとにかく冴えていたと思います。声優さんの演技も含めて。

ですが、企画や物語はもう少し力を入れて欲しかったなと思います。
問題は、fengさんの最終作であることでしょうか。
次に期待を預けることができない。それが残念です。

でも。fengさんが仮に活動を終えたとしても、
スタッフさんはその後の道がある。そう期待したいです。



ダウンロード販売もあります。
夢と色でできている夢と色でできている