PURESISさんの「QUALIA ~約束の軌跡~」感想です。

2020年6月発売作品。

PURESISさんの「QUALIA ~約束の軌跡~」は……。

世界初のチューリングテスト成功例を産み出した越野博は、
そのアンドロイド、マキナの成長を促すため、一緒に生活をすることになった……という導入です。

それでは感想です。
少しネタバレがあります。


ちょっと納得と満足感が低い作品でした。

体験版をプレイすると、システムがしっかりしていることに気付きます。
SAVEをしてもAUTOモードが解除されないのは本当にありがたいです。
よくSAVEをするので、逐一解除されると、その度に手間が一つ加えられてしまうので。
そのSAVEファイルも多くて良いですね。191箇所もあります。

音声も良い。その音声を保存できるボイス登録機能もあります。

グラフィッククオリティの高さ。
鈴城敦さん原画のビジュアルは、本当に素晴らしくて、
ロープライス作品を超えているなと最後まで感じさせてくれました。
マキナがメインヒロインなのですが、共同研究者カレンのビジュアルまで素晴らしくて、
このカレンと仲良くなれる展開は無いのかと、横恋慕してしまうほど。
芸が細かいと思ったのが、手の変化を用意したこと。こういうこだわり、本当に素晴らしいですよね。

これらの素材を元に、公式サイトのコンセプトにあるような展開を、描き切ってくれそうな期待がありました。
『人間』と『アンドロイド』であるがゆえに、お互いの性質の違いや絆を試される運命を前に葛藤しながら、
影響し合い、成長し、愛し合っていく切なくも温かい純愛ストーリーです。
少しゆったりめの進行で、あまり慌てていないことも、プラスに感じ取りました。

ですが、そこまで。
”心を繋ぎ合う純愛ストーリー”、といえば、そうなのかな?とは思えます。
賛同できるとか、誰かにお勧めできるという形では、残念ながらありません。

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まず。
マキナがアンドロイドだという設定が納得できません。
知っているAIの動きと違い、人間キャラクタの思考で描かれています。

学習を促すため、アンドロイドのマキナと一緒に生活することになった越野博は、
マキナに色々なことを教えていきます。
その過程は、どちらかといえば、物事を知らない人間の子に教える域を出ていないように思います。
接し方としては理解できるのですが、なおのこと、アンドロイドだと思い難い。

生活する中でのマキナの反応は。
衝動的行動、欲の提示、誤魔化す、驚く……。
これらはAIの苦手な分野です。しかしマキナはしてのけます。
無意識で行動していた、といった発言まであります。
糸くずがついていたことに気付かない下りもそうですが、センサーはどうなっているのか。
不測の事態に弱く働かなくなる感覚器であれば、十六年も安全に稼働できないように思います。

他にも気になる箇所は色々あり、AIやアンドロイドと設定しないほうが上手く仕上がったのではないでしょうか。

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リアリティの欠如。
多くの人が触れているであろう、今の現実で定められている、定説に沿っていない。
沿わなくてもいいのですが、ならば超える説得力が必要になると思うのです。
現実を超えて物語に引き込む力が。

現実とのズレがそのまま捨て置かれて、進める度に、え、なんで?と思ってしまう。
違和感が残り続けながら物語を進めてしまいました。

どうしてマキナは越野博と分かり合いたいと思ったのか。
その想いは何処から生まれたのか。
自我の萌芽もそう。自分はアンドロイドだからといった視点は、観念が植え付けられなければ生まれない。

自分はアンドロイドで、相手が人間。
AI思考の中では単なる事実の羅列であり、二者間で何かをすると決めたならば、
こうすればできるという答えを持つだけではないでしょうか。

一方で、越野博も研究者思考ではなさそう。
マキナは恋愛感情を抱いていないと思い込むヒロは、相手の感情の機微に疎かっただけ。
普通の恋愛を育む過程を見守る物語。
葛藤は見えますが、AIを相手にした恋愛模様ではないと思います。
研究者が、自らの思考を放棄してしまうほどの恋だ、という表現でもない。
また、天才だけど孤独という場面は、そういう過去がありましたと添えられるのみ。


マキナは、越野博の研究を引き継ぎ、ある道を見出す……というのが体験版の流れでしたが。
難しいのは。
自分と同一でなくても自分といえるのか?ということ。

AIやアンドロイド、世界を渡る物語に付きまとう命題だと思うのですが、
違う世界線の二人です。
A世界のマキナがB世界のヒロに伝え、B世界でマキナを生む。
別存在です。
B世界でサブリメーション(電脳化)したヒロやマキナは、同一体と呼べるのか?
さらにA世界でOASISに生まれたヒロは、モデリングデータです。

アンドロイドは機械製品であり、定期的なメンテナンスがなければ存続できません。
永遠を生きるものではないとする考え方も一般化されています。
各部位の交換も起こるため、同じ個体と呼ぶべきなのか定まってもいません。

これらを新たに定義する物語も面白そうでしたが。

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二人の恋愛は、のんびりなのに、どうも機微が足りないようにも思いました。
クオリア……と付けられたタイトルは、この箇所とも違うようです。

マキナのセンサーは鈍く、ヒロがおかしいことに気付くのはプロトのほう。
そこからヒロも誰かに恋をしているという発想に至る。思考が一足飛び。

誤魔化されたのか、もう分からないな。
見ている側からすると、そうやって放って置く程度の気持ちが、あなたの脳を揺さぶったものなのですか。
疑問に思ってしまいます。

皮膚感覚等を設定したのは、ヒロ自身では?
脳に該当する組織に快感だと信号を送る設定をしているのは、ヒロ自身ではないのですか。
だとしたら、そういう行為に至ると全く想定していないのはおかしいでしょう?
マキナに同期モードが備わったことで、触れたヒロの概念に寄った成長をしたと考えれば理解しますが、
それにヒロ自身が気付かないという流れも不思議です。

B世界のヒロも同じように描いてしまうのは間違っているとも思います。
あのお姉さんに会いたいと思って邁進していたのならば。性格に影響を与えた形跡も見られますし。
マキナと会いたくて作ったのに、マキナがおかしいのは連続稼働しているからだと考える。
そんな気持ちで創ったのでしょうか?何の期待もせず?

別段、ヒロが迷っていようが、思い切りが良く無かろうが、いいのです。
その考えに見ている側が少しでも寄り添えるのだったらいいのです。
でも、そういう風には描いていない。
となると、見ている側は、ヤキモキ、モヤモヤしかしないのです。
人に見せて少しでも憧れを集められるような物語になっているのか?
共感を生む物語が紡げているのか?

マキナは液体出力が無いはずなのに唾液描写があるとか。
途中から出るようにバージョンアップされたのを読み落としていたのなら申し訳ないですが。

ヒロが強情に出掛け事故に遭おうとするのも、必然を置かないので少し不思議になってしまっています。
世界線を超えても因果は同じように紡がれるのだとしたいのなら、そうしなければ。

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要素が多すぎたのかもしれません。
本来は一つずつ結論付け定義付けないといけない要素ばかりを用いてしまっている。

プレイヤーが見ている、知っている本当と違う。
違っていても、作品内定義が示されていれば良いが、それもない。
その場合、チューリングテストとは何かという定義が必要なのに、
この作品内世界ではこうなのですともいってくれない。
万丈の優位性とも示さない。
違和感があり続ける。物語に集中できない。

また、作品内で矛盾が発生している。
あれ、さっきこういってたのにと首を傾げる。

作品は、そこに注目して欲しいわけでは無いと思うのです。
でもそこに引っかかってしまう。
つまり、うまくフィクションしてくれていないのです。

繰り返しになりますが、いいのです、現実と違っていて。
こういうものだと、見ている側をうまく騙してくれたら。

で、本当に注目して欲しい箇所、
定命の人間であるヒロと、長命のアンドロイドであるマキナとが、
一緒にいることを為すために、どうするのかという二人の答え。
使い古された解だとしても、この選択しか無いと思わせてくれたら。
それこそが演出だし、物語の主題、描きたい部分と受け止められたのでは無いかと思います。
一番満たして欲しいところを満たしてくれなかった。
そこが良ければ……。酔わせて欲しかったなと思います。
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タイトルから想定した答えはありません。”QUALIA”はなかった。
「決断したことで感覚が得られる」といった一節が該当すると思うのですが、
それだと感覚を主とするより決断(decision)と表現したほうが正しいのかもしれません。
AIは元々、答えは出せるが過程は出せないといわれています。
答えしか出せないAIが、人間のように感覚意志を得る物語なのかと思っていましたが、
そこまでは到達しませんでした。


ビジュアルの良さは次作も継続されると思いますが、シナリオは完成度を上げてくれるでしょうか。
期待して良いのか、少し分からなくなっています。



ダウンロード販売もあります。


B世界へ繋いだものの、マキナはかばって大破。
悲しみで立ち上がれなくなった越野博を、カレンが慰め……。
もう一度マキナ産み出し取り戻そうとする越野博は、マキナとカレンどっちを選ぶ?

……というのもアリだったかなと妄想しました。
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だってこのビジュアルですよ?優しいですよ?カレンさん。