Triangleさんの「sin光臨天使エンシェル・レナFD CD6版」感想です。

2020年6月発売作品。

「sin光臨天使エンシェル・レナ~REINCARNATION~」のファンディスクです。
2018年に発売された作品で、今回の「Triangleコンプリートディスク6」に収録されました。


オムニバス形式で、5話収録。
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永き時を渡るマテリオネット、クーラの戦い、「血涙の仮面」。
戦いの果てに囚われてしまい、永遠に責められてしまう「虜囚姫エリカ」。
アリシアが学園に迷い込んだ敵を排除しようとする「闇臨天使アリシア」。
コミカルなシナリオが楽しめる「お料理対決! エリカVSクーラ!」では、
本編であまり日の目を見なかった、朋衛玲奈のクラスメイト、つかさと美樹がツッコミ役に回っています。
そして製品タイトルにもなっている 「Face the Destiny」では、
アザハイド帝国ディネロ皇子を超える敵、ルシフェル・レナが登場します。

1つずつ感想を。
ネタバレは多めにあります。

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「闇臨天使アリシア」
レナとエリカとコキュートスとアリシアとが一緒に過ごすようになった後のこと。
アリシアは自分のできることをしようと、街に繰り出し魔力反応を調べる。
イルージオを纏うアリシアなら、哨戒は得意で、並みの魔物であれば気付かぬうちに刈り取れる。
そんなアリシアが変わった敵と対峙して……という展開。

2017年発売のプレイ時点よりも、アリシア良いなと思うようになりました。
ちょっと舌っ足らずな雰囲気もありつつ、ほんのりハスキー。
責めより受けのほうが映える声。波野夏花さん、良い感じです。
身長はエリカのほうが高いようですが、スタイルボリュームはしっかりあるんですよね、アリシア。
それを黒スーツでタイトに覆っているという、すごいデザインですよね。

途中からアリシアの助けにエリカとコキュートスが登場するのですが、
そもそも遅れた理由が、レナの手を付けようが無い料理教育。
推測ですが、目玉焼きを教えるのに2パックは卵を使い潰したと見られます。
そしてアリシアのことでも張り合うエリカとコキュートス。
本編にはなかった表情差分も加わって、ファンディスクらしさが加わっています。
エリカは意外にも恥ずかしがり屋設定。それを煽るコキュートスもいいですね。
割と平和なシナリオで、とても良いと思います。

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「血涙の仮面」
クーラが、レナを救うための、162835回試行のひとつ。
ゼロポリスは、廃墟になる。
一度退けたアザハイド帝国は、それでも強大だった。
倒されたガイスト兵のデータを持ち帰り、改良を加えて戦線に投入する。
それを繰り返すことができる国力があることが、強大なのだ。
やがて伝説のエンシェリアンの力をも上回る兵器を幾多も産み出し、敗北させる。
そしてレナは、既に戦うことができなくなっていた。

光臨天使エンシェルレナが守りたかった街。
廃墟となった街並みを見ていれば、今回も望みに届かないことは分かる。
けれど見届けなければ。この世界の玲奈の最期を。
もしかしたらと、思うから……。

よく、登場人物の過去の物語が読みたいと思うことがあると思いますが、
このストーリーはまさにそれ。仮面を被りジェネラル・コキュートスとなる前の話。

滅びゆく世界の物語です。ここまでの退廃感は珍しいと思います。
レジスタンスの保護を受けている玲奈はボロボロで、エンシェリウムカードも欠けている。
既に変身ができない。
クーラが魔力供給を行うことで痛みは軽減されるけれど、本人が魔力を常時発しなければ、
魔力が回復しなければ身体も戻らない。
玲奈を守るためにレジスタンスの先頭に立ち、孤独な戦いを続けるクーラ。
が、唯一優位を保っていたマテリオネットすら、アザハイド帝国の新型は超えて来る……、

という流れで、本編でシーンが少なめだったクーラ(八ッ橋きなこさん)の補完でもありました。

本編で登場したアザハイド帝国侵略軍の中で最強と思われるジェネラルコ・キュートスことクーラ。
それを、どうやったらシーンに持ち込むことができるか?腐心されていると感じました。

最強のジェネラル・コキュートスに至る前までとして設定する。
アザハイド帝国の資源を莫大と考える。
反乱軍、戦う側は少数のままとして進める。
そして、先の見えぬ戦いに忍び寄る、人の心の弱さ。
これをうまくまとめているわけです。

ファンディスクらしい、IFであり、描かれずとも在ったことであり、
帝国が直接手を下すことなく物量で責めたとしたら、というもの。
こういうバックボーンがあるのなら、クーラが変わり果ててしまうのも仕方ないと思えますね。


「虜囚姫エリカ」では、エリカ姫がアザハイド帝国に囚われ、一身に責めを受け続ける場面が描かれます。
エリカを貶めるため、一からアリシアが教える。
場合によっては、隣で実践して。徹底的に教え込まれる、やらされる。
そのうちに、エリカ自身が反応してしまい……という。

負けない、折れないという気持ちで対抗しようとしますが、
連続的にあれこれされてしまい、エリカが受け入れていく様が見られるのも、何というか。
エリカが思考をスライドさせていってしまうのが見えて、
この堕ち方は本当に戻れないものだというのも読み取れるのですよね。
やっぱり改めてプレイすると発見がありますね。

何よりも、ビジュアル、エリカやアリシアの表情が良いのです。
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責められるエリカ、責めるアリシア。どちらの表情もいいですよね。

で、既に堕ちかけているところへ、適度に希望を与えて折る。
状況に流されていても、希望があればそれを手に戦えると思う心を、しっかり折る。
徹底的に落とすため、もうそんな希望が抱ける存在ではないのだと、自覚を促すための仕業。
責め方も巧みさがすごいですよね。


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「お料理対決! エリカVSクーラ!」
料理に関してはとにかく不器用に描かれていた玲奈。
教える役のクーラとエリカが戦うステージは、料理対決。
「朋衛家の食卓を預かるのはこのわたし……旧作でも、そしてこれからも、このクーラの役目なのです」
「朋衛家の家事全般をお世話するのは、わたくしに課せられたノブレス・オブリージュなのですわ!」
火花を散らす二人。
それを他所に、料理が出る前からどっちを選んで良いのか悩むアリシア。
主役なので一人で判定を司るけど食べると特殊な芸を晒すレナ。
レナへの求愛を隠しきれないディネロ皇子は早々に退場……と、
素材をこれでもかと使い倒してまで行われるメタネタ盛りだくさんで、安心して楽しめる一幕。

前回プレイした時も感じましたが、やっぱり面白いかったです。
こういうの、もう少し増えないでしょうか。
ここまで平和なシナリオは、コンプリートディスク6同梱作品の「幻聖神姫セイクリッドヴァース」にも無いし、
魔法戦士シリーズでも珍しいと思うのです。

何となくですが、声優さんも楽しんで演技しているのが分かりますよね。
他のシナリオよりも声のボリュームが大きかったり。

ほぼ全員どこかおかしいので、笑うことができます。
常識人枠ながらツッコミ力不足が顕著にでてしまう、つかさと美樹も良いですね。

エリカの制服姿とても良いと思うのです。
どうしてエリカの制服姿が活かされなかったのか、残念です。

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「Face the Destiny」
FDと捩って付けられたタイトルですが、今作品のメインシナリオ。
アザハイド帝国を撃退した玲奈たちが暮らすゼロポリスに、不意の来訪者が。
それは、玲奈に力を貸していたはずのローエングリン、スピニールの悪しき姿。
そして、それらを束ねていたのは、魔力だけでクーラを弾き飛ばす、超次元魔王ルシフェル・レナ。
クーラたちを助けようと対峙した玲奈に対し、「成れの果て、未来の姿」哄笑する……。

過去プレイした時には、ルシフェル・レナは、当然在るべき存在だと思っていました。
メタ、またはカウンター存在として肯定していたのです。
が、自らの過去を認められていないのだ、だから玲奈に敵意を向けるのだと。
その性質が強く感じられました。
レナに対して吐き捨てている言葉って、ルシフェル・レナの過去を認められないからですが、
レナだった時代を森羅万象において消し去りたいと、活動している存在なのだと強く思えたのです。
少し寂しい存在だと感じるようになりました。

1億以上の並行世界を渡り、エンシェルレナを抹消してきた。
これはもう、妄執です。

そんなルシフェル・レナでも、ラエリスフォームは得られなかった。
ここに意味を持たせても良かったと思います。

ドラマがあるのに、消えるときは一瞬。
でもこれ、将来的にバリエーションを持たせられる気もしますね。つまり続編です。
少なくともルシフェル・レナが最期にしてくれた助言は、可能性が見えます。
「お前は……お前の抱えた『誰かを救う』という狂気は、行き場をなくす……」
狂気を体現した存在、ルシフェル・レナをして、
レナの人を救う考えや意志、行動は、既に狂気そのものだと伝えました。
レナ自身は全くそう思っていないでしょう。レナの周囲だってそうです。
ルシフェル化したのは、途方もない絶望の末なのかもしれません。
何よりも、このことを断定してくれたのは、画面のこちら側にも納得感の高いものだったと思います。

この感じ方の違いも、改めてプレイしたから気付くこと。
面白いですよね。



ただ、2点。
グラフィックがどう考えても弱い。
シナリオの重さ、仕組みレベルでいえば、映画クラスのビジュアルとエフェクトを充てても問題ないのです。
耐えられる。そういったストーリーがある。
でも、つぶさに読まないと分からない。気付けない。
気付けないから、よく分からないけどやられてばっかり、そんなふうに思えてしまう。
すごくもったいないですよね。
ここが一番コストの掛かるところですが、もう少しがんばってほしい。

もう一つ。
Triangleさんっていつも音声が小さめなんですよね。
音質が良いほうではない。
声優さんの演技は良いと思うのですが、それを支えてくれていない。
これももったいないですよね。

これらは、「sin光臨天使エンシェル・レナ コンプリートディスク6」版の時にも感じたことです。
今作のプレイは2度目になるわけですが、じっくり改めて読まないと読み取れなかった。
グラフィックとサウンドとテキストで構成されているのだとしたら、
テキストにはそう書かれているのだから、残りの要素で支えてこそ物語でしょう。

長年継続していたからこそ、ブランドに成れているのだと思います。
他の要素のパワーアップを願いたいですね。


単体版のダウンロード販売もあります。