SAGAPLANETSさんの「かけぬけ★青春スパーキング!」体験版プレイしました。

SAGAPLANETSさんの新作は、”かけぬけ★青春学園アドベンチャー”、
「かけぬけ★青春スパーキング!」。

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「早くこの学園に来たくて、すぐに転入してきちゃいました!」

教壇に見知らぬ少女がおり、自己紹介をしている。
それが転校生だと述べるのを聞くと、遠野遊は広げた問題集に目を落とした。
数学の証明問題。解けるが、時間が掛かる。
それではダメなのだ。学年首位はキープしないとすぐ落ちる。落ちると……。

家庭の事情で妹と二人暮らし。
奨学金制度を使っているため、勉強は欠かさない。
その上で飲食店のアルバイトをして生計に当てている。

貧乏生活で妹にも苦労を掛けている。
あと1年半耐えれば、自分は卒業。自立できる。大人になれるのだ。

だから、自分には”せーしゅん”なんて。

隣の席の委員長、鹿島理々が右肩をつついて話を聞いてあげて欲しいと促すが、
生返事を返して問題を解き続ける。

一応、その挨拶は耳に入ってくる。
なんでも、自由な校風に惹かれて入ってきたこと。
青春を送るための部活を作ること。そして自分が部長をやり、副部長を誰かに指名したこと。

周囲がざわつきが、さすがに気になって顔を上げると、
壇上に立つ転校生、小日向響の右手の人差し指が、まっすぐ……、
「俺か?!」

体験版は、983MBでした。

企画は、SAGAPLANETSさん。
原案は、瀬尾順さん。
ディレクターは、kuroさん。

原画は、ほんたにかなえさん、有末つかささん、とらのすけさん、羽咲せいかさん。
SD原画は、ぴこぴこぐらむさん。
シナリオは、瀬尾順さん、砥石大樹さん、保住圭さん、にっし~さん、モーリーさんとなっています。

システムは吉里吉里Z。
三作前までは、指定のウィンドウサイズから選びましたが、
今作ではマウス操作で自在にウィンドウサイズを調整できるようになっています。

何より賞賛したいのは、組み込みフォントがすごく良いこと。
シーダやマルベリが搭載された頃、すごく読みやすいなと喜んでいましたが、
今作はさらに、こんなにも!
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フォントワークス様、本当にありがとうございます。
テキストを読ませたいのなら、読みやすいフォントで、というのは、
作品が良いビジュアルを持たせることと同義だと思うのですよね。
これだけで好感度をかなり上げてしまっています。

セーブファイル、際限なく増やせない仕様になりましたが、でも、安心。
代わりに、1,000ファイルを用意しています。
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そしてボイス登録鑑賞画面も。
良いですね。いいセリフ、良い音声がある自信の表れだと思います。

こういうキャラクタ重視作品って、セーブファイルは、ユーザにとってアルバムだと思うのです。
お気に入りの一言、動きを収めておきたい。だからたくさん欲しいんですよね。

さらに、バックログジャンプがとても速い。スッと移動できる。心地良いですね。
セーブ画面またはロード画面を開くと、前回開いたページを表示してくれる親切設計。
テキストウィンドウやセーブ画面などのUIがすっきりしていてオシャレ。
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タイトルに合わせ、★マークをテキスト送りに描いているところも良いデザインですよね。

キャラクタ重視の作品ですので、快を積んでいく指向なのでしょうね。

ビジュアルもさすがといった形。
前作までより、幼めのキャラクタデザインにしている理由が分かりませんが、
瞳の描き方を一段と手間を掛けているのが良く伝わりますね。
ヒロインキャラクタは目が命というのを良く分かっているのでしょう。
すごくきれいです。

その強力なビジュアルを、差分を細かく滑らかに切り替える演出で、アニメーションのような仕上がり。
見ていて楽しいです。
なので、オートモードでセリフをしっかり聴きながら画面を楽しむのが良いですね。

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さて。
背負わなければならない経済的な事情から、オーラが土気色なんていわれ、
”せーしゅん”できていない遠野遊が、”せーしゅん”できるようになるまでが、体験版では描かれました。

はっきりいいますと、あっさりしています。
画面の明るさをはじめとしたビジュアルの強さと、声優さんの配役とで、
かわいらしいを究めたキャラクタは創られていますが、
シナリオにおける山場は終わってしまったように思うのです。

もう1回プレイすると印象が変わるかなと思ったのですが、やっぱり解決していて、
あとはヒロインと仲良くするだけになりそう。
何事も、重たくは描かれていない。

繰り返しになりますが、ビジュアルの良さ、演出の良さ、声優さんの良さが際立ちます。
ヒロインとの出会いもインパクトを抑えて表現しており、
誰かにだけ重さを負わせ過ぎず、ヒロイン誰にでも入れ込むことができるタイプの作品といえそうです。
ユーザお好みで。


というのも。
まず、小日向響の登場は、インパクトを与えつつも残しすぎないように仕上げていますよね。

そして、ボランディア部、神社でのお手伝いから、遊の辛い過去に移行するのですが、
いきなりといった感じがします。
小日向響と遠野遊が気持ちをぶつけ合う。その前段をスパッと編集し切り捨てたような違和感。

これは、物語が大きく動く場面での違和感に繋がります。

青春かどうかは分からないけど、周囲の仲間たちと関わるのも悪くない。
そう感じ始めた遠野遊の前に、叔母こと和水が登場し、カード勝負をします。
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和水は学園長となって現れ、急激な改革を掲げ、学園の自由を狭めようとします。
学園の収益改善ではなく、遠野遊そのものが目的。
岬家という資産家一族に縁を持つ遠野遊に、遺言通りに莫大な遺産を継がせようとするのです。

遠野遊は生活支援すら拒否、矜持を掛けて、最大の得意であるポーカーで。
しかし、和水は遠野遊の手品の師匠、”魔女”だったのです。

ところがその場面で、それまで遠野遊を振り回してきた小日向響が、急に大人しくなってしまうのです。

ずっと考えていたのかも知れませんが、切りの悪い、転入の時期でも無い時に現れたことから、
突然転校を行ったのは間違いない。
そこは、小日向響らしいと思うのです。
それくらい思い切りのあるキャラクタが、不意に勝負を見守るだけになってしまう。
遠野遊を助ける、強い想いで行動し続けたキャラクタであれば、
食ってかかるくらいのことはするのではないかなと。

もしかしたら、それくらい”魔女”の力は強かったということなのかもしれませんが、
それにしては、小日向響が”魔女”に一切怯えていない。
指向性の圧力を出せるとしても、小日向響って周囲に良く気付くタイプ。
特に、遠野遊に関わることに対しては。ならその可能性も無い。

これは、前述の、神社でのお手伝いから突然過去の回想へ移行したことと同じで、
場を作るために優先したのかなと思えます。
物語を進めるための行動(この場合は沈黙)としか思えないのです。

でも。
カードを配るディーラー役にされ、罠に使われた。
勝負を制止しなかった、和水に反発しなかった小日向響と、
対峙していた和水に対しても、ユーザは悪感情を抱かないのではないでしょうか。

ここに、SAGAPLANETSさんは気を遣ったのだと思われます。

要するに、今回のディレクションは、
とにかくどの登場人物も悪く思わせないようにすることなのだと。
マイナスの感情を残させない。

ですので、恐らくですが、小日向響が和水に対して、
「和水さんだけは、いい人だって信じてました……」というのは正しい見方。
妹の遠野律が「昔は、もっと優しかったのに……」というのも、正しい。
その優しさは恐らく変わっていないから。

これは本当に憶測ですが。

幼い頃、小日向響が去った後。
親や親戚とも色々あって、遠野遊が沈みきって生きる気力を無くしていた。
その解決に一計を案じた。
生きる術として手技や心理を教え、さらに生きるために、怒りや敵意を持たせることを目的として、辛く当たったのではないかと。
現実に生きている相手がその対象ならば、怒りは継続するから。
実際、遠野遊は、和水を意識しないようにと、意識して生きてきたので。

小切手を渡したのは、挑発でもあるけれど、気遣った結果でもあると思います。
「子供は大人の言うことには従いなさい」
ある意味、本心なのだと思います。思い遣りの上での。
素直に庇護を受けろといっているのです。今はそうした支援もできるから。

和水は行動を遺産目的に見せていましたが、奪うつもりは無いのでしょう。
回りくどすぎるし、本当に遺産目的なら、カードで負けても破棄の約束を守る必要もなかったのですから。

子供もおらず、上手に愛情を表現できなかったか、素直に愛情を出す切っ掛けを無くしたか。
あるいは、その時の和水では、守り切れなかったか。

数少ないできることで、子供に喜んでもらえること、だったのでしょう。
「不思議なものを、今からあなたに見せてあげるわ――」
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本当に喜んでくれて、師匠と弟子のようになって、
和水の望んだ関係ではなかったかもしれないけど、それでも遠野遊が喜んでくれるのが嬉しかった。
そんなカタチじゃ無いかなと思います。

瀬尾順さんが原案を出すとしたら、これくらいはやるはずなのです。
ノベル「君からの距離、君までの距離」をはじめ、他ブランド作品なども振り返ると。

ただ、SAGAPLANETSさんのブランドカラーから、また今作の志向では、
それらの作品のように、感動を寄せることを求めなかったのだと思います。
(繰り返しになりますが、憶測です)


そのためか、システム構成で受けた感動ほど、ストーリー展開に感動は受けなかったのですが、
そういうタイプの作品ではなく、ヒロインキャラクタを愛でる作品といえそうです。

”過去も未来も気にしない。”
目の前にしたヒロインのかわいらしさを楽しむと良いのだと。

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ストーリーを描くヒロインという意味で気になるとすれば、聖橘花(左利ぴんくさん)の存在。
この聖橘花は、去年の夏に不意に現れて、不思議なことを遠野遊に言う。
下級生らしいのですが、クラスも分からず連絡先も知らない。
言葉から滲む知識は深く、和水が遠野遊にカードでわざと負けたことも見抜く目を持つ。
特徴は左手中指のリボンを象った指輪。そしてお金持ちらしいこと。

和水は、聖橘花の登場に驚いてすら居ました。
その驚きから、ここに居るのが不思議な存在といえるのかも知れません。

ここが腕の見せ所だと思います。
聖橘花が去るときに置く、青い折り鶴に書き残された青春カウント。
頭の何処かに引っかかっても、あえて無視してきた後輩との未来は、どのように描かれるでしょうか。


細かい部分では。
とにかく展開を早めようとしすぎていると感じます。
最近の流行は、開始したらすぐに何かが始まること。
そのほうが視聴者側を掴みやすいのかもしれません。
けれども、ヒロイン数の多さもあって、必然的に味が薄まるヒロインが出て来ると思うのですよね。
それぞれのキャラクタは立っているのですが。

そして初恋が妹になる、かもしれない遠野律(上原あおいさん)。
はっきり義理の妹ともいわず、少しぼかしています。
公式サイトを確認しているか、注視していないと、実の妹だと誤解しているユーザも多いのでは。
小日向響も分かっていなかったようですよね。
これも、あえてのディレクションなのでしょうか。

公式サイトではBGMスタッフが空欄ですが、
一部、『強きモノども』『Alea iacta est!』のような曲運びにしているのは意図的なのでしょうか。

すごく気になるのは、瀬尾順さんは”游”と書いて、本編は”遊”と表記されているんですよね。

この時期だからか、音声収録が少し気になるところがありますね。
SAGAPLANETSさんにしては珍しいです。

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なお、広島県が舞台モチーフとして背景に描かれているようですね。
鳥居はそれこそ厳島神社大鳥居。
自転車で走っていくのは、尾道。
理々がガチャガチャをしている商店街や、お祭り準備に訪れた神社や高台もそうですね。
丸きりそのままではありません。
厳島神社大鳥居はそこまで水没しませんし、商店街の店並びもかなり入れ替えたりしています。
配慮の結果なのでしょう。でも、よく現地を分かった上での巧みな作画だと思います。


このビジュアルクオリティと、声優さんの配役。
なかなかありませんから。

8月発売作品として、予約ランキング独走ですね。

2020年8月28日(金)発売予定です。