きゃべつそふとさんの「さくらの雲*スカアレットの恋」体験版プレイしました。

きゃべつそふとさんの新作は「さくらの雲*スカアレットの恋」。

2020年の東京。
桜の木に腰を下ろした風見司は、爽やかな春の日差しに気を良くして寝転び、
梶井基次郎の詩集を開いた。
題名から想像されるような、お綺麗な内容ではない。
……そう感じた司の視界全体が歪み始めた。
ちらついたディスプレイのような視覚的ノイズに見舞われる。
頭を振り払っても治らない。そのまま、何かに引きずり込まれるかのように混濁していき――。

「――桜の木の下には死体が埋まっている」
光に眩んだ目をこすり、上体を起こそうとすると、すぐ隣から聞き慣れない澄んだ女性の声が……。
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体験版は、911MBでした。
インストールが必要です。

原画は、梱枝りこさん、よねぞうさん。
SD原画をしらたまさん。
シナリオは冬茜トムさんとなっています。

システムはEthornell。前作と大きく変わるところはありません。
個人的にプレイしにくいシステムだと思っていますが、最低限の機能はあります。
少なくとも、セーブファイルだけは倍の数を設定して欲しいところです。

場面により、AUTOモードでも進行が止まります。
当時の文学を表示している場面などがそれです。

止めるくらいであるから、何か重要な要素なのかもしれませんが、
今のところ不明です。

さて、きゃべつそふとさんの2018年11月発売作品「アメイジング・グレイス」と同様に、
ミステリ作品となるようです。

100年前の大正時代日本へタイムスリップしてしまった風見司は、
出会った探偵の保護を受けつつ、未来へ戻る方法を探します。
身分は、探偵の助手。
洋装も借り受け、助手としての身分を得ます。

この時代の貧富の差は激しく、作中でも登場しますが、和田邦坊の風刺に描かれた成金のように振る舞う者や、
数が少なく高騰により品不足となった米を求める騒動が起きたりすることも。

チェリイ探偵事務所は、食事に困る側。
そのくせ、無報酬で依頼を受けたり、取りこぼしたり。
コメディ的な面を持ちながら、帝都で起きる怪異に関わっていくようです。
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体験版は導入を描きながら、少しずつ伏線を敷いているところであるため、
まだ判断は早いと思うのですが、うまく入り込めませんでした。

理由は2つ。
考証。史実と違う箇所が多く、それがミステリとしてのスパイスなのか判断がつかず、
そちらに気を取られてしまったこと。
物語の進行のための行動が見えてしまって、少し冷めてしまったこと。

まず、考証の部分。
過去の日本という、中途半端に知っている事柄を取り扱っているため、
その知識と違うところが登場すると、どうにも気を取られやすいようです。
明治、大正時代。福沢諭吉が記した「西洋事情」を省みるまでもなく、
文明開化の流れにあったことは、学校教育を受けているユーザが多いはずです。
ですので、何かこう、上手く惹き付けて欲しいと思います。

事実と違うところがあって、構わないのです。
けれど、プレイヤーを上手く騙して乗せて惹き付けて欲しい。

”100年の時を超えるミステリイADV”と伝えてくれているところが、また良くないかもしれませんね。
これは伏線ではないかと、逐一気を取られてしまいました。

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もう一つは、特に風見司に見られる行動です。
例えば、風見司は、舞台となる帝都東京からすると未来人。
その、未来から来たことを、関わった人に対し気軽に口にしますが、
阿寒湖のまりもについて、たまたま知っていたことにするのです。

現代と違う知識を持っている人であることを隠す。
隠したいのか明かしたいのかどっちなのでしょう。
なので、先述の時代背景設定あたりも、もしかしたら煮詰めていないのかもしれません。

また、自分の進退に関わることでも具体的な主張をしない。理解して欲しい人にほど。
今は情報共有しないでおく、物語を進めるための行動なのでしょうけれど、
さすがに違和感が強いです。
加藤の力は本物。少なくともそれだけでも伝えておくだけで、所長または司の窮地は軽減される可能性が高いです。
少なくとも、所長の信を得られた。
なので、こちらも何か補強が欲しいところです。

ワトソン的な存在に主役を任せるのは、役割過多で難しいのかと感じてしまいました。

ただ、あくまでもこれは第1章。
ヒロインキャラクタは登場したものの、まだ出揃っていません。
公式サイトを確認すると、怪盗まで登場するようです。
その頃には物語にぐっと惹きつけてくれているだろうと期待しています。


きゃべつそふとさん、相変わらず背景が美しいです。
サロンはぐっと雰囲気がありますし、チェリイ探偵事務所内も所長が調度品にこだわったのだろうなと感じます。
日本橋、銀座、浅草……街並みも素敵です。つい隅まで見てしまいますね。

そうした背景と、かなり気合いが入った画面演出。
鮮やかで目を惹きます。
風のSEなども良いと思います。

男性キャラクタにも声の良い声優さんを起用するところも、前作から継続されています。
個人的には色気のある声を出す真霧影虎(真野大さん)の登場がもう少しあると良いなと思います。
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北海道出身の西洋画家。日頃は日比谷公園で絵を描いている様子。
風見司が異なる時間から訪れた特殊な存在であることを見抜く。
絵画制作のための刺激、インスピレーションを欲しがり、司たちに要求します。
寂れた雰囲気の立ち絵表情と、この声がすごくハマっていて、雰囲気があります。
悪人ではなさそう、なのですが、狂気に走っても不思議ではない懐の深さがあるというか。

真霧影虎だけに限りませんが、どのキャラクタがどう動くのか、楽しみですよね。

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謎のひとつとして、アララギ(野々宮小鞠さん)。
軍服姿で宙に浮き、司の時空遡行を戻す手段を知っているようですが、それを伝えることはありません。
その登場は、煤を纏ったもの。
司を助手ではなく探偵と呼び、歪みを正せと命じてきます。
このあたり、「アメイジング・グレイス」のシスターリリィというよりは、
QUINCE SOFT作品になりますが、「もののあはれは彩の頃」のクナドのような印象を持ちました。

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しかし、そのアララギよりも気になるのは、所長(猫田みけさん)です。
帝都東京で探偵事務所を構える、イギリス人。
シャーロキアンなのか、鹿撃ち帽子を被り、「初歩だよ」と推理を披露し始めます。

小食。米よりパン。紅茶を伝手で仕入れてもらっている。
体つきが細い、ながらもバリツを習得し大人を投げ飛ばす。
お金に目が無いのは借金のためだと思いますが、解消のために達者な口を使います。
笑うととてもかわいらしいのですが、ムッとしている表情差分がさらにかわいい。

何故、イギリスから訪れて一人で探偵をしているのか。
日本語がすごく堪能なようですし。
イギリス人でなくアメリカ人の可能性もありますよね。
名前が明かされていないメインキャラクタ、なのですよね。これが一番大きい謎だと思います。

妙に魅力のあるキャラクタで、つい色々考えてしまいます。
猫田みけさんの声の魅力で保っている部分もあります。


ただ、一点だけ。
所長の「最も」の音声がおかしいです。決め処なのにもったいない。
遠子さんの「蓮さまも」も。大団円なのに。
やや、遠子お嬢様の声は割れ気味ですね。



体験版第二弾も製作されるとのことですので、そちらを楽しみにしましょう。
なお、相変わらず大ボリュームであることが予告されています。


2020年9月25日(金)発売予定です。

ダウンロード販売もあります。


体験版第二弾ことフルバージョンがリリースされました。
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