Cabbitさんの「鍵を隠したカゴのトリ」体験版プレイしました。
Cabbit 第四弾!「鍵を隠したカゴのトリ」応援中!

Cabbitさんの新作は、”ミステリーADV”、「鍵を隠したカゴのトリ」。

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幼馴染みで、恩人。
孔雀石透子が、殺人事件の被疑者として捕まった。

川蝉陽太は、事件の情報を知りたかったが、一介の学生にできることはない。
祖母の見舞いをするとか、いつも通りにしか過ごせない。

そして孔雀石透子が学園に来なくなってから、数日後。

「あら、陽太。久しぶりね」
ある館の前で、車から降りる透子と再会した。
そこは、百年以上前に建てられた洋館。観光地として開放されていたが、
観光客が減少し、現在は閉鎖されていたはずの館だった。

陽太には、いつもの透子に思えた。
が、透子は続けて変なことを言い出した。
「私、今日からここで暮らすの」と――。

体験版は、929MBでした。

原画は、ゆき恵さん、さえき北都さん。
SD原画は、ひなた睦月さん。
シナリオは、御厨みくりさんです。

システムはExHIBITです。
AUTOモードが稼働中かどうか分からないのが気になります。
セーブファイル数も多くありません。
ABORTボタンの説明文はゲームを終了する、となっていますが、
タイトルへ戻る機能になっています。
反応が重たく、若干使いづらい印象があります。


さて。
Cabbitさんはミステリー色のある作品リリースを続けており、
今作もジャンルは”ミステリーADV”です。

体験版プレイ当初は、すごくがっかりしたのですが、
プレイ後に改めて考えると、面白い作品になっている可能性も感じられます。

まず、ミステリーと捉えない方が良さそうです。
代わりに、ゆき恵さん、さえき北都さんが描くかわいらしいキャラクタが魅力を持ちます。

まず気になったのは、ここ。
たいてい、キャラクタのかわいらしさを前に、ミステリパートを後に置くことになります。
ところが、こういう形式の作品の問題点は、ミステリー寄りになると、
せっかく提示したキャラクタのかわいらしさを、キャラクタ自身が否定していってしまう。
構造上の問題とはいえ、少し引っかかりますね。

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「犯人は私よ。だけど、証拠不十分で釈放されたの。ラッキーだわ」
メインヒロインとなる孔雀石透子(みよりあつむさん)は、起きた殺人事件の被疑者。

犯行自供をしており、証拠不十分で釈放されている。
しかし、長らくこの街にあった観光施設に幽閉。

それから始まる共同生活ですが、孔雀石透子がどんなキャラクタなのか提示されます。
両親が他界し、その遺産で施設に出資。共同経営者となる。
その施設とは関係性が良く、しかし今回の事件があったため、
被害が及ばないように距離を取ってもらっている。

人付き合いが苦手なわけでは無いが、煩わしいので控えているといった形。
コミュニケーションが下手なわけではありません。
対人関係で威圧的に出ることもありますが、それは遺産相続などで人との争いを生き抜いた態度なのかもしれません。
機械操作に弱く携帯を持っていないところから、スマートフォンを覚え、
コミュニケーションアプリを楽しむようになっていく。
また、強気の態度をしていても、食べ物につられてガードが甘くなってしまうなど、
隙が設定されているあたり、キャラクタそのものを楽しめるようになっています。
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川蝉陽太たちが不在だと思い、ロボット掃除機を愛でているところとか。
ひなた睦月さんのSDかわいらしいですよね。

川蝉陽太たちから見れば、孔雀石透子が犯人であるわけがないと思える。
それまでの孔雀石透子からすれば、それは間違いは無いのでしょう。

委員長の燕沢夜(雪村とあさん)は、実は被害者が母親の恋人だったが、
その被害者の素行は悪く、母親も燕沢夜に辛く当たっていた。

青葉梟みおん(風鈴みすずさん)は、いじめから救ってくれた孔雀石透子なら、
そんなことをしないはずだと思っているし、
何より、事件のあった日、激しく動揺している孔雀石透子を覚えている。
それは、見てはいけない何かに遭ったかのようで……。
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となると、孔雀石透子は犯人ではないが、誰かをかばっている。


面白くなりそうなポイントとして、ルートが分岐すること。
それによって、キャラクタの性質が変わると、面白い物語になりそうです。

例えば、犯人が変わるとか。
瑞葉伊鶴(水野七海さん)が伝えてきた、「川蝉陽太が犯人ではないのか」という問い掛け。
これも一つの解として、物語が展開されていったら面白いですね。
あとは、川蝉陽太の祖母とか。
このあたりは、周囲の人たちが語る孔雀石透子の人物像とも重なります。
かばっているとするのなら、知っている誰かであるのは間違いなさそうですし。

そして、瑞葉伊鶴の「真犯人に成り代わる」。

つまり、アプローチにこそ、面白味を出す余地がある。
ミステリーと考えず、サスペンスであるとか、キャラクタドラマとしての可能性です。
事件が、ではなく、それぞれのキャラクタの事情がミステリーなのかもしれませんから。
そう考えると、ミステリーに対する新鮮なアプローチのようにも思えます。
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瑞葉伊鶴の場合、方向性としては、成り代わって館で川蝉陽太と暮らすのか。
あるいは果たせずに大きな街に出て過ごすのか。
真相には辿り着かないかもしれませんが、館と孔雀石透子のことを少しの後悔と抱き生きていくのかも、しれません。


とはいえ、構成が煮詰められていないというか、甘さも感じます。

何よりもテキストです。
読んでいて、ちぐはぐに感じます。
何故その発言になるのか?セリフになってないものが多いです。
書き手は通じているのだと思います。
関係性によって、セリフは短く省略をすることもあるのも分かります。
でも、セリフなのですよね。
パッといわれてキャラクタ同士通じ合う必要が、最低限ある。
それでいて、セリフを発するキャラクタたちは、舞台演者でもあるのです。
観客に通じる台詞回しでなければいけない。
そうなっていないのです。

当初がっかりしたのはここで、この調子でミステリーといわれても、
謎の解と仕掛けの解とを提示されたとして、納得に届かないのでは無いかと思ったのです。
決めるセリフがきちんとそうなっているのかと。

そして、主人公の川蝉陽太にキレがないタイプです。
ミステリーにおいて大事な場面、答えを導き出す……のでは無く、
答えに遭遇する方向性でしか、解の提示場面を形成できないのではないか。
ルートがあるとして、それが4回繰り返されることもあるとしたら、
読み進めるテンションが下がってしまいそう。

さらに気になったのは、グラフィック。
後発作品なのに、ブランド過去作、「翠の海」「箱庭ロジック」や「キミへ贈る、ソラの花」を上回っている気がしません。

当初公表された発売日を11カ月延期するくらいですから、製品化も危うかったのかもしれませんが、
乗り越えて発売となっているわけです。

気になるところはあっても、それらも乗り越えて、予想通りの作品になっていることを期待します。


2020年9月25日(金)発売予定です。

ダウンロード販売もあります。


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