PULLTOPさんの「空と海が、ふれあう彼方」感想です。

2018年3月発売作品。

PULLTOPさんの「空と海が、ふれあう彼方」は、一般作です。
東京から南に1000kmの南の島「小笠原諸島」を舞台に、
都会の少年、家出のハーフの少女、地元の娘という、
それぞれ住む世界が違う彼らが出会い、
恋と友情を深め成長していくひと夏の青春グラフィティ。

それでは、感想です。
ネタバレ、少しあります。



主人公、水野洋輝は、夏休みになり、4年ぶりの小笠原を訪れます。
4年ぶりなのは何か都合があったようですがはっきりしません。
代わりに、その4年間で身につけた料理スキルは、
料理人となり、祖母の店、カフェマチコを継ごうと思うほど。
実際、作中で何度も料理を作っていますが、周囲を納得させたりひがませたりするほどの腕に。
過去、小笠原ちさとスクーバダイビングをしていた時、
アクシデントを起こし、はぐれイルカのQ太郎に助けられる。

ただ、公式サイトのキャラクター紹介、
「面白そうなことに目がないのさ。爺さん譲りでね」
というのは、洋輝に当てはまっているようには見えません。


洋輝は帰路の船上で出会うのが、白瀬恵海莉(鬼頭明里さん)。
自暴自棄になり小笠原行きの船に乗り込んだかのように見え、
制服のままだし、スマートフォンを海に放り投げるし、
よほどの事情があるのかと思いますよね。
それは若い故の衝動のようなものを含みつつ、
小笠原の幽霊船に眠る宝物を探しに来た。
それが、今のエミリィに必要なものだから。


下船した洋輝を迎えに来たのが、小笠原ちさ(高田憂希さん)。
島のダイビングショップの娘で、泳ぎがとにかく得意。
ダイビング器材がなくても深く長く潜ることができ、
イルカのQ太郎と意思疎通ができ、イルカ少女としてテレビに映ったこともある。
洋輝とは幼馴染みで、何かとエミリィを優遇しようとする洋輝にムッとしてみせたりも。

……という、2人のヒロインと主人公を中心に物語が進んでいきます。




簡単にいえば。
色んなところに気を遣いすぎて魅力を引き出せなかった作品、じゃないかなと。

予算と、声優さんと。
主には、ここでしょうか。

まず、予算。
一般作として、初の全年齢向け作品として。
色々なことを考えられたのだとは思いますが、
かけるべきは声優さんではなかったように思うんですよね。

シナリオでありグラフィックであり。
これまでのPULLTOPさんの手法をほとんど捨てているような気がします。

縛りも何かあったんじゃないか。そんなことまで考えてしまいます。

結果。
一つのイベントに対して、余韻も何もないのですよね。
イベントを消化するだけになってしまっている。
でも小笠原の良さを紹介しないと、この地点でイベントを起こさないと、
……という焦りまで感じられてしまいそうな流れです。錯覚なのですが。

イベントひとつひとつのアイディアは良いと思うんです。
でも、ふくらみが全くない。だからアイディアの煌めきはあっても、
それはあっという間の点滅で。


日頃のフルプライスでは冒険が過ぎる。一般作だし。
もし、そんな思考があったのだとしたら。
思い切り良く予算をかけるべきだったと思うんですよね。


システム部分の不満。
テキストウィンドウの文字がとても小さい。
これもどうしたんでしょうね?非常に読みにくい。
また、音声の左右振り分けですが、バイノーラルというよりも、
ちょっと聞こえにくい印象のほうが強いですね。
が、そろそろPULLTOPさんはシステムもう少し使いやすくなって欲しいです。
ウィンドウサイズの変更、できないものでしょうか?

音楽はすごく良かったように思います。
OP曲もすごく青春追いかけてる!という印象でした。
グラフィック部分、たとえば田口まことさんのSD原画は相変わらず良いですし、
八島タカヒロさんのちさデザインはなんかもう魅力的です。
背景であるとか、場所設定も非常に良かったです。
4コマムービー、楽しいですよね。
が、この良いところって、日頃のPULLTOP作品の基本装備でもあるんですよね。


これまでのPULLTOPさんの手法、良いところ。
ヒロインに寄り添って、気持ちにフォーカスする描写。
そこを削ってしまうと……。

ちょっと場面先行で、やや展開がぶつ切りに見えます。
場所、土地柄を紹介するためなのかな、とか。
エミリィが過去に見たサメの映画が元で、海が嫌い、怖いという思いを、
小笠原の本当を見せつけることで解消しようとするところは良いと思うんですが。

キャラクタの唐突なテンションアップダウン。唐突な行動。
なんとなくそういうのが多いなぁと。
なので、キャラクタの感情の折り合いの付け方についていけなくなってしまっている。

また、衝突から解消も含めて、ベルトコンベア式にイベントが流れてくるような、
その流れを見ている側の気持ちまでは連れて行ってくれないで、
イベントの記号化になってしまう。

他の作品だったらもっと引っ張るよな。という部分が、ものすごくあっさりです。
だから唐突に、選択肢ひとつでエミリィを応援しだすようにしか見えないちさ。
ちさに譲るエミリィ。違和感です。

そもそも、いつ好きになったのかわかりにくいです。
うーん。

細かいところでは、祖母が洋輝に辛辣にあたる理由が分かりません。


それと。声優さん。
慣れていないというよりも、なんとなく合っていないような気もします。
魅力的なキャラクタには、仕上げてくれなかったように思えます。


恋愛の部分、萌えの部分。
色々と削りすぎだと思います。残念ですけれど。