シルキーズプラスさんの「缶詰少女ノ終末世界」体験版プレイしました。

”終末に立ち向かうプレッパーズADV”、「缶詰少女ノ終末世界」

七年前の台風はすごかった。
当時の小海雅孝は、暴風雨に身体を曝したくなり、発作的に家を飛び出した。
危ないのは分かっていた。
でも、木々が強風に叩かれて、葉っぱだけじゃなく、
小枝までもが次々と千切れて飛んでいくことに、感動を覚えていた。
以来、切り裂くような雷鳴を聞くと、ニヤニヤしてしまう。
豪雨の到来を感じ取って雨宿りを選び、その場所にコンビニを指定した。
店内放送が流れているのが微かに聞こえるが、
その向こうで鳴っている豪雨の、一万人規模の人々が足踏みしているような音にかき消されている。
紙パックのジュースとコンビニオリジナルブランドのポテチをイートインコーナーに持ち込み、
窓の外の景色を堪能する。
親指の先くらいもある大粒の雨がアスファルトにぶち当たって弾ける、灰色の光景。
県道が目の前にあるはずだが、全く見えない。
ほれぼれする怒濤の大雨だ。
……と、雅孝の隣でカタン、と音がした。
やけに澄んだ音は、缶詰が立てたようだった。
大漁旗っぽい絵が描かれた、鯖の味噌煮の缶詰。国際水産と書かれている。
それを、イートインテーブルに乗せた音だ。
いつの間にか、髪の長い女の子が雅孝の隣に座っていた。
コンビニで鯖の味噌煮の缶詰を買ったのだろうか。
女の子ってコンビニで鯖の味噌煮の缶詰を買うのだろうか。
見たことはないが、それは雅孝が見たことがないだけで日本中で日常的に行われていることなのだろう。
家庭によっては頼まれることも頻繁にあるのだろう。
おつかいに違いない。
しかし雅孝の予想は外れ、女の子は片手で缶詰の腹を支え持ち、プルに指を掛ける。
……軽快な金属音がした。
えっ? 食うの? ここで? 正気か?
コンビニのイートインで、鯖の味噌煮缶詰を食べるの?――

体験版は、1.28GBでした。
原画は、イチリさん。
シナリオは、渡辺僚一さんです。
いやー、これはすごい。
まさか、こういう形で終末物語が再び読めるとは思いませんでした。
他ブランドとなりますが、「はるまで、くるる。」のように怪しさを前面に押し出してはいない。
「なつくもゆるる」のように生死に直面させてはいない。
「あきゆめくくる」のように超常が背面にぴったりくっついてない。(全てすみっこソフトさん)
それでも。
中原中也の「曇天」を引用して始まるこの物語は、
季節こそ違うものの、「ふゆくる」はないかと感じるほど。
今作でも、形こそ見えないものの、間違いなく終末が訪れるのだろうなあと。
自らをプレッパーズだと名乗る更紗サリ。
プレッパーズとは、様々な条件下で起こる世界の終わりに備える人のこと。
世界を愛したい、世界を向き合いたい。
極限状況下ならそれが分かるのではないか。
そんな思いを聞いた小海雅孝は、使わなければならない部室問題と関連づけ、
プレッパーズ部を創ることを提案。
人数も集まり、活動していくことになります。
終末を愛することを目標とした部活は、サバイバル体験や山登り訓練などを行います。
地図の読み方を覚え、それを実際に使う。
この、藪を抜ける、火を起こすだけでここまで面白くなる展開。すごいですよね。
あと棒ラーメンは確かに美味しい。
外で食べるともっと美味しい。

その間に。
彼らが住む西川市には、警報が鳴る。
国籍不明の潜水艦の到来。これは1カ月に一度は来る。
震度5の地震が来る。これは地震大国日本ならよく来る。
話によれば、どこかの国からミサイルが発射されるとか、核兵器が放たれるという話もあるとか。
それでもまだ、終末を告げる喇叭は鳴っていません。
辻花咲は健全。
前向きにサバイバルをしようと考える。
サバイバルとは、生き抜いて再び社会生活を取り戻すことだと知っている。
そのための知識を、アウトドア―ショップの娘として備えている。
八乙女華江は、日頃こそ飄々として口車に巻き込もうとするが、
警報が鳴れば怯えるし、更紗には終末にばかり囚われないでほしいと考える。
(その生業は別として)
しかし。
その警報が鳴る度に、主人公の小海雅孝はニヤニヤしてしまいます。
初恋は、史上最強と報道された台風。
しかし最大の願望、”世界の果てまでふっ飛ばして、滅茶苦茶にしてくれたら”というものは為されず。
それでも毎度、警報が鳴ると期待から顔がにやけてしまう。
破滅願望があるということかもしれません。

そして、ツバキ。
九生竜子の末裔、暗殺を生業とするヤズの一族。一族の中でも危険視されており、管理官烏森亜実花は、ツバキの衝動のガス抜きをしている。
そのツバキが、この西川市に殺せない存在が居ると感じて、夜歩きをする。
雅孝の対角にいる主人公の一人と考えても良さそうです。
体験版では、大きな謎を残して終わりました。
ものすごく引きが強い展開でした。
すごいボリュームで惹き込みながら、それでもキャラクタたちのことが少し分かった程度。
だって例えば、烏森亜実花と小海雅孝は出会っていません。
最後の最後まで妖しい存在として君臨しそうで、でもタイトル画面に居る……。
これはどういうことで、どういう展開があるのでしょうか。
そして、小海雅孝もそうです。
選択をするはずです。
色々な体験から、自分の成長というか、人間の可能性を知っていきますが、
願望と向き合う必要があるはず。
今は主役としての役どころがないことも含めて、どういう展開になるのでしょう。
ツバキと雅孝は出会うのか。
今のところ、物語は二本走っているように見えますが、交差するのでしょうか。
少なくとも、ツバキは違和感を追い求めて、八乙女華江に接触します。
そして、それを仕向けたのは間違いなく烏森亜実花なのです。

イチリさんの原画はシルキーズプラスさんの彩色と合うのかなと思っていましたが、
これも良いですね。
光源や透けを大事にされているので、より深みが出ています。
また、音楽です。
強制的にのんびりとした雰囲気をもたらすもの、緊張感をもたらすものがあって、
強力に場を支配しています。
今作から、システムに2つの機能が追加されました。
バックログジャンプ。これは素晴らしいです。
それと、音声の同時再生。
細かいところでは、テキストウィンドウのボタンが缶詰シルエットになっていたりします。
しかし、動作環境。
XPでもVistaでも確認されている、のでしょうか。
あと、キャストが少し違うかなという印象です。
というのも、イチリさんの原画はとびきりかわいいんですよね。
なので、あてる声は、かわいい以外にも要素があったほうが良いと思うんですよね。
そうでないと、真剣に語る場面が弱くなると思うのです。何にしても、気になるところが多すぎて、
セーブファイル100は体験版後半で消費してしまいました。
本当にすごい作品です。
ですので、できれば製品版は最低でも今の倍はセーブ余裕が欲しいところです。この、意図したものなのか、オープニング曲はとてもかわいらしく、
キャラクタデザインもかわいらしい。
でも、内容はハードなサバイバルになりそう。
そんな予感がすごいですね。
この組み合わせはそうそうないので、楽しみです。
それらの進行が、非常に小粋なトークとテキストで形成されている、というのがまた。
2019年4月26日(金)発売予定です。
ダウンロード販売もあります。
池袋からほど近い設定の西川市は、立川のようですが、
ライブが行われた日野市とも近いですし、何か出来たら面白そうですね。
