LiLiM DARKNESSさんの「White Blue」感想です。
White Blue

2019年6月発売作品。

LiLiM DARKNESSさんの「White Blue」は、
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親のいいなりになって勉強漬けで名門大学に入学した清瀬京太は、交通事故に遭い酷い怪我を負う。
長期入院となった病院は、同じ母校の植草ひばりがナースとなっていた。
清瀬京太は、学生時代、植草ひばりと図書館で会う、あのひとときが大切な思い出だったが、
今の鬱屈した自分自身を見て欲しくなく、距離を取ろうとする。
植草ひばりは、そんな態度を取られる理由が分からず、うまく話ができずにいた。

しかし植草ひばりは、院内の様々な視線を集め、狙われていた……、
という、”略奪され淫辱されるADV”。

それでは感想です。
少しネタバレがあります。



思ったよりも楽しめました。
最後まで進めると、意外とストーリーも良かったと思います。

体験版が2つリリースされています。
あまり期待しない方がいいかと思いながら気軽に製品版に臨んだわけですが、
それが良かったようです。

まず、システム面。
もう少しプレイしやすくなっても良いはずです。折角のブランド20周年記念作なのですから。

音声は、責め役の男性キャラクタに音声が入っていたのがすごく良かったと思います。
これ、入っていないと魅力半減していたと思いますね。

何より、綾瀬はづきさんの原画はやっぱり良いなと思います。
彩色がもっと綺麗になってほしいとは思うものの、よく表情を見てみると、
やっぱり線画はすごく良いかなと思うんですよね。
サブ看護師さんもかわいらしい。
公式サイトにもある、更衣室にいる伏見アンジェリアの横顔や植草ひばりの表情、
このイベントCGには差分もあるんですが、それも良いです。


さて、体験版をプレイすると分かるように、
新人ナースの植草ひばりは、所属している聖奨総合病院関係者から狙われています。
ルートは分岐式で、狙う男を回避すると、次の狙う男が登場します。

リハビリ医師の久米先生、院内では人気の石神先生、実は病院理事長の旭泰平の順です。

まず、先にシーンのことを。
体験版は、魅力が伝わらない切り出し方だったのかもしれません。

というのも、1シーンあたりが短いんですよね。
もう一回やるべきだと思うところで、終わってしまう。

例えば、久米先生ルート(この表現もちょっとおかしいのですが)で、
放置された植草ひばりを公園に住んでいる彼らが囲み、
「まだまだ夜は長いんだ」と言いながら、一回で終わってしまうのっておかしいと思いますし、
そこは最低でも後一回がんばってほしいですよね。

だから、というわけではないのですが、
シーンの連続性によって楽しめる作品といえます。

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植草ひばりについて。
体験版をプレイして、一番引っかかったのが植草ひばりの性格設定です。

リハビリ医師の久米先生が評価していますが、
植草ひばりは、「人の悪意に対して鈍感すぎる」んですよね。
アンジェリア看護師も同様の評価でした。「隙が多すぎる」。
久米先生にもさらに言われています。「自分から罠に飛び込んでいく」と。
石神先生には「滅多にいないレベルでちょろい」「この程度の安物」呼ばわり。
誰を疑っているかという情報を、当人に与えに行ってしまうくらいですから、
その評価もやむなしです。
こう、狙われている側の人間が、悪意に気付かず、相手にメリットのある情報を提供している現場、
なんと思って画面を見ていればいいのか、受け止めればいいのか分かりませんよね。

見ている側は、そういうキャラクタの味方になれるか、なんですよね。
罠にかかったとして、味方になれないヒロインが苦しんでても、
何とも思えないと思うんです。

そして、窮地に陥っても、「不幸を抱え込んでうじうじ一人で思い悩むタイプの典型」。
で、事態は好転しないので、見ている側はやきもきするんですよね。

だからまあ、そういうキャラクタに対して、気持ちが萎えてしまうと、
シーンだってきっと楽しめません。

でもそれを乗り越え、責める側が上手い場合は、楽しめると思います。

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シーンの連続性、植草ひばりの性質と、責める側が上手かったと思うのが、
石神先生。

石神裕也(天城泰行さん)は、病院内でも人気がある医師。
既婚ながら、これまでも院内で看護師に手を出し続けているのですが、
理事と深い繋がりもあり、もう強い立ち位置。

上手いと思ったのが、周囲の印象操作を行うこと。
周囲に見られていることを自覚して、上手くまとまるような動きをします。

それと、植草ひばりの知識が鈍いのに合わせて、心理刷り込みをすること。
責めながら、実際と違うことを言う。
言われた植草ひばりが幾度も否定しますが、繰り返し断定していくことで、
刷り込みが事実になっていく。その通りの反応に。
刷り込みによってどんどんはまっていくわけですね。

でも、その上手さが、ここが上手いというようには、テキストで描かれていません。
なので、勝手に読み取っただけともえいますが……結果、植草ひばりは破滅していきます。

シーンの連続で、どんどん変わっていく植草ひばりが見られて、納得しました。
こういう作品は、やっぱりキャラクタの変化が見られると面白いですよね。

結局は、植草ひばりの性質による、ともいえるのですが。
石神先生のいう、素質があった、という部分、
そして、植草ひばりは石神先生を認めないという意志を見せたから、この展開は映えたのでしょう。
(ああ、植草ひばりの魅力は、簡単に屈しないぞと発露するところかも?)

久米先生(片栗滑朗さん)は、ルートでは、四面楚歌に追い詰められながらも、
粘ってくれて見せ場を作ってくれます。
それ以外でも、良い役どころだったと思います。
旭泰平は、越雪光さんが悪役演じるのうまいですね。
悪役って能書き並べる場面があるんですが、妙な説得力を感じました。
そういう地位にいる人居そうだなと。
繰り返しになりますが、責める側に音声が入っているのは重要だったと思います。

伏見アンジェリア役の飴川紫乃さん、植草ひばり役のそよかぜみらいさん。
どちらも良かったと思います。ビジュアルと良く合っていましたし、上手です。
そよかぜみらいさん、ちょっと舌っ足らずな雰囲気に、吐息が色っぽくて良いと思います。
飴川紫乃さんは、ちょっと明るいタイプのキャラクタに合いますね。
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植草ひばりは、背中を押されないと手を挙げられないタイプなんでしょうね。
アンジェリアは主人公を巡って鞘当てをしていくところが魅力的。

あ、そうそう。体験版では無さそうだなと思っていたのですが、
ハッピーエンド、ありました。


あまり期待をしていなかったのですが、かなり楽しめました。

不満はありますが、仮にそれらがクリアされ、精緻なものになった場合、
きっとプレイに耐えられないと思うんです。痛くて怖くて。
だからこそ良かった、という部分も大きいと思います。

本当にこのルート大丈夫なの?と脅えながらクリック早めたりしていましたから。
気持ちが休まらないんですよね、こういう作品は。
なので、ちょっとハラハラ疲れも感じますが。

多彩にバッドエンド、堕ち、NTR……、
色々な展開を見られ、変わっていってしまう植草ひばりと伏見アンジェリアを見ることができ、
ミドルプライス作品なのに堪能できたと思います。


今ならパッケージ版予約特典の「とらいあんぐるBLUE」Win10版付きが残っているかもしれません。



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