SILKY'S PLUSさんの「きまぐれテンプテーション」感想です。
シルキーズプラス『きまぐれテンプテーション』

2019年9月発売作品。

シルキーズプラス WASABIさんの「きまぐれテンプテーション」は……、
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陰陽寮から事件にあたるよう、巽悠久が送られた先は、呪いのマンション。
入居者の集団自殺事件が起きた場所。
そこでは、事件解決のための現地協力者、悪魔アンネリーゼが待っていた……。
という導入でした。

それでは、感想です。
ネタバレは、少しだけあります。

修正パッチがリリースされていて、現在1.03。必ずあてたほうがよいです。

サスペンスホラー作品です。
マンション内で部屋を調査、霊体となった住人に聞き込みをして、事件解決へ進みます。
マウス操作で気になる場所をクリック。証拠品を確保し、
聞き込みによって得た情報と併せて、何が起きたのか解明していく。

ロープライス作品ながら、かなり良かったと思います。

”陰陽師が可愛い悪魔に誘惑されるADV”ということにはなっていますが、
調査を一緒に進めてくれる相棒アンネリーゼの誘惑は、強くありません。
主導権はこちら側にあって、選ぶか選ばないかは自由。
どうしても選んでしまう、ということもありません。
強制進行上、最初こそ流されてしまいますが、
最初のプレイでは、以降は全く手を出さない、という流れを選びました。
思ったより主人公に真面目なバックボーンがあり、そのほうが自然な気がしたためです。
(当然ながらベストエンディングには辿り着きません)

アンネリーゼの、セリフと声はマッチ度高いと思うのです。
ですけど、ビジュアルと声とが合わない。
どちらもかなり好きなんです。歩サラさんの声もそうだし、
きみしま青さんの、ボリューミーでかわいい悪魔女の子なんて素晴らしいです。
でも、なんか合ってないですよね。

E-moteの動きは良いです。良く調整されています。
会話にしっかり沿った動き。見ていて楽しいです。
ここまで調整するのは大変だったろうなと。
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それを感じられるのは、おまけモードのアンネViewer。
体験版で感じたようにアンネリーゼはオシャレ(と表現しておきますが)なので、
服装や髪型差分が多いのです。
表情差分や、手の動き、身体の向き……これに加えて、E-moteアクションが180もあるのです。

これをセリフに合わせて調整するの、本当に大変だったでしょうね。
そのお陰で、テキストウィンドウにいる場合でも、アンネはE-moteで動きます。
きっちり合った動きで。
称賛するべきE-mote調整の技です。

是非、クリアしたらアンネViewerで楽しんで欲しいところ。
アンネの表情差分だけでも楽しめます。

これはアンネリーゼVtuberデビューしかねないです。
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コマンドの選択後の会話が、分からないところで切れます。
例えば、住人と話すしか進行しないケースでも、再び選ばせる理由は分からないですよね。
途中で退室できるわけでもないのに。

また、バッドエンドの場合。
進行構造上仕方が無いとは思うのですが、それまでグイグイ来ていたはずのアンネが、
急に引いてしまう感じがして。
ダーリンだけのもの、なんていう割に。
行為がしたかっただけなのかな、と少し残念に思えてしまうところもあります。
最終ルートに辿る前までに、そういう不満の印象を、アンネに思ってしまう。
アンネリーゼに対する好感度の積み上げができないんですよね。
ベストエンディングでないと明かせない、伝わらないから。
辿る順番によって、その印象が長く続く、根付いてしまう。
そういう意味では、エンディングがちょっと多いかもしれません。

ジェットコースターのように怒濤の流れを持つ、
それでいて強烈な描写のある事態へプレイヤーを巻き込んだので、ストーリーは面白いのですが、
終わり方が、ヒロインを選ぶことである以上、ヒロインへの好感度が必要だと思います。
アンネに対してさほど執着を得られなかったのが残念です。
一週間しか過ごさないので、仕方が無いかもしれません。

ベストエンディングへ辿り着けた場合、シーン回収は50%以下です。
CG回収は80%程度だったでしょうか。
残りがどうしても気になりますよね。これが本当にベストなのかも分からないですし。
確かに、未回収のCGを解放してくれるボタンを用意してくれています。ありがたいです。
でも、そこに至る前での、どういう流れなのかが知りたいのですよね。
サスペンス物語ですから。
労力の割に、ほんのちょっとの変化だったりするのが、不満でもあります。
やっぱり、エンディングが多かったのかも、とは思います。

クーリィの「うち」の発音が、家になっています。
アンネの「いい知らせ?」の音声が割れています。

最後の望み、ですが。
アンネの口から血が出る表現があります。これが不思議です。
印象残したいのは分かりますが、住人を斬った時のように最初から霧散するのが良かったのでは。
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攻略的なお話。
一つの部屋に訪れ、住人と会話をしたり調べたりをしながら進行しますが、
総当たりをしなければならず、少々手間には感じるものの、
部屋の調査は、総当たりをしていけば何とかなるので、捜査は難しくありません。

むしろ、それ以外の選択肢。
そうなんです。部屋の観察や調査を主眼に置く捜査ADVのように見えて、
実はどんな選択肢を選んだかが重要視される、ADVなんですよね。
住人や、アンネリーゼとの会話こそが。

住人の説得については、住人の天使化が始まってからする会話ではなく、
その前回の会話で信頼関係を築くことが大事です。
ここを間違えると、住人を元に戻せませんし、ベストエンディングから外れます。
(天使化した場合の選択肢はどちらを選んでいっても問題無いようです)
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3回目にハーヴィーを訪問した際、
ロゥジィのことを聞くと天使化の兆しが見え会話が終わってしまうので、その話題は最後に選択する。

あとは、アンネリーゼとどうするか。
全く手を出さないのか、場を弁えず手を出すのか、ここではイチャイチャしないのか。
全体的に見れば、それだけなのですよね。

捜査手帳は、物語を補完するためのものです。


本格風と思わせる、彩られたグラフィックや音楽が非常に良かったです。
おどろおどろしい雰囲気は、さすがシルキーズプラスさんと思います。
このおどろおどろしさの継承は、過去作に準じ、それでいて上回っているように思います。
ここが面白さの肝だと思いますので、ネタバレというかご紹介できないところですが、
(公式サイトにも挙がっていませんし)、
ブランド過去作「あけいろ怪奇譚」などをプレイされた方には分かると思います。
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体験版で登場した、この箇所。
これを見て、意表を突かれた方も多いと思いますが、
製品版では、この程度では終わらないホラー表現があります。素晴らしいですよ。

ここが一番、良かったです。
”陰陽師が可愛い悪魔に誘惑されるADV”ではなく、”サスペンスホラーADV”だな、と。
非常にシルキーズプラスさんらしい。

タイトルもOP曲もミスマッチを感じますが、羊の皮を被った狼とでもいうのでしょうか。
そういう営業手法だったのかなと納得しています。
そして、このために、きみしま青さんを起用したのなら、冴えた企画といえます。

今後も、シルキーズプラスさんから出てくるサスペンスホラー作品に期待したいですね。



ダウンロード販売もあります。