Qruppoさんの「抜きゲーみたいな島に住んでる貧乳はどうすりゃいいですか?2」感想です。

2019年7月発売作品。

Qruppoさんの「抜きゲーみたいな島に住んでる貧乳はどうすりゃいいですか?2 」は、
”並行世界でもビッチに絶対負けたりなんてしない逃亡&バトルADV”。

この作品は、大まかに分けると、前作のアフタールートと、ひとつだけ新ルートがあります。
あくまで「2」であり、前作プレイが必須といえます。

そのため、公式サイトでもネタバレがあります、というアナウンス。


それでは、感想です。
ネタバレはありません。


まず、よくここまでネタが出て来る、ということに感心します。
前作はネタの量で圧倒、しかもルートによってシナリオが弱いこともない作品でしたが、
今作も変わりません。
こんなことを、このボリュームで考えつく。ここがすごいです。

青藍島の日常を描き出すテキストの密度。
現実にはあり得ない環境、青藍島が在るものとして感じられる物量なんですよね。
タイトル通り、冗談みたいな島です。
それを、画面のこちら側にいても納得させるだけの物量で押し切る。

体験版をプレイしてみると良く分かると思います。
そういうものだから、で適当に流さない。
テキストで、喋り倒して納得させることに近いのです。

それだけであれば、ギャグ作品で終わるところを、
ギャグを常識に変えてシリアスで殴り合う展開に持っていく。
そこがとても面白い。
”並行世界でもビッチに絶対負けたりなんてしない逃亡&バトルADV”、なのです。

さらに、戦いを終えたからといって、あっさり誰かとくっつきません。
主人公、橘淳之介には自分なりのルールやポリシー、トラウマがあり、
それらを超える必要があるのです。

適当に流さず、キャラクタが動けるようになるまでとにかくやらせている。
それが諄くないわけではありませんが、
きちんとしていなさそうな外面なのにきちんとしている。それがこの作品の面白さでもあります。


では、まずアフターシナリオ。
前作ヒロインのその後を知ることができるのですが、
圧倒的勢力に対抗するため戦い、そして勝利を勝ち取った後なので、
前作のシナリオがちょっともったいない扱いになっているところもあります。

場を盛り上げようとするために、前作の結末をひっくり返すのかと不安を誘う展開。
特に、畔美岬のルート。
多くの場面でギャグ担当になってしまっていましたが、
今作では美岬アフターでもギャグ要員になってしまっています。

仕方が無いところもあるのですが、ここは好みの問題だと思います。
奈々瀬のセリフでいえば「大事な思い出が現在進行形で穢されているのだわ……」になるでしょうか。
それくらい、本編の畔美岬シナリオは、
映画的、エンターテイメントと感じられ、良かったですから。

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新ルートとして追加された、橘麻音ミニシナリオ。
作中の突っ込みセリフ風に表現すると、「言うほどミニか?」というボリュームでしたし、
何よりも性質が似ている兄妹が、どうなればいいのか、流れを見せてくれたと思います。

そらまめ。さん、今作でも圧縮詠唱セリフが多くて大変だったと思いますが、
既に橘麻音のキャラクタとして外せないものになっていますよね。

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そして、やっぱり奈々瀬アフターでしょう。
元からそうでしたが、奈々瀬の新妻感すごいです。

片桐奈々瀬は本当にいいヒロインに描かれていて、とても満足しました。
これはアフターに限らず、どこでも、です。
ここで出なきゃいけない。そういう場面で絶対に外さず、ヒロインであることを見せつけてくれます。
柳ひとみさんというキャストのお陰でもあり、幼なじみで頼れる相棒のまま。
そして、初恋の人でした。

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「ぬきたし2」メインシナリオ。
大団円を迎えた後で創る新ルートはどうするか。
並行世界へ飛ばされてしまうのです。
そこでの橘淳之介は、敵対していたSS兼副会長という立場を得ている、という導入の体験版
一緒に意識を飛ばされた、SSビッグスリーと共闘、元の世界へ戻ることを目指します。

前作でもそうでしたが、SEがすごく良いのだと思います。
普通、歩いているSEなどは複数用意されていません。
それをすることで、テキストで描かれる場面をサポートするのは、
グラフィックでなくSEがしているのです。

場を表す地の文。バトル場面で書き表せば、テンポが悪くなることもあります。
それをSEで表現することで、テンポを維持し魅力的なバトルに仕上げています。
滑空、射出、落下、弾丸、銃器構え、ジェット音、打突音……、
リッチ厚みのあるSEが多数。

これを、デフォルトではBGM30、ボイス100、SEなどの効果音は80という設定になっていますが、
非常に良いバランスで用意してくれているなと感じます。
戦闘中ですからセリフも当然叫ぶようなものが多いです。そして見せ場となるのは決め台詞。
耳障りで無く、合わせると盛り上がり、それでいてしっかり聞かせないといけないのです。

このSEと、立ち絵の変更タイミングがしっかり合っていれば最高でしたね。
システムの都合もあるので難しいところです。

このシナリオで、橘淳之介が追尾を仕掛けますが、動きが良く伝わりません。
恐らく、スパイダーマンのようなことをしているのだろうな、とはSEを聞いて思うのですが、
あの動きをビジュアルでも表現してくれたら、より良かったと思います。
もっと盛り上がったのではないかと。

nd10
共闘することになったSSビッグスリー。
糺川礼(水野七海さん)のシナリオでは、前作の渡会ヒナミとの物語を思わせる展開が用意されていて、
二人にとって必要なことを、真正面から場面を描いてくれました。

冷泉院桐香(花澤さくらさん)は、前作では最強の存在として描かれていたところ、
非常に親しみを持てる存在となるよう、別な面を見せてくれました。

女部田郁子(倉田ありあさん)は、強さに基づく過去を明かしました。
(もう少し、橘淳之介に執着する理由を補強しても良かったと思いますが)

それもこれも、敵だった者たちと一緒に行動をしたらどうなるのか、
良い方向性を軸にしたからなのだと思います。
これは本当に上手いですね。
それでいて、前作の仲間たちのことも大事に扱えていたと思います。


ちょっと声がおかしい部分があります。

渡会ヒナミアフターの、礼先輩の声。
「ど、どういうところ?」のセリフ間の妙な音があります。
「私のことは、オーガストとお呼びください」にも雑音がありますね。
これだけのボリュームなら、チェックが漏れても仕方ないでしょうか。

あと、システム。
2作目で慣れもあるはずなのに、やっぱりセーブファイルが足りなかったです。
次作ではボイス登録があっても良いかもしれません。今作では催眠音声などのネタが多かったですし。

nd9
通常、2作目はどうしてもテンションやインパクトが落ちます。
また、1作目で扱った要素を上回らないといけないプレッシャーもあったでしょう。
整合性にも気を遣わねばなりません。

「ぬきたし」の場合は、あれだけのことを1作目で行ったのです。
それでいて2作目もテンションが変わらない。1作目を楽しんだ人を楽しませる。
ギャグも重視していますが、真面目に決めるところは本当に決め切る。
それをしてくれた。
そんなメインストーリーがあることを、改めて賞賛したいと思います。

すごく、堪能しました。


昨年末開催されたファンミーティングイベントにおいて、
那賀伊波(藍沢夏癒さん)のミニシナリオと、同じ設定での新作が発表されています。

ついていけるテンションを作って、待ちたいですね。


ダウンロード販売もあります。


もし、前作をプレイされていない方は、セット版があります。


NLNSの集合写真、すごく好きなんですよね。
こうやって撮られるもんだろう?!と淳之介が煽って、
そのテンションに引きつつ、写真を撮ることはいいことなのだわ、と奈々瀬が同意して、
写真を撮られるときのポーズ?と文乃が小首を傾げて、
お姉さんがピースの見本をみせたげよう!とヒナミがスマイルを見せて、
変顔なら任せてください!と美岬が見事なダブルピースを決めて、
写真にその顔残して大丈夫か?と麻音がツッコミ入れて、
で、カメラのセッティングしていた淳之介が滑り込んでくる、という場面だと勝手に思ってます。

そんな写真を眺める。
彼らの戦いは、無事に終わったのだと思っています。

これにタイトル画面で流れる『May day+^2』の合うこと。まさに、めでたし。