tone work’sさんの「月の彼方で逢いましょうSweetSummerRainbow」感想です。

2020年5月発売作品。

tone work’sさんの「月の彼方で逢いましょうSweetSummerRainbow」は、
2019年6月に発売された「月の彼方で逢いましょう」のあるルートをリニューアルした作品です。

それでは、感想です。
ネタバレは少し多めにあります。


うん。さすがですよね。相変わらずここまでやるのか、tone work'sさんは。
そんな思いです。

価格を見て、短いのかと思いきや、全くそんなことがない。
プレイ時間だけでなく、素材も含めて、フルプライス作品以上。

構成が面白いのですが、「月の彼方で逢いましょう」をベースにし、
ヒロインの一人、佐倉雨音にフォーカスし、佐倉雨音のストーリーを再構成、
新たな物語を見せてくれるのです。
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佐倉雨音が黒野奏汰と出会い、繋がり、二人の物語を綴っていく。

描かれた物語は四編。
「月の彼方で逢いましょう」はスクール編とアフター編に別れていますが、
そのダイジェストと、スクール編またはアフター編にあったであろうストーリー、
SSRが追加されているのです。

ところが。
そのダイジェスト書かれている2つのパート。
相当手が入っているのです。決して、ダイジェストではないのです。

ファンディスクではなく、ルートリニューアル作品と書いたのは正にここ。
ここまで手を入れているとは思わず、驚きました。

例えば、つきかなスクール編ダイジェスト。
黒野奏汰のモノローグが要所要所で追加され、佐倉雨音に惹かれていき、
告白こそできなかったけれど、気にしているのを見ることができたり。
そして佐倉雨音だって。
もう、とっくにお互いがお互いしか認めていなくなっている。
素敵ですね。これだけで一本の恋愛物語になっています。
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そしてSSRスクール編では、アメリカのサマースクールに参加する二人を見ることができます。

この当たりはもう、サンフランシスコの街並み画像を検索しながら進めてしまいましたね。
作品の背景にもだいぶ反映はされていますが、
フィッシャーマンズワーフは、こんな雰囲気ではないか、とか。
あとは、Posh Bagelなども参考になっていそうですよね。

目に新しい風景というだけでなく、フィッシャーマンズワーフで過ごした時間は、二人にとって大事な季節になっている。
それがとても良いのです。



つきかなアフター編ダイジェストは、本当にダイジェスト寄りですが、
元作品の完成度が高かったから、改めて追加することもなかったといえるのかも。
でもすっきりした編集になったといえるでしょうか。

しかしながら、「月の彼方で逢いましょう」でプレイしたほうが、ドラマティックに感じられると思います。
ポールグレイのしたこと、そして誰か大切な人と繋がるエンデュミオンのことを書いた小説、
「月虹」のことが重きを置かれていないのですよね。

そして、佐倉雨音の最大の決断。
これをさらに強化しても良かったのではないかと思います。
というのも、この時、佐倉雨音は、届かなかったハガキを破ります。
恐らく、届けたい相手への気持ちも一緒に破ろうとしているのだと感じられるからです。

葛藤の末に押す、さらに決意を揺らされる。
それくらいの感情表現があってもよかったなと。

でもそれは、SSRアフター編への仕掛けなのですが。

本当に、月かなアフターの、このエンディングソング。
改めて聞いてLunaさんの歌う『After Rain』のコーラス。

「パパへ、ママへ」。
これを入れたのはとてもとても良いと思います。
これは雨音の唄ですよ。素直に言葉にできた雨音の想いが詩にこめられていると思います。


そして何よりも良かったのは、アフターSSR。
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黒野奏汰は、雨音と小さな部屋で、二人暮らし。
飯田橋のよつば出版社へ勤務、月ヶ洞きらり(手塚りょうこさん)の担当編集となりながら、
「月虹」を出版、映画監督となった友人の環円(藤澤梅太郎さん)の手により映画化へこぎ着けた。
しかし、それ以来は自身の夢である執筆ができていなかった。

「月虹」は、あの時の全てだった。
手にはエンデュミオンがあり、ポール・グレイを追いかけ、
D-WAVEはシトロン社を継いだフィリップ・ダーナーが守っていた。
そして雨音が隣に居続けた。
だから綴れた物語だと。
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「黒野くん、次作そろそろ本気で考えてみない?」
しかし、松宮霧子編集長(猫屋敷舞さん)に推してもらえるほど、黒野奏汰の次作は待ち望まれていた。
そこで、今だからできる物語書いてみるかと筆を起こした黒野奏汰。
編集者としての視点で、最初からメディアミックス展開を考え、
コミックの担当を探す。そして岬栞菜(鈴谷まやさん)と出会っていく。

うん。これですよ。
たくさんの人が一つの物語に関わり、家族はより家族になっていく。
それぞれが、新しいものを得ていく。
「月の彼方で逢いましょう」のサブヒロインたちがすごく魅力的なので、関わっていく物語は、
見ていてとても盛り上がります。

人は様々な面がある。
黒野奏汰は、編集者としての面があり、家庭では父であり、夫。
友人に囲まれたら友人の一人になる。
様々な面、様々な人たちとの関わり。それらが描かれていくのがまず楽しいですよね。

奏汰と雨音は、娘のつきこと関わることで。
新しいたくさんの経験をしていく。
考えてみたら、ヒロインと子供との生活を描いた作品は珍しいですよね。
それも、新鮮に。
体験やイベントは、世の中にはあることなのに、なかなか描かれたことがない。
子供が居るから味わえること。それは大変なことも、喜びも共に。
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それら全ての日々で、黒野奏汰の二作目小説は完成します。
その物語は、描いています。
「家族と、それを取り巻く人たちも含めた家族の幸せです」
何よりも、今は妻となった雨音に届くのです。
一歩、前へ。
エンデュミオンは、D-WAVEの奇跡は、確かにあったのです。
現在を噛みしめながら、過去を思いながら、前へ。未来へ。

人の想いを、繋げていくのです。

この挿入歌『Nostalgic Treasure』も、『After Rain』へのアンサーソングともいえるものなのですよね。


この二人を様々な人たちが支えています。

うん、松宮霧子さん、本当に素敵なヒロインですね。絶対周囲が放って置かないと思うのですが。
月ヶ洞きらり先生も相変わらずですが、格好いいですよね。こんな人見てみたい。
岬栞菜さんは、なかなか芽が伸びなかったけれど、今作で爆発的に伸びるといいですよね。妄想力で雨音と仲良くなっていくのもすごく良いです。
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全体的に、要所要所でサブキャラクタの配置が良いと思います。
サンフランシスコでは、ベロニカ・ランド。
アフターでは、月ヶ洞きらり先生になりますでしょうか。
迷いを切り捨て、道はここだと教えてくれる。
その道へ進むことを、倉橋聖衣良や松宮霧子が応援してくれる。
オンラインゲーム仲間の日本橋ホライゾンやきのこ756も。二人の間にある出来事を盛り上げてくれました。
もちろん、黒野奏汰の両親も。
雨音が倒れてしまいそうなとき、支えてくれたのは本当に良かったと思います。
それを、雨音が受け入れることができたのも、大人になったなって感じられて……。

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イベントの一つ一つがキラキラしていて、何もかもが良すぎました。

しかしこれだけボリュームを用意しながら、
そしてラストの物語が素晴らしく盛り上がるものを用意している。
全体を振り返っても、すごく良い構成、良い流れです。

すごく細かいところですが、どのストーリーのセーブファイルなのかマークしてくれたの、
嬉しい仕様でした。
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そうそう。
月の彼方で逢いましょう」を未プレイの方でも、
この佐倉雨音と黒野奏汰の物語は味わって楽しめる構成といえますから、お勧めできます。
あと、体験版の3倍くらいはボリュームあったので、フルプライス作品以上の体験が用意されています。



ダウンロード販売もあります。





すごく感心したのは、営業さん、Web営業さん、広報の方も含めてきちんとクレジットされていること。
実はここってものすごく大事なんですよね。
作品を届けてくれる助けになってくれたはずです。