Troisさんの「夏とプールとイソギンチャク」感想です。
2020年7月発売作品。
Troisさんの「夏とプールとイソギンチャク」は……、
スタイルが良くない、でも彼氏は欲しい。
須崎愛梨は、入ったボイラー室で不思議な生物を見掛ける。
やばいとは思ったものの、襲ってくる気配が無い。
「もしかして……良い触手生物なんだろうか?見た目はすっごいグロテスクだけど……」
気付けば、そのイソギンチャクみたいな生物の身体や触手を間近で観察していて……。
という導入でした。
それでは感想です。
大きなネタバレがあります。
全体的には楽しめたと思います。
蜜図帆こもさん原画の須崎愛梨は、Troisさんの中ではかわいらしいデザインで、
明るいけれど抜けていて、思考が変。
これに風花ましろさんが声を当てて、まともさにシフトさせているのですが、
それでもつい笑ってしまいます。
襲ってこないからといって触手生物に触れてみたり、
イソ君と名付けてかわいがってみたり、身を委ねてしまうという流れ。
そしてそのことを後悔してみせたり。
こんな触手生物に出くわしたら、即時に転回して逃亡を図るものではないかと思うのですが、
そうはしない。
「えへ、今日も来ちゃったっ!元気にしてた?お腹とか空いてない?」と積極的に会いに行き、ただ。1点だけ、どうしても大きく首を傾げることがあります。
この作品のタイトルは、「夏とプールとイソギンチャク」。
タイトル、軽妙。
OP曲タイトル『夏イソでいこう』。明るい。
曲調、ポップ。ティンバレスが効いてますよね。菜雪さんの歌声も然り。
蜜図帆こもさんの描く愛梨、かわいらしい。
蒼刻さんが描き、風花ましろさんが演じる愛梨。
ちょっとおバカで明るい性格。親しみを持てる。
ところが。
暗い展開が待っているのです。結構ハードな。
だったら、どうしてそこまで明るい素材ばかりを揃えたのかと大きく首を傾げます。
ここが一番引っかかりました。
選択肢もあるのだから、ハードな展開に堕としてしまうのではなく、タイトル回収するほうが良かったと思います。
そこ以外はしっかりまとまっているのです。
須崎愛梨がうまくキャラクタ形成できています。
何気ない台詞回しが活きているので、シナリオ担当の蒼刻さんの腕だと思います。
謎の触手生物に対し名前を付けて可愛がる。
これだけあるんだから触手一本くれないかな?とか考える。
描写も分かりやすいと思います。
失礼だけれど、愛梨は間違いなく考え方がズレていて、
あくまで自分が上だと、触手生物に対し飼っているペットにするような接し方をします。
それを演じる風花ましろさんも上手い。
体験版中の「マ?」だけで掴まれたところがありますが、
愛梨のキャラクタがブレていない。変にいやらしすぎない。おかしすぎない。
すごいことをされてしまう愛梨ですが、BGVも含めて上手くて、なかなか聞き応えがありました。
素直にいえば、そそられました。
「しゃっ!おーらぁああああいッ!イエスッ!イエスッ!!」とか、
親友たちへの誤魔化し笑いが特に楽しいです。どこかズレた視点を持ったまま。
でも最後まで愛梨のキャラクター軸はズレていないと感じられます。
なので、愛梨を見ていると、笑ったり、山ほどツッコミを入れることができるのです。
後半、愛梨のことを心配するセリフがあるのですが。
「心配なのよ。愛梨ってば変なところでおっちょこちょいというか、チョロいというか……、
誰に似たのか、お気楽思考で……」
よく娘を理解していらっしゃるお母さんだと感じるほど。暗い展開が先にあると、プレイ後に振り返っても楽しめるかというと少し難しくて、
そこが首を傾げてしまったところに繋がります。
というか、明るい作品だと思ったから手を出してみたのですよね。
そこは裏切らないで欲しかったです。
その他、ちょっと気になったところ。
お腹にあれこれされるのですが、もう少し上手くグラフィック描写してほしいですね。
別途収録した音声なのか、一箇所、調整がうまくいっていないです。
PIXSTUDIOはセーブした箇所を再生してくれないので困りますね。