inreさんの「源平繚乱絵巻 ‐GIKEI-」体験版プレイしました。


inreさんの新作は、「源平繚乱絵巻 ‐GIKEI-」。

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梅雨明け、期末試験は終わり。夏休みまでもう少し。
叶納世志常は、通学に乗った浦雅の渡しの船頭に声を掛けられる。
「虎退治の踊り、しっかり頼むぜ」

叶納世志常は、東叶納神社の跡取り。
叶納神社は、平安時代に源氏再興を願って建てられ、建立後に源氏が復活したことから、
願いが叶うパワースポットとして親しまれている。
浦雅対岸には分社した西叶納神社もあり、夏に祭りが開催されるのだ。

虎退治の踊りとは、源平合戦に見立てた舞。
虎を平家とし、源氏役の叶納世志常が華麗な舞で倒すという仕立てだ。

そして、白拍子の舞も行われる。
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叶納桜子と御桶代紫都香が白装束に身を包み、静御前が別れた源義経を想って舞う演目。
始まると、周囲の喧噪が止むほど、様になった舞だ。

叶納桜子は世志常の妹。
歴史が得意で、親しまれやすい性格だ。
大人しい印象だがしっかりしていて、片付いた部屋には歴史関係の書籍が棚に並んでいる。
大学へ進んでも平安時代のことを学びたいといっていた。
御桶代紫都香は、世志常の幼なじみ。
弓道部のエースで、次期学生会会長候補。
感情表現が豊かだが、同時に冷静な判断でリーダーシップを発揮するタイプ。
二人は性格が反対といえるのに、世志常は喧嘩しているのを見たことが無い。
そして二人とも男子から人気があり、修学旅行では誰かが声を掛けたというだけで、噂が全生徒に知れ渡るほどだ。


祭りの演目もそうだが、源氏に縁あるものに囲まれて過ごしていた。
それに由来するわけでもないが、三人は日本史に深く親しんでいる。
御桶代紫都香は修学旅行で新撰組の屯所や壬生寺を旅程に組み入れていた。
世志常も、金戒光明寺の御朱印をもらうつもりで居た。
叶納桜子は別の班で、鞍馬寺に向かうらしい。
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ところが。
叶納桜子が行方不明になったと報された。
全生徒はホテルに集められ、翌日の班行動は中止。
先生たちが探し歩いてくれたが見つからず、警察へ捜索願いを出した。

世志常は早朝に宿泊施設を抜け出す。
停学もあるだろうし迷惑もかけるだろう。
それでも必ず探しだし、兄としての責任を果たすべきだと考えたのだ。
ならばと御桶代紫都香も捜索プランを練ってくれた。

叶納桜子が向かう予定だった貴船神社側から、鞍馬寺へ。
探しに歩めば歩むほど、不思議に感じる。
山道の険しさはあるが、道幅が広く不意に逸れる理由がない。
何より、叶納桜子の性格からも、班行動を逸れたりするとは思えない。

そして辿り着いた鞍馬寺の金堂。
奇妙な形の石が嵌まる床、金剛床が目を引いた。
願いを叶えるものらしく、叶納桜子の無事を願おうとすると、
朝陽に満ちていたはずの辺りが急に暗くなり……。
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体験版は、889MBでした。

原画は、ひっさつくんさん、ぬいさん。
シナリオは、葉山こよーてさん。
音楽は、井原恒平さん、オープニング曲はMelonestさんです。


前作は吉里吉里2だったのですが、今作では吉里吉里Zを導入されたようです。
プレイ自由度が増しており、ウィンドウサイズ自在、
前にプレイした時点からすぐ再開できるサスペンド機能、
フォントは残念ながら固定ですが、
セーブファイル追加、お気に入りボイス登録機能などなど、便利な機能が多いです。

何より、画面演出。
前作「幕末尽忠報国烈士伝 -MIBURO-」でも、立ち絵素材を自在に動かして剣戟を表現していました。
が、今作ではさらにパワーアップしているのです。

これはもう、間違いなく体験版をプレイして感じて欲しいところ。
できればAUTOモードで。クリックするとその演出が消えてしまいます。

圧巻だったのは、パワーアップした演出の見せ方が、序破急の理を守っていること。

最初に目を引くアクションを見せます。
主人公の叶納世志常は、身軽さを備えています。
過去に体操で全国大会進出経験もあり、自身は金メダルを狙うと意気込んでいたほど。
まずそれを人々の前で見せます。が、これは完全成功しません。
10点満点の演技披露にはならない。

しかし次に。
見せ場となる本番において、このアクションを成功させます。
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危機的状況で硬直する身体、逃げたくなる本能を抑え込み、”虎退治”を舞ってみせるのです。

これは上手い見せ方だなと強く感じました。
アクション単体が良く、見せる流れが良い。
惹き付けて期待感を持たせ、その期待感を次に繋げ、今度こそ製鋼させる。
素晴らしい。
見ているユーザの感情をコントロールしているかのようです。

さらにこれだけではありません。
横への発展、種類を複数見せるのです。

大事な仲間、郎党を得る場において、どうしても戦闘が発生します。
その戦闘表現のため、立ち絵の素材を細かくパーツごとに分け、自在に使う。
この設定は大変だったのでは無いかと思うのですが、お陰でアニメーションバトルのよう。
素晴らしいと思います。
緊張感があり、画面にじっと集中させられてしまう。

立ち絵ポジションも自在で、例えば、紫都香が会話していた鬼一法眼から、画面奥で戦う世志常へフォーカスを移動させることができる。
何をどの視点で会話しているのか?良く伝わります。
アニメーションというよりも映画的といえるでしょうか。
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体験版以降もあるのは間違いなくて、ここが期待のポイントともいえます。


物語の設定説明が少し軽くなりました。
それは、敵たる存在が明確だからなのかもしれません。込み入った政治が存在しない。今は。

しかし決して物語が狭いわけではありません。
”平安剛勇列伝”と銘打つ通り、そのボリュームには期待しています。

叶納世志常、叶納桜子、御桶代紫都香は西暦1174年にタイムスリップします。
元号では承安4年。平氏が天下を獲る直前です。
史実では、数年後、その天下獲りに反旗を翻す源氏が、別な元号を用いたりと対立は深まっていく。
時の天皇を幽閉したり、平家棟梁の病が進行したり……、
数年で目まぐるしく事態が動くはずなのです。

何よりも、インレさんらしさと呼ぶのでしょうか。
そこが潤沢です。

世志常がタイムスリップ先で出会う、鬼一法眼(志雄子奨さん)や、
奥州藤原氏当主の藤原秀衡(高橋一休さん)、源頼朝こそ男性キャラクタですが、残りは全て女体化。
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魅力的なキャラクタとして登場します。

源平合戦において重要な人物が不在の世界。
例えば、源義経。
タイムスリップ先で会った鬼一法眼によれば、すでに仏門に入ったといいます。

そこへ。
平家に囚われてしまった叶納桜子を救うため、
世志常は源義経に成り代わり、打倒平家を目指すのです。

少しずつ史実とは違う。フィクションを上手く織り交ぜる。

知っている部分があるから楽しめるフィクションといえるでしょうか。
物語進行は会話主体なのですが、タイムスリップした世界の違和感をしっかりと描写しているのが好感触。
世志常と一緒にタイムスリップした御桶代紫都香が歴史に詳しいことで、差異を埋めていこうとする過程も良いですよね。
史実の解説を行うわけで、私たちが知る歴史を改めて学び、
そしてフィクションの部分がワクワクをかき立てるのです。

葉山こよーてさん、元々好きなのでしょう。
けれど、その上で、綿密な取材の上で練っているのがわかります。
読んでいて飽きさせないように、過剰ではないように。
これ、すごく難しいですよね。
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必要ならば、緻密な背景を用意して説得力を付けるのです。
体験版で見せた背景枚数の多さは非常に多いのですが、一瞬しか使用しないものがほとんどなのです。

でもその効果は絶大。場が良く伝わります。

だから、すごく面白いですね。
義務教育で得た知識を持つくらいの一般人に、程良いくらいのニュアンスになっています。

気付いたのは、論説別れるところもきちんと選択していること。
例えば、体験版前半では現代より3度気温が高いとしていますが、
平清盛の時代は、過去1,300年間において一番寒く、気温低下により動乱を招いたという研究があります。
後半でも突如天候が変わることで動乱の始まりを演出して見せたわけですが、
最初に暑いと表現したのは、好きなビジュアルを用いられるよう切り替えたのでしょうね。
お陰でキャラクタの衣装がとてもセクシー。
弁慶や三郎、継信の弓構えが、それはもう。

セクシーだけでなく、かわいいもあります。
例えば。この鞍馬寺の虎。
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「ウチに任せておけば夜目もばっちり! どやぁ!」
「数里離れたところでも匂いを嗅ぎわける……どや……」
大虎(秋野花さん)と小虎(今谷皆美さん)

鞍馬寺は狛犬ではなく狛虎を備えていますが、世志常一行のお供として遣わされる……のですが、
やられました。これはずるい。
いざとなれば虎変化ができ、相当な戦力になりそうですが、体験版中はかわいらしいマスコット。
四百十四歳なのですね。ょんひゃく……十歳くらいかと思いました。


これらで、源平合戦を描く。
ですが、平氏の治世のためにと捕らえられた叶納桜子とは、
10年近くも再会できないのかもしれないのです。

そして、源頼朝の存在。
流刑に処されていますが、共闘となっても、源義経にとって完全な味方とはなりえません。
政治が強く関わってくるのは、この頼朝が画面に登場してからになるでしょう。

戦の勝ちが、平和に繋がらない。
ハッピーエンドにならない史実なのですよね。

だから、源平合戦に勝っても、叶納桜子(歩サラさん)と再会したとしても。
いえ、もしかしたら、叶納桜子と、壇ノ浦で海没したとされる三神器の一とを選択させられるのかもしれません。

ムービーを見ていて、そんなことを考えました。

だとすると、史実通り。
後白河法皇(花丸あすなさん)が登場し、梶原景時(桃井いちごさん)と何かがあり、
世志常は海に消える……。
そして静御前と似通った名の紫都香(水多まりさん)は捕らえられ、悲しみの舞を舞うのかも、しれませんね。

体験版では、一行が奥州藤原氏に身を寄せるところまで、読ませてくれました。
その行程は、冒険譚のようにも感じられました。

さて、本編ではどこまで、どんなことをみせてくれるでしょうか。

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物語のはじまり、本来は横須賀市浦賀の叶神社。
作品に登場させるに当たり多少デフォルメしたということでしょう。

音楽も実に素晴らしいです。
相変わらずバトルが盛り上がりますね。

ここまで何の不満もないのですが、
気になるのは、公式サイトを確認すると、シーン数がすこし少ないのですよね。
世志常が男らしさ、最初から自分の相手を見定めていたと考えることもできますが、
伊勢三郎(あじ秋刀魚さん)はかわいすぎますし、あれだけアピールする武蔵坊弁慶(手塚りょうこさん)の見せ所がないのは不思議ですし、
大虎小虎の二人だってアピール強いですし、佐藤忠信(桃山いおんさん)、佐藤継信(早乙女綾さん)だって良く育ったと御館様も認めています。
そのあたりはどうしても欲しいのですが。

この時代の観念は現代より遙かに緩いはずで、全く問題無いと思うのですよね。
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仲良くなれる方法ですよね。

一点だけ。
収録ではないと思うのですが、ほんの一部、音が割れている箇所があります。
紫都香のセリフと、平知盛のセリフ。
ちょっともったいないですね。

小さくメタネタを入れてくれるのも良いアクセントになっていますよね。
発売は来年の春。楽しみに待ちましょう。


2021年3月26日(金)発売予定です。


豪華版の特典は、
オリジナル御朱印帳、オリジナルサウンドトラック、水着アクリルプレート、ドラマCD、アクリルキーホルダー2種となります。

御朱印帳とは、すごいですね。

ダウンロード販売もあります。