HULOTTE Roiさんの「ココロのカタチとイロとオト」体験版プレイしました。

HULOTTE Roiさんのデビュー作は、「ココロのカタチとイロとオト」。


イロが見えた。オトが聞けた。
幼い頃は、それを特別だと誇っていた。

しかし。
疑念と好奇心を向けられ、最初に、褒めてくれた大人たちが気味悪がって。
持てはやしてくれた友達が離れていって、そして両親が疲れ果ててしまった。

遠く離れた祖父に引き取られ、その能力を隠して過ごすことにした。
そうすれば、つまはじきにされることは免れる。

けれど、見えるものや聴こえるものは変わらない。

月森志季は、人の感情をイロとして見ることができる。
黄のイロを見せる人の喜び、青のイロが見える人の落ち込み。赤いイロの人は怒り。
そして、人の心が発する思いをオトとして聞くことができる。
言ってない隠していること、口で言っていることと違うこと。

イロやオト。
普通の人にはわからないそれが、月森志季には自動的に入ってくる。
遮断しようにもできない。
知りたくないと思っても、人の心が分かってしまう。
綺麗なものもあるけれど、知りたくないことも多すぎた。
この能力を周囲に知らせて、賞賛され、後に誰もが離れていった。

だから人の多い場所はできるだけ避けて、
それでも見えてしまわないように、視界をモノクロームの世界に閉ざした。
それでも聞こえてしまわないように、意味のないノイズとして聞き流すようにした。

変わらない憂鬱な一日のある日。
「だーれだ」
突然、モノクロームから暗闇に視界が変わった。
そして、ノイズも聞こえなくなった。
「ご、ごめんなさい! 間違えちゃった!!」

後に気付くのは、目を覆う小さく柔らかな手からもたらされたもの。
友達らしき人からハルネと呼ばれた彼女からは、イロも、オトも、何も伝わってこないこと。
そして彼女は、モノクロームだった月森志季の世界を変えて……。
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体験版は、493MBでした。

原画は、池上茜さん。
シナリオは、百憂なりたさん。
音楽は、Peak A Soul+さん。


システムは吉里吉里Zで、CUFFS系列ブランドと同じものを用いています。
ですので、演出が自在。
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主人公の月森志季は人の感情が見えてしまうわけですが、これを視覚的に表現しています。
パッと色を表示する。
色をここまで見せても、まるで違和感がない。
見づらくも、雰囲気を壊してもいない。素晴らしいですね。

さて、本作はヒロイン単体作品です。
視覚や聴覚で自動的に人の心が分かってしまう月森志季が、
心が分からない、伝わってくることがないヒロインと出会い、
日常生活に色を取り戻して過ごしていく場面が、体験版では描かれました。

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「その後もシキくんのお弁当屋さんストーリーは続くんだけど、それはまたのお楽しみ」
星名晴音(杏子御津さん)

ほわほわとした雰囲気のある小柄な女の子。
空想が得意で、ぬいぐるみが好き。
選ぶぬいぐるみにかわいらしさはなく、そのセンスには親友のの空木和彩も笑ってしまう。
空想にもズレが見られ、お話は聴き手の期待と違う展開に。
料理は得意。
主人公とは別なクラスであり、授業が終わるとぽてぽて歩いてくる。
手をつなぐ時は、ぷにぷにと握ってくる。

身長は小さく、月森志季にしゃがんでもらわないと頭にはとどかない。
付き合って1カ月経つが、昼や放課後には一緒に過ごしている。
どういうわけか、月森志季がイロもオトも感じられない。

杏子御津さん。なんといったらいいのか。
全身で今を過ごせる喜びを表しているのが、良く伝わる演技をされているのですよね。
一緒に過ごせることを、噛みしめている。
会話の隅々までが喜びで満ちている。
これは本当にすごい。ボイス登録機能を探してしまうほどです。

いえ、でも。
この音声と、すごくしっとりとした音楽があるからこそ、良いのかもしれません。
曲名が分からないのが残念ですが、素敵な時間を過ごしていることを、Peak A Soul+さんの音楽が教えてくれているのです。
彼にとって、やっと得られた大事な時間なのだと。

ゆったりした時間。
だからでしょうか。全く速度を速めて読み進める気にならない。
このペースで、このBPMでいい。
”心で感じる恋愛ノベル”。良く伝わります。

はー、これはすごい。とにかく雰囲気作りが上手いです。
音楽も良いのですが、雑踏音もよく、環境音量を上げてプレイしました。


順調に過ごしているように見えた、月森志季と星名晴音ですが、
親友の空木和彩(桃山いおんさん)によって変化が訪れます。

それは、月森志季が星名晴音にカップルらしいスキンシップを何もしていないと知ったから。

星名晴音は空木和彩と長年の親友で、一緒に過ごしていたけれど、
月森志季と付き合うことになったので遠慮した方がよいのか、いつも迷っている様子。
なんだかんだ、三人一緒に過ごすことが多いのですが、
自分のせいで二人の関係が発展しないのではないかと考えてしまうのです。

そして、親友のためにと、ハウツー本を持って訪れます。
興味がないわけではなかった月森志季は、その本を読んでから変な夢を……。
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夢を見てしまった月森志季は、星名晴音を避けるようになってしまいます。
人から受ける色やノイズが酷くなり、何より星名晴音を傷つけていることを苛みます。

が、切っ掛けを作ってしまった空木和彩が、星名晴音に謝るのです。
元々、裏表がなく、月森志季に伝わるイロもオトも、何もかもが一致している正直な存在なのです。
親友のためとやってしまって、月森志季はそれで悩んでいるのだろうと。
そして。

物語におけるこの山は、体験版で解決してしまいます。

そこからの展開も含めてある種エンディングといえる流れだったのですが、
この物語をさらに続けるとすると、蛇足になってしまうこともあるかもしれません。

例えば、この後は、月森志季が自らの能力を、大切な星名晴音に明かすこと。
明かすことに意味を持たせていくのかな、とは思うのですが、
その際に、星名晴音にも何かあったとしてしまうと、やっぱり余分に思います。

けれど、仲良くなってから付き合うまでのプロセスが明らかでないところをみると、
やっぱり何かあるのかもしれませんよね。

それでもヒロイン側は受容する存在と位置させたほうが、
醸された作品の雰囲気には合っていそうな気もします。

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今作ではサブヒロインですが、空木和彩役の桃山いおんさんは芝居が巧いですね。
慌てている、でも言わなければいけないところへ繋ぐ「あ」。
何と言ったら良いのか分からない、「その」という言い出し。
また次回作があるのであれば、どうやって仲良くなっていくのか知りたいと思います。

だからなおのこと、音の違和感も感じ取れてしまいます。
「お前にあげようと思って」は、やや割れていますね。

他のキャラクタですが、演出意図でなく距離が不意に遠く聞こえるなど、
恐らく収録状況の問題と思しき音声が多いです。
HULOTTEさんには珍しいですよね。


HULOTTE ROIさん。
梟モチーフのブランドロゴがかわいらしいですね。
続編に限らず、今後も何か作品が登場するのでしょうか。
王を名付けたのはどんな意味になるのでしょうか。


フォトフレームの件。
星名晴音、とても魅力的でした。
ああいうことを言われるとぐっと来ますし、本編でも信じられますよね。
きっとこの二人なら大丈夫です。


2020年12月25日(金)発売予定です。

マキシシングルは、HULOTTE公式通販で販売されるとのことです。
あっても良さそうなのですが、イラスト系グッズ展開がないようですね。

ダウンロード販売もあります。