Lump of Sugarさんの「まどひ白きの神隠し」体験版プレイしました。
そこには、驚いた顔でこちらをじーっと見ている女の子が移っていて……。
この場面、後に稲白みことに事情を話すのですが、6ワード程でスッキリまとめられる事態ではあります。
色気がオーバーフローしていると思います。
Lump of Sugarさんの新作は、「まどひ白きの神隠し」。
「そういえばさっきお父さんからメール来てたよ」
降雪量の多い淡原市に住む高乃巧斗は、両親を海外旅行に送り出し、現在は妹の椎凪と暮らしている。
その旅行は、結婚20年の節目としてプレゼントしたもの。
巧斗は以前からこつこつとバイトをして、さすがに旅行費用全額とはいかなかったものの、送り出すことはできた。
旅先から送ってくるメールを見る限り、とても楽しんでいる様子だ。
旅費を出さなかった代わりではないが、家事の多くは椎凪がやってくれている。
二人暮らしがうまくいっているのは、巧斗も椎凪も進学先を決めているのも大きいのかもしれなかった。
雪を踏みしめながら二人で一緒に帰宅し、買い物袋の中身を片付けていると、
椎凪は早速、和室のこたつに入っていた。
他愛ないやり取りをしていると、突然、巧斗に妙な気配がもたらされた。
声のような、物音のような……。
気配の元はどこかと探し、姿見を覗き込むと。
体験版は、1.46GBでした。
インストールが必要です。
SD原画は、流かさねさん。シナリオは、水瀬拓未さん、七央結日さん、御厨みくりさん、セロリさん、中島大河さん。
しかしクオリティ相変わらず高いのは、背景の凄さです。
意外に思ったのは、主人公達の自宅周辺の背景が複数あってすごいとおもいます。
橋は、何か特徴的な出会いや会話がなされる場として用いられそうだから必須だとしても、
自宅、商店街、橋、自宅以外の住宅が並ぶ路地。
これは、物語がどのような形で進行するか、プロットに応じたものだと思います。
それでも、路地がいくつも描かれるのはワクワクしますよね。
カミガミの往来から生まれる会話や、ヒロイン達と交わす会話があるのでしょう。
しかもこのクオリティです。すごいですよね、毎作。
なので、スタッフリストに公開されていないのは何だか寂しい気もします。
この背景が無ければ、物語の受け取り方が大分違ってしまったと思うのです。
さて。
鏡の向こう側にあった世界は、カミガミが住む両耶島。
建物などは、巧斗が住む御原を反映したもの。
そこに迷い込んでしまった巧斗たちは、カミガミからはマレビトと呼ばれるようですが、
巧斗たちの世界の言葉でいえば、神隠し。
幸いにして、出会ったカミガミが良いカミばかりで、
自宅でくつろいでいるところを神隠しに遭った巧斗と椎凪は、見知らぬ世界でサバイバル生活に陥ることなく、
元の世界に帰るまでの生活拠点を得ることができました。
そして1カ月後、次の満月に至る、というところまでが体験版の流れ。
……なのですが。
ちょっと気になっていたのは、ランプオブシュガーさんの狙い所。
グラフィックの強さを前面に押し出して、キャラクタをかわいらしく描き、
そのキャラクタからのアプローチでシーンに繋げる。
恐らくはこういう方式だと思うのです。
グラフィックは圧倒的な強さだと思いますし、それでいいとも思うのですが、
ヒロインからのアプローチが思ったよりも軽く思えてしまったのですね。
長い時間を過ごしてきている高井椎凪であれば分かるのです。
以前から好意的に思っていた兄の巧斗にアプローチする。
表面には出さなくても、心細かったのかも知れないとは想像できます。
嫌いでは無いですし、むしろありがたい展開ではあるのですが、
もうちょっとだけ何か見せてくれて、主人公の魅力が画面のこちらにも伝わると嬉しいかなと。
だって、こんなにきれいなヒロイン達なのですよ。
サブヒロインなのかもしれませんけれど、九尾の狐の化身、士御楠葉(花宮楓さん)。
このビジュアルで、この声で冗談めかして「男性の喜ぶことはいろいろと。……ふふっ」なんて笑われたら、期待をしてしまいませんか。
でも、誰でも相手をするわけではないはずです。九尾は大神でもあります。
このキャラクタデザイン、後れ毛で色気を増しているわけでしょう?わかります。良いと思います。
だからこそ、何か、理由が欲しいなと思ってしまうのですね。
こんな魅力的に見えるキャラクタなのだからと。
もう一つ。描写が少し弱いかなと思います。
鏡に士御ろかが映る場面。
巧斗は鏡に映ったことで混乱してしまい、自分が美少女になったのかなど、色々と考えます。
その混乱がそのままこちらにも伝わってしまって、場の把握が上手く出来ません。
巧斗は、土御ろかに尋ねる第一声を「どこから来たのか」とします。
鏡の中から出てきたことを問いません。何故でしょう。
巧斗の性格的に、見たままを尋ねてしまいそうですが。
巧斗は、走り出す土御ろかの手が鏡の中に入っていることに驚いています。
なのに声を掛けてきた椎凪の表情が目に入る。どういう状況でしょうか。
巧斗の常識を揺るがすような展開を差し置いて。
それと、椎凪の呼びかけ。
「にーさんっ」と2回呼びかけるのですが、異常事態と、呼びかけている声の調子が合っていないように思います。
1回目は事態の遠間からの注意喚起。
2回目は、袖を引っ張る呼び止めが近いでしょうか。地の文では、巧斗の身体に抱き付いて、鏡の中に取り込まれそうになっていくのを引き戻そうとするかのように記述されています。
ズレがあるように思うのです。
もしかしたら、収録以降にテキスト修正があったのかもしれませんが。
その場合でも、動きは変わらないでしょうから、声で動きを入れた方が良いですよね。
この場面、後に稲白みことに事情を話すのですが、6ワード程でスッキリまとめられる事態ではあります。
とすれば、最初の時点では、驚くときは驚くテンションで綴った方が良さそうだと思うのです。
異常事態で声も出ないわけではないし、異常事態でも冷静さを保つ巧斗でも無さそう。
さらにその後も、土御ろかのハンカチを借りることで事情説明ができるとするのですが。
読んでいて、そういうものかなと首を傾げてしまったり。
巧斗の混乱は続いていて、「お祭りでもあるのか?」と尋ねた、土御ろかの応答ともズレがあり、
尋ね正そうとしないまま先に進むのですが。
そもそも、土御ろかの耳や尻尾を尋ねないことも、良く分かりません。
気遣いが出来るタイプという演出なのでしょうか。
「こんな小さな子がウソをついているとは思えないし」。その気持ちは分かるけれど、ウソをつくことと現状の把握は別なはずです。
混乱を、意図して読んでいる側に与えているのなら良いのですが、何となく違う気がします。
巧斗は、両親に旅行をプレゼントするため、バイトを頑張っていました。
それなりの能力が無ければ、為せるものではありませんよね。
土御ろかに飴を振る舞う稲白みことを見て、空から振ってきたのでは無くイタズラをしたのだと、
巧斗は考えるわけですが。
これ、巧斗にしか稲白みことが見えていない場面のはず。
だとしたら、そのように何か演出したほうが良かったと思います。
巧斗だけが特別に見えているというように。
登場人物達の把握が違うと分かっていても、わざとらしくても画面上では彩る。
古典ですが、舞台の上の登場人物に対し、観客が気付いてないことを教えるようになるものですよね。
誰が分かっていて、誰が分かっていないのかを、画面のこちらには伝える演出が足りません。
ということで、場が良く分からなかったため、
巧斗に対してもあまり把握ができず、好意的にも思い切れない部分が生まれました。
鏡にもう一度入り込んでしまう時は再びSEを入れて、椎凪が抱き留めてきた時のSEも入れて。
稲白みことは立ち絵にフェイドアウトエフェクトをあてて。あるいはブラーを。
ユーザが見る視点を考えたテキストに仕立てて。
折角、別世界への移動を場に用いたのだから。
出て来るところだけでなく、入り込むところにも演出が欲しい。場を大事にして欲しいかなと。
さて、ヒロインは四人いるようですが、中でも九十九が面白いですね。
九十九千代(実羽ゆうきさん)
茶屋つくもの主人。
本質は付喪神の総体。道具であるとの自認からか、「私を使って」といってしまう。いわれた巧斗はどきっとしますよね。
茶屋の運営は、誰の手を借りずとも、食器や調理道具が自動的に動いてくれるため、指揮者のように振る舞うだけで良い。
そんな状態ではあるが、こちらの世界でバイトを探す巧斗を雇い入れる。ヒトに使われるのは気持ち良いらしいと知ってしまったため。
ろかを連れて商店街まで歩いた巧斗は、色々聞きたいことがあったのに引っ込めてしまうわけですが、
圧力があるわけではないけれど、ペースを巧斗側に持って行けなかったようです。
でもそれも分かるなと、2回プレイして感じました。
このビジュアルと、実羽ゆうきさんの声なら仕方ないかとも思えます。
神様なんてだいたい変態とのことですが、本作におけるカミガミはみんなそのように設定されています。
九十九千代が教えてくれた、帰るための四条件の一番目、帰りたいと思う気持ち。
ヒロイン達との交流によって、これが揺らぐほど魅力を与えてくれると良いですよね。
はじめてのおつかいに出た土御ろか(風花ましろさん)は、商店街でも可愛がられてオマケされっぱなし。
そしてそれを見守る一団。
これだけかわいらしかったら、オマケをしてしまうのも、見守るのもわかりますね。
2021年5月28日(金)発売予定です。
ダウンロード販売もあります。
あと、天狗の鞍馬憂架の声、音質が妙に悪いですね。
うーん。龍子さんの時にはそういうことは無かったと思うのですが。