Purple Softwareさんの「クナド国記」体験版プレイしました。

PurpleSoftwareさんの新作は、”破滅を回避した人類が文明を復興していく"再生と青春の物語"ADV”、
「クナド国記」。
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人類の命運を賭けた戦いは、100日前に、終わりました――。
夢で、そんな話を聞いた。

目が覚めると、認識より1000年後。
文明は衰退したのか、日本ではあるはずなのに、道路の一本もなく、車も、街灯や広告もない。
人々は狐面をかぶり、着物姿で、そして人々の営みの町並み向こうには、金属的な黒い山のような物体がある。

「ここはカントの国。あなたの知る世界から8887456時間、未来になります」
先程まで狐面をかぶっていた一人、春姫と名乗る女の子が、そう告げて……。
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体験版は、1.11GBでした。

企画・シナリオは、御影さん。
原画は、アサヒナヒカゲさん、克さん。
SD原画は、こもわた遙華さん。
背景デザインは、わいっしゅさん、彩雅介さん。
鉄鬼デザインは、鳥取砂丘さんです。

体験版は4時間ほどのプレイ時間があり、ボリュームとしてはなかなかのはず、ですが、
構成やシナリオ、テキストが巧みで、あっという間と感じました。
すごく面白かったです。

異色、そして意欲作といえるでしょう。
ファンタジー世界を舞台とした作品は、PurpleSoftwareさんでは初めて。
現代知識を持ったまま、文明の退廃した未来世界に移行しているため、
その世界を知っていく主人公の視点が、ユーザに近い綴られ方なのです。
読み進め易く、良いと思います。

また、体験版の作り方が今作も上手いですね。
ストーリーの見せ方は、「アオイトリ」に通じるものがあると感じました。

ですので、その視点で作品も見た方が良さそうです。
キャラクタ作品ではなくて、ストーリーを軸にしたもの。
一見、キャスティングは前作と変わりが無いように見えてしまいますが、
ストーリーを彩るためのキャスティング。

一番良かったのは。
春姫役、秋野花さんの演技が光っていたこと。
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「”希望”や”幸せ”って、なんですか?」
鉄鬼、金属機械生命体が発生し、人類は長い間その支配を受けていたが、
鉄鬼の中核たる一柱を葬った後の、カント国を治める統治者。

主人公を発見、信と名付け、自らが治めるカント国の中枢に組み入れる。
強権を振るっているのですが、そうとは感じさせないところが特徴。

使う力は言霊。
「吾は悪事も一言、善事も一言、言い離つ神」の祝詞と共に、聞く者に強制する力を放つ。
「わたしを認識できない」と他者に聞かせれば自らの存在が認識できなくなり、
「頭上の空気は重い」と放てば、その通りに重さで膝が折れそうになる。
信も言霊を使うことができるが、信の言霊をあっさり解除する力がある。
人類の脅威たる鉄鬼を、言霊を宿した拳で破砕するほどの言霊使い。

公平で優しいと、カントの民からは慕われている、ようですが。
信から見ると、春姫も脳筋王国の人。トラブルは殴って解決。
それでも文官寄りではあるのか、様々な施策を行って鉄鬼時代後を築こうとしている、ように見えます。

春姫に対する印象は、戦が終わった後の世界で平定を考え、新たな存在すら国に組み入れて、
新しい時代を作ろうとしている為政者を目指す……かのように見えたと思います。
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しかし実は、狂人。
何かのためなら、有る全てを賭けてしまうタイプ。
自分の命は当然に、周囲の命、そしてカント国そのものを賭けている可能性があります。

国のため、人のためを口にしつつ、しかし人民が犠牲になることを全く厭わない。
そんな策を弄します。
後半、未来に組み入れて良いのか判断するために、町中に鉄鬼を呼び寄せ、暴れさせるのです。
春姫の考えでは、10人町人が失うことを計算の上での策。
この騒動で、町に被害が出ています。
鉄鬼対策で人口は制限されているはずなのに。貴重な人民の筈なのに。
信を追い詰めるためなら被害が出ても良いと考えているのです。
その騒動の近くで、親交のある服飾人の染が産気づいていることからもいえるでしょう。

そんな存在が権力を持ってしまった。それがカントの不幸であり、幸せでもあるように思えます。

この性根を明かす後半の演技がなかなか良いのですが、
生態をみせる後半のために、前半の落ち着いた演技があったのだなと感じます。

果たして、春姫は夏姫をどう思っているのか。
ここに何らかの衝動がありそうな気がします。

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夏姫(小倉結衣さん)は、春姫の姉。
言霊の力は、春姫よりも、英雄たる姉の夏姫のほうが強く、
その力を以て、数十メートルはある鉄鬼の”黒神”を倒し、カントに平和をもたらしている。
英雄として讃えられ、しかし現在は存在が不明。
現場状況からは、生きてはいないと判断されている。

しかし。
コールドスリープから目覚める過程で信にアクセスし、言霊の力を与え、
そして鉄鬼とも意思疎通を行っている。
信がどんな存在であるのかを理解しながら、カント国に送り出している。

このことから、春姫と夏姫は対立する立ち位置にいることが分かります。
春姫と夏姫の最終目標は同じ、”世界に希望や幸せを生みだす”こと。
そう考えると、同じ目標でも過程が違うことが伺えます。
つまり、互いに、そういう手段は取らない。そんな違いが見られるのかも知れません。
あるいは、言霊の力をぶつけあうことも。

ここまで圧巻でした。
その渦中に居る1000年前の存在、信と名付けられたものは、どうなるのか。
どんな希望と幸せを、カントの民に示すのか。
楽しみです。
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気になることが3点あります。

音声が一部割れていて、音質が悪いこと。
音が割れていることの何がいけないか。
確実にいえるのは、聞いている人の耳が痛くなる、よりも。
否応にも、マイクを通して聞いている音だと、セリフを聞く度に教え込むことになるからです。
没入感という面で、明らかにマイナスですよね。

物語は、キャラクタのリアリティ、キャラクタがそこにいるという存在感を、雰囲気として感じられるように腐心しています。
背景にこだわるのはその理由でしょうし、表情差分が豊富になるのも同じでしょう。
タイミングを合わせてスクリプトを組むのもそうですし、そのために音楽は雰囲気を感じられるBGMが作曲され、
SEなどを入れるのは、場の雰囲気をなおも伝えようとするためでしょう。
声優さんの演技は、キャラクタの明快な感情だけでなく、ニュアンスすら伝えようと声色に込めて演技されるのです。
声優さんの演技力は向上し続けていると思います。

でも、マイク越しに喋ってるんだなと感じてしまうと、画面から意識を離してしまいますよね。
本当にもったいないと思います。
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例えば、優里。
命令だからと気負っている部分と、どうしても好意的に見ることができない信に対し、表情を固くして信に接する。
それでも、得るものがある。
読み書きを習い、最初に学んだのは、優里という自分の名前。
「……優里」
テキストだとこの通りですが、音で聞けば自分で書けたという喜びが、
地の文には書かれていませんが、これが自分の名前なのだと、書けた文字を掲げて見ているような、音として聞こえる。
これが演技です。音が割れていないからこそ、セリフとして感じることできるのです。

2点目。
本当にアサヒナヒカゲさんが原画を担当しているのかなと感じてしまったこと。
彩色が違うから、そのように思うのでしょう。

アサヒナヒカゲさんがご自身で仕上げまで行われたであろうイラストをみると、線の強弱から色使いまで違うのですよね。
線は優しいのに、表情は柔らかくかわいらしいのに、肉体のボリュームを感じる。
アンバランスさは無く、一体感がある。
質感や皺をきれいに描きつつ、光源を大事にした上で明るい彩色を施している。

体験版の画面を見ると、アサヒナヒカゲさんの線画の良さが埋没してしまっているように思います。
立ち絵も、イベントCGも。
収録されているシーンCGでも、肌がそもそも違う。質感が違って見える。

公式サイト店舗特典のページ、最下部に紹介されている、
オフィシャル通販特典の描き下ろしB2Wスエードタペストリーは、アサヒナヒカゲさんによる彩色だそうです。

一方で、げっちゅ屋店舗特典は、克さん担当の葵のタペストリー。こちらはこの彩色で合っていますよね。

つまり、ブランド従来通りの彩色を行い、原画家さんに合わせた彩色適応をさせていないので、
一方では良さが減じ、一方ではバッチリ、それらが同居した画面になっているのだと思います。
ちょっともったいないなと思うのです。

こういう時、彩色をお願いするか、どちらも活かせそうな指定にすると思うのですが。

体毛についても、そうは描かないのではないか、もっと変化をつけて描くのではと思うのです。


3点目。
公式サイトの作り方にも工夫が欲しいところです。
恐らく一番見られているのは、インタビューではないのでしょうか。
そこを推した構造にしても良いと思うのです。
ここ数作のサイトで続いているインタビュー。良いですよね。
一番読みたい場所になっているはずです。
また、このサイト構造は、何の媒体で見ることを意識したデザインなのか分からないのです。
PCでは無さそうですが。タブレットなのか、その割には重たいですし。

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インタビューによれば、
学園要素やバイトなどの日常ローテーションがほぼ存在しない
ここを、意欲的だなと特に感じました。
学び舎を興そうとはするのですが、参加した八剣がいうように、「会議のようだ」。
ここが面白いポイントですよね。

食欲旺盛な春姫に、信が伝えた「どんなときに、誰と一緒に口にしたかで、ぜんぜん味が変わる」。
果たして、そんな瞬間を与えることができるのでしょうか。

2021年12月24日(金)発売予定です。

ダウンロード販売もあります。

また、同日にビジュアルファンブックも発売されます。
A4サイズ100ページ越えになるのだそうです。