Nomadさんの「淫烙の巫女」感想です。

2007年発売作品。

Nomadさんの「淫烙の巫女」は……。

伝説の白鬼丸が封じられた大岩。
大掛かりな橋梁工事で、それが壊されてしまった。

封印が解かれる場にいたのは、岩淵健。

彼の父、岩淵剛蔵は、工事を進める経営者。
橋が架かることで得られる利益を目論み、封印された妖怪のことなど無視して工事を進めていたため、
歴史ある滝沢家の巫女、滝沢遥が祠の移設をするまで、工事を待ってもらおうと現場に頼みに出ていたのだ。

岩淵健は、滝沢遥のことを慕っていたから。

白鬼丸は、岩淵健に乗り移る。
過去の白鬼丸の強靱な肉体と違い、岩淵健は明らかに見劣りする。
封印が解かれた余波が僅かな周囲に影響を出す程度で、いまの白鬼丸には力が失われていた。
このまま当代の巫女と戦っては、再び封印されてしまいかねない。

だが、白鬼丸に幸運が訪れる。
「こ、これ……何があったの、健おにいちゃん……」
岩淵健となった白鬼丸に声をかけたのは、滝沢陽菜。
当代の巫女、滝沢遥の妹。そして、岩淵健は気づかなかったようだが、陽菜は健に惚れている。

岩淵健の状態でも使える眼力を用いて、陽菜の感情にのせてしまえば……。
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それでは、感想です。
少しネタバレがあります。


なるほど。すごい作品です。

この作品、根強い人気を持つのですよね。
設定を引き継いだ作品が作られたのは、人気が理由と思われます。

10年も前の作品のはずですが、そこまで古びていない、
いまプレイして楽しめる内容になっています。

まず金目鯛ぴんくさんの原画が良いのでしょうね。
800×600と、当時の画面サイズのままなのですが、デザインが良く、彩色も当時の上級クラスなのでしょう。
画面を見ていてわからないところがないのもいいですね。
CGは全てシーンビジュアル。ダイナミックに描かれています。

システムやコンフィグはかなり古く感じてしまいます。
しかし、びっくりしたのが音声。
いわゆるBGVがあります。さらに、音声が左右振り分けされているのです。

滝沢家の3人の巫女が白鬼丸のターゲットなのですが、
岩淵健となった白鬼丸は、体格なども変わっていくようです。
ビジュアル上では大男に類されそうな好色漢の岩淵剛造と張り合うほど。
3人同時に相手をすることもあります。
その場合に、左右振り分けがなされています。聞いていて驚きました。


責め方の巧さは、後の作品「今夜、お義父様に抱かれます…」に引き継がれているなと感じています。
過去、身を挺して封印した巫女の血筋。
白鬼丸が有利だったのは、封印が壊れ乗り移った相手が、岩淵健だったこと。

封印の巫女の末裔たちが、好意を向ける相手だったこと。

気配を抑え岩淵健を装い、巫女として力の弱い滝沢陽菜を手中に収める。
次に、母の滝沢美咲を。
そして、二人に異変が起きたことで警戒する滝沢遥を、警戒を解きやすい岩淵健の姿で近づき籠絡したこと。

この固め方。上手いなと感心してしまいました。

当代の巫女こと滝沢遙は、性格的にも生真面目で、一度では折れません。
岩淵健を取り戻そうとさえします。

しかしここでまた責め方が巧い。
最初に堕とし、従順になった滝沢陽菜を使い、白鬼丸の代わりに責めさせたりします。
滝沢陽菜は白鬼丸のいうことなら何でも聞くようになっており、
自分以外の誰かの相手をしろといわれたら、ためらわないほど。
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滝沢陽菜は、登場した当時の印象のまま。
少し引っ込み思案なところはありつつ、それが妖しさを備えるとこうなる。
そんな演技を、滝沢陽菜役の金田まひるさんがしてくれています。

裏をかくべく、術で作った分身の陽菜が、母の滝沢美咲を誘い出すところなど、
無邪気に笑って応じている場面があります。
その後のシーンでも笑うのですが、していることがすっかり堕ちていて、アンバランスさに妖しい魅力があります。

誘い出されてしまった滝沢美咲は、岩淵剛造に宣言されます。
「儂こそが相手になるべきなのだ」
滝沢美咲は未亡人。
そして岩淵剛造の妻は、滝沢美咲の妹という関係性。
責められながら、妹がどんなふうであったかを聞かされ、姉妹で似ているところもあるのか、剛造に反応してしまいます。
執拗で豪快な責めと、力関係を教え込むやり方。
もちろん、白鬼丸に精力を分け与えられたからこそできる。

次第に狂うと妖しく華開く美咲。
もう完全に身体を開いてしまっている、けれど親として娘を守ろうとするところ。
でも、あれだけ迫られても許さなかった身を、岩淵剛造に……。
次第に、言うこととやることが正反対になっていく。
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楠鈴音さんがいい演技をしてくれています。
後半、白鬼丸がある芽を仕込み、その衝動で狂ってしまいそうな、泣き笑いのような声をあげますが、
すごい演技です。

そして、滝沢遙も誘い出されて。
当然ながら助けようとするのです。母の美咲を、妹の陽菜を。

しかしそこで見せ付けられてしまいます。
逃げようとも、以前の母だったらあしらっていたはずの相手、剛蔵に組み敷かれている。
それだけでなく、母が応じている。その姿から目を放すことができない……。

それでも逆転の機とみるや、過去の巫女がそうしたように、その身で封じようとする。
諦めない。
ところが、そこでも白鬼丸は岩淵健を装う。装うことで精神を折っていく。
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白鬼丸と巫女。
最初から決定的に負けはないけれど、振り返ると勝ちの目はない戦い。

その後も、変わった術を施され、妙に渇きを覚えたり、
ある程度はゆとりをもたせた責めであるかのように誘い、
あと一押しのところでは人質をちらつかせ、行為に同意させていく。
繰り返し、繰り返し責め、そしてさらに責めていく。

とにかく責めが丁寧で、堪能しました。
滝沢遙が、簡単に堕とされるわけではないところがいいですね。
簡単ではないから、周囲を執拗に責め上げていくのです。

責め全般がそうですが、少しずつ少しずつ責めて、譲歩させていく。
今度はこれ、次はこう。これがいいのでしょうね。

テキストの地の文がわかりやすく、しっかりもしていて、良かったと思います。