ASaProjectさんの「フタマタ恋愛」体験版プレイしました。

Asa projectさんの新作は、「フタマタ恋愛」。
「好きだ、信田」
「うん、おはよ~古賀くん」
大学二年生の古賀凪青は、いつも通り信田結愛に告白し、挨拶を返される。
信田結愛はミス碧海大で学年主席。ほどよく愛嬌もあると評判。でも。
「好きにおはようって返すのはおかしくね?」
「悪いことは言わないからヤツだけはやめておけ」愚痴をこぼしても、女好きの悪友すら古賀凪青に忠告するくらいの相手だ。
そして悪友は、高嶺の花に恋なのかもわからない好意を抱く古賀凪青を、合コンに誘ってきた。
「ところであなた、半分目開いてないけど大丈夫? 眠いの?」
いつも通り寝不足で疲れていたが、悪友がつけたタダメシに惹かれて合コンへ行って見ると、
泣き顔がきっと可愛いだろう子がいた。
眠さも手伝い適当に相手をしていたら、その子はお酒に弱かったようだ。
二杯で、でろんでろんになっていた。
眠さの上に腹が満たされ、古賀凪青のほうも意識が途切れそうになる。
誰かに任せたかったが、その子は一人で来ているという。
悪友も面倒がってフォローしなかった。
そしてその子を背負っていた。
店に置いてきてもよかったはずだが、頭が完全に回っていない。
「ねえ。……ギモヂワルイ」
「は?」
盛大にゲロられ、さすがに限界を感じて目の前のラブホに入る。
そして意識を無くした。
「じゃあそういうワケで……これからヨロシク」
誤解されるような状況で責任を求められ、何故か付き合うことになった。
経緯はともあれ、可愛い子とお近づきになれるのならば願ったり。
しかし名前も交わさずに別れてしまっていた。
その日、珍しく眠気を漂わせていない古賀凪青が、信田結愛への告白を躊躇してしまったのは、
ゲロられた女の子に義理立てしたのかもしれない。
しかし古賀凪青は、何故か信田結愛に呼び出され、行ってみると。
「君と付き合ってあげよう! 喜びたまえよ、古賀くんっ?」――。
体験版は、1.32GBでした。
ディレクションは、天都さん。
原画は、冬壱もんめさん、結城リカさん、夕凪セシナさん。
シナリオは、八日なのかさん。
システムは、吉里吉里Zです。
画面サイズから960×540が無くなっています。
代わりにフルHDサイズ1920×1080が登場しています。
今作のタイトルは「フタマタ恋愛」ですが。
蓋をあけてみると、ブランド作品一といっていいほど、恋愛にナイーブなキャラクタたちの物語でした。
愛を信じていない。恋を知らない。そんなキャラクタばかりです。そのため、体験版ではこれまでのAsa projectテイストが少し隠れているように見えます。
ドタバタラブコメではなく、まるでキャラクタの物語のような。
しかし恐らく問題無いでしょう。
重たく描く前に引く。そういう志向があるのは間違いが無いです。
というのも、タイトルは「フタマタ恋愛」ですが、
二人のキャラクタとは、付き合っているといえない状態だからです。

「……ねえ、怖い夢でも見ているの?」
十色煌(東雲りあさん)
留学生。
友だちを作ろうと頑張って合コンに参加するが、誰とも仲良くなれず、
眠そうに一人で食事をしていた古賀凪青と知り合う。
同じ留学生仲間のレイラからも、お酒に弱いから注意するよういわれてるが、
うっかりお酒を飲んでしまう。
吐瀉物を自分と古賀凪青にぶちまけ、ホテルへ。
介助されるようなことにもなり、下着すら丁寧に洗われてしまう。
古賀凪青は何もしていなかったわけですが、気になることがあったので、強引に約束を取り付けたのです。
それは。
古賀凪青が、寝ながら苦しみ、泣いていたから。
襲ってきたわけでもない。この人は一体何だろう。そう思ってしまったのです。
目のクマがひどく、合コンの場でもずっと半目だった。
普段はどんな生活をしているのかと。
恋が何かを知らない女の子。
口では色々とあれこれいってるけれども、本気ではないのです。……まだ。
根は素直で優しい子で、その分だけ不憫なことになりそうな気がします。
縁があり、古賀凪青と同じ寮に入り、レイラと暮らすことに。
タコ焼き大好き。タコ焼きに振りかけられた鰹節を生きているのかと聞いてしまうくらい魅了されています。

「私はそんなに好きじゃないよ、古賀凪青くん」
信田結愛(春乃いろはさん)
才色兼備で振る舞いも明るく、誰もが羨む人気者……、とキャラクタ紹介には書かれていますが。
まだあまり、高嶺の花として描かれる場が無いので、
どちらかといえば圧を感じさせる、周囲から女王のように扱われている場面がちらほら。
誰も歯向かえない。友人でさえ、誰も。
絶対権力。
言葉巧みに言い負かすだけでなく、自分の立ち位置をずらそうともしません。
出会いは、過去。
逃亡するように海辺に訪れた古賀凪青が、静かに涙を流す信田結愛を見つけてしまったこと。
古賀凪青は涙から逃げてきたのに、また涙を見つけてしまったことで、嘆きます。
「女なら泣けば優しくされると思ってんじゃねえぞ」
この時は、罵倒すらしてみせたのです。
そして大学生となったいま。
ある意味、頑なになってしまったのでしょうね。
あの浜辺の信田結愛は、泣いていることを誤魔化したくらいだったのに。
そう、いまの信田結愛は、愛を信じていません。
古賀凪青へ付き合うと言いだしたのも、愛を信じていないことを確認するためのよう。
「結局、信じたいだけなんだよ」
ほら、やっぱり。がっかりするための確認手続きのように。
何があって。そこまで、信じなくなってしまったのでしょうか。
信じたいと、まだ思っているとしても。
年の離れた妹がおり、そちらはとても人から愛されやすい。
妹の真愛(鳴瀬なごみさん)すら、結愛のことを心配しています。
セーブするときの「セーブするんだ~?」ボイスがすごく、いいですね。
「ふぅん、そういう感じになったのね」
御子柴瑠衣(夏峰いろはさん)
同じ大学の学生。
外見はかわいらしいが、口を開くと攻撃的。飲み会でも不思議と一人でいたりします。
SNS活動もしており、フォロワー数が多いコスプレイヤー。歩行者天国ではコスプレに駆り出されることも。
過去、信田結愛と何かがあったようで、未だにつけ回しては隙を見つけようとしています。
信田結愛にこだわっていることは周囲に知られてもいます。
そんな御子柴瑠衣ですが、信田結愛が古賀凪青と付き合うと宣言する場を見つけてしまい、
これは面白くなりそうだと介入します。
ただ、残念ながら、完全に事態の外側。
認識されてはいるでしょうが、信田結愛から相手にされているようには思えません。
また、古賀凪青が事態のことをきちんと話したのならば、二股クズ野郎とは呼ばないはず。そう呼んでしまうあたりに隙があります。
攻撃的な印象ですが、恐らくこれもまた、マイルドな憎めないキャラクタになっていることでしょう。
体験版では見せていませんが、面倒見が良いとのこと。
妹の瑠奈(飴川紫乃さん)は、わかりやすいギャル。
瑠奈は、信田結愛、信田真愛ともに仲が良い様子。

「凪青はこのままでいい」
海野宮子(森谷こころさん)
古賀凪青と一緒に、岸なごみ(御苑生メイさん)が管理する寮に拾われる。
寮生活では、気づけば古賀凪青の隣に座っていて、でも構うと鬱陶しがる。
一緒に大学へ通い、一緒の塾で講師のバイトをし、一緒に帰る。
付き合っていると間違われることもあるが、そういう感情はない。
同じ環境にいた、サバイバーの印象。
過去がフラッシュバックするのか、泣きながら古賀凪青のベッドに入り込んでくることもあります。
また、昔から、古賀凪青のことをずっと隣で見てきたのでしょう。
信田結愛との間を取り持とうと、少し声をかけたり、信田結愛の妹の信田真愛を紹介したり。
まるで、懐いた相手には食べ物をお裾分けしてくる猫のようです。
古賀凪青が他の誰かと付き合ったとして、海野宮子は距離感さえ変わらなければいいと考えています。
でも、本当にそうなるでしょうか。
何より、ホテルで寝込んだ古賀凪青が泣きながら呼んだのは、海野宮子の名前でした。
キャラクタの年齢設定は大学生ですが、過去作品の登場キャラクタと同じように接していけそうです。
もっと緊張感を持たせるなら、十色煌とのホテルの件は、もう少し誤解を招きそうなものでもよかったと思います。
Asa projectさんは、ヒロインキャラクタを選ぶ余地を残そうとしているのだと思いますが、気を遣い過ぎているし、もう少し広げてもコメディに幅が産まれそうな気もします。
でも。
ホテルの場の出来事は、印象的な展開になったと思います。
十色煌の存在に可能性を感じました。
古賀凪青は、あの涙の理由が知りたくて、それに惹かれています。
告白をはじめたのは、告白された側の信田結愛が正しく見抜いているように見えます。
つまり、挨拶。
挨拶には色々な意味があります。古賀凪青の場合は、信田結愛への心配ではないでしょうか。
そして、あの時のことが気になっているけれど、聞いてもきっと答えが貰えないことも気づいている。
泣き顔はイヤだと思いながら、泣き顔嗜好になってしまっているあたり、
不幸な性癖を植え付けられたものだとは、思います。
あの浜辺の信田結愛が、印象深かったのは間違いないのでしょう。
そして、古賀凪青は、誰かと積極的に恋愛関係を築こうとしていない。
例えば十色煌を見てかわいいとは思うも、感情が伴うものでは無い。恋ではないようなのです。
「俺は海が見たかっただけなのにな」
あの体験版の終わり方。
信田結愛の涙の理由、海野宮子の距離感の理由。童貞ではない古賀凪青の不眠の理由。
少なくともこれらに決着をつけないと、肩すかしになってしまうこともあると思います。
そこで、十色煌との関わり。
「大丈夫、大丈夫だから」
あのホテルで、自分の格好や場所に驚きながらも、十色煌は泣いている古賀凪青の頭を優しく撫でてしまっていたのです。
十色煌の性質は、とても素直。
そして、ヒロイン達の中で唯一、過去に囚われたりしていません。
疵が無いのです。
十色煌がいたから事態が動いた。
留学がなければ。お酒に酔わなければ。
古賀凪青は、いつも通りに信田結愛に挨拶をし、海野宮子と暮らし、
岸なごみの進路を参考にし、及川耀と風呂に入って話し合う生活のまま、だったかもしれません。
古賀凪青の人生において、最大の貢献者となったように見えます。
この後も、その素直な反応だけで、事態を動かしていく可能性があります。
……でも、十色煌はきっと、後から恋に気づくタイプ。
誰よりも後から。
そんな予感を抱いています。
2022年4月28日(木)発売予定です。
ダウンロード販売もあります。
ちょっと気になったのは、今作にはたかへろさんのSDイラストは入らないのでしょうか。
#追記
たかへろさんのSDイラスト、公式サイトに掲載されました。良かったです。
それと、冬壱もんめさん描き下ろしの煌タペストリーも販売される模様です。
こちらもいいですね。