映画「ゆるキャン△」感想です。
「大人になって色んなキャンプ、またみんなでやりたいな」
野クルメンバーみんなで意気投合し、突然に集まることにしたのですが、
計画が持ち上がる時には、職場に根回しまでする。
2022年7月公開作品。
富士山を照らすように打ち上がる花火を見上げながらつぶやいたその日から、暫く。
野外活動サークルで過ごした季節が過ぎ、彼女たちはそれぞれの進路を選んでいた。
斉藤恵那は横浜でペットサロンのトリマーとして。
犬山あおいは山梨で小学校教員として。
各務原なでしこは東京でアウトドア洋品店員として。
志摩リンは名古屋で編集者として。
メッセージアプリで繋がっては居る、けれど時間が合わず一緒にキャンプなどは行えていなかった。
久しぶりに土日が休みとなった志摩リンが、キャンプに行こうかとタブレットを眺めていると、メッセージが届く。
「名古屋にいるんだが」
大垣千明からだった。
大垣千明からだった。
居酒屋で会うと、手羽先を食べジョッキでビールを飲みながら話を切り出す大垣千明。
大垣千明は、東京のイベント会社を辞め、山梨で観光推進機構に勤めていた。
いまは、山梨県南巨摩郡富士川町高下地区の再開発を担っているという。
「やるっつっても何すんの?って話じゃん?」
数年前までは人がいたが、いまは廃墟同然となった建物や、大きな鳥籠の跡が残るだけだという。
「そんなに広い敷地なら、キャンプ場にでもすればいいじゃん」
面倒くさい酔い方をしている大垣千明に、志摩リンが言うと。
「志摩隊員! その話、ちょっと詳しく聞かせてくれたまえーっ!」大声と共に立ち上がると、大垣千明は志摩リンを連れ、高下へ……。
素晴らしく良かったです。
予告映像でも、配給の松竹の映像が映りますよね。
映画ですから冒頭にこれが表示されるのですが、
映画「ゆるキャン△」では、この松竹の富士山が、そのまま野外活動サークルのメンバーがキャンプしている場所から見ている富士山に遷移するのです。
これは上手いですよね。
「ゆるキャン△」にとって、富士山は特別な存在。
ああ、また彼らは富士山の見える場所でキャンプしているのだなと、感慨を抱くのです。
今作は、野外活動サークルのメンバーが大人になってからのお話。
京極義昭監督によれば、原作のストックがない頃に企画が持ち上がったのか、オリジナルで考えようとしてのことのようです。
1期12話で、各務原なでしこが想像していた、大人になった野クルメンバー。その場面がアイディアの元になったとも。
仲は良い。けれどそれぞれ生活があってやることがあるから、一緒の時間が過ごせない。
そんな現在から、一緒の場所へ。
動き出すのは大垣千明。
実は既にキャンプ場にする計画を掛け合っていたのです。
観光推進機構の中にいながら、手続を進めている。
きちんとした想いがあって、でも口に出すのは、ストレートなようでストレートになりきれない気持ち。
「まあ、ここが好きなのかもな」
大人になった大垣千明のキャラクタデザインも素敵で良いと思います。
さらにかわいく成長したなと感じました。
基本的には野クル時代と同じ。テンションもノリもそのまま。
やりたいと言っては走り出す。
……そして、大人になったのでしょうか。犬山あおいに気を遣っている場面がとても良かったですね。
山梨地元の人と仲良くなっていたりとか。
犬山あおいも、そのままでした。
小学校教員として子供に接している姿が、野クルメンバーや妹の犬山あかりに接している時とつながる。
鷹揚な姿勢でも一緒に関わっている、あの感覚。
最初から、隣に居るお姉さんの感じ。
いまは土曜日も仕事に出ながら、あの緩やかな印象のまま。
その後の展開から、仕事が好き、仕事の場が好きなことが伺えます。
野クルメンバーみんなで意気投合し、突然に集まることにしたのですが、
突然の誘いでは動けないこともある。
斉藤恵那は土曜日も仕事。横浜という距離もあれば、誘いにごめんねとメッセージを返す。
斉藤恵那は野クルにも後から加わった、全体を観る視点を持つタイプ。
その視線は、いまはトリマーとして預かる犬たちと、老いが感じられる愛犬ちくわに向けられています。
「ゆっくり行こうね~」
こんなに大人な接し方ができてしまう。
そして、志摩リン。
大人になった志摩リンは、
きちんと会社勤めをしていること。
上司がいて、その上の上司がいて。転属経験があって、
忙しいけれど仕事には真面目に過ごしている。
ソロキャンプが好きだったことは変わらず、人と接しないわけでは無いから、
計画が持ち上がる時には、職場に根回しまでする。
周囲からのフォローに気づけば、自分の責任は果たそうとする。
みんな、変わっていっている。
大人の姿を見せられること。
彼女たちのキャンプの時間が終わったように思えて、寂しく思えた部分がありましたが……。
大垣千明の号令で、高下に集まったみんなが、手作りでキャンプ場を造る。
みんなでやるのは面白そう。
アイディアも持ち込んで。それぞれが好きなことが出来そうなキャンプ場へ。
いつもはやらないことも、みんなと進めていけば。
地元の人達と繋がって。仕事にも反映される部分があって。
きっとみんなでやっていることと、人生が上向きになることと、肯定的に思えていた瞬間でしょうね。
映像的には、季節の移り変わり。
各務原なでしこが住んでいるのは、東京都昭島市のようですが、富士山が見えるアパートに住んでいるようです。
基本は自転車通勤なのか、川沿いをメットスタイルで疾走していく。
コートを着込んで通勤電車。ふたつ乗り継いで名古屋へ。
営業として入社したのでしょうか。いまは転属してしゃちほこ出版編集部にいるというのに、朝一番に来て、一番最後までいることが多いようです。
でも服装はしっかりしていて。疲れてはソファで寝てしまうことも。
年越しだからと選んだのだろう、まじうま蕎麦がなんともリンらしい。
そして、リンの母、咲が送ってくれた非常食。
ドラマがありました。
実際に手を動かし、やるからこそ直面すること。
一緒にできると思ったから、再開の連絡かと着信に飛びつく。
不測の事態で。何をしたら良いのか分からなくて。
でも、また。
顔を合わせて、一緒に過ごすことで、もう一度を。
強い気持ちがあるから、もう一度と。
人に伝えることで、人に伝えることが良いことだと実感できたから。
なでしこが来店した初心者に提案するように。
リンが祖父のバイクを受け継いだように。
恵那が違いを認めて手を当て続けているように。
あおいが何かを伝える立場を選んだように。
千晶が何かをできる場所を預かったように。
小学校に桜が咲き、けれど校門に掛かるのは終業式ではなく。
冬から春。雨を超えて夏。そして秋へ。
それぞれの場所と、高下との季節を表した映像は、とても良かったと思っています。
そうそう。
キャンプの時間は終わってしまったのか。
そのことに対する答えも、きちんとされていました。
想像していた大人と、いまの自分たちは違う。
思ったより大人じゃ無い。周りに支えられていたり、責任があったり。
何でもは、できない。
「でも、今だからできることがあるよね」――。
尺、2時間あったのですよね。
でもその長さを感じさせず。素敵な映画に仕上がっていました。
あと1回は、見に行きたいな。
登場した、日本最高峰の温泉こと本沢温泉。
公開中の映画ゆるキャン△に湯元本沢温泉が登場♨️
皆さまの聖地巡礼をお待ちしております!
とのこと。
高下では、ダイヤモンド富士が見られるそうです。
状況が落ち着いたら、行ってみたい場所ですね。
佐々木恵梨さんの歌う『ミモザ』。
エンディングで、これが「ゆるキャン△」の終わりかなと感じさせる曲になっています。
「それじゃ、またね」