ORTHROS Softさんの「ツヴァイトリガー」体験版プレイしました。

オルトロスさんのデビュー作は、「ツヴァイトリガー」。

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十年前から開発が加速して、あっという間に都会になった。
でも、来栖雄馬の時間は止まっていると感じる。

十年前、お姉ちゃんがいなくなった。
その日は、幼馴染みの水瀬由那と三人でサッカーボールを蹴り合っていた。
単調なパス回し。
雄馬が変な方向に蹴ってしまったのを、お姉ちゃんは笑いかけて、逸れたボールを追っていった。
そして、消えた。
忽然と。唐突に。
わけがわからず探したけれど、お姉ちゃんは見つからなかった。

それから十年、毎日。いなくなった神社へ訪れている。
ここに来ても虚しくなるだけだ……と今日も思ったその時。
「は?」
空の色が一変した。
周囲には光の群れが舞い、よく知る住宅街のはずが、どの家にも光はついておらず……。
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体験版は、848MBでした。

原画は、トモゼロさん。
シナリオは、かずきふみさん。
背景デザインは、三好奈緒さん。
Live2Dモーション制作チームは、ばいたるらぶさん。

システムは吉里吉里Zです。
テキストウィンドウに特徴があり、作品に沿ったUI設計をされているのがわかります。
原因不明な行方不明の姉の捜索という、サスペンス寄りの物語であるため、
テキストにデザインしたキャラクタ名を表示させるのは、すごく良いですね。

SEもリッチで、鍵を開ける音なども面白いです。


さて、今回は導入体験版です。

異界に入り込んでしまい、十年見つからなかった姉と再会、
しかし謎の存在に襲われ、また姉は元の世界に戻る扉を通ることができない。
姉を助けるため、調査をしていた怪しい組織の手を借りる……といった流れです。

長い間、姉代わりが消えてしまったことに囚われていた来栖雄馬の心情と、
異界の異様な雰囲気の表現がなかなか良いです。
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異界は、闇のパレード中とも思えるような背景ビジュアルで、
すごくいい表現だと思います。
この背景は今後も使われていくでしょう。コンセプトも継承されるはずです。

その異界に現れる謎の存在は、非常にゆったりした動きですが、強い力。
出くわした来栖雄馬は、思いきり投げ飛ばされてしまいます。

また、女を見掛けると走って追いかけてくることから、
女を必要としているのかもしれません。何らかの理由で。
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気になるのは、納得できるだけの密度のある作品になっているのかどうか。
少し、不安を感じます。

例えばですが。
導入を早めるためか、早い段階で秋月かなめと再会させただけでなく、
本当に秋月かなめだと、正体を明かすまでが早かったこと。

導入パートにおける来栖雄馬の歩みが、正解しか通っていないこと。

異界、怪物、それを知り調査をする団体と、舞台は広く感じますが、
本作で完結させるには、キャラクタの数が足りないと思います。

ここまでは、面白そうな要素ばかりなので、期待が故です。


少し納得していないのは、キャスティングです。
キャラクタに合わせていないように思えてしまったのです。
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この場面は、来栖雄馬の日常にとって大事な場面です。

しかし、何というか、声優さん生来の生真面目さが出てしまっているように思うのですよね。
これはもう、声質の問題ですので変えようが無い。
声質を活かせるキャラクタに割り当てなかったのはどうしてなのでしょう。
そのため、会話の盛り上がりに欠ける。

この場面は、ワード数が多くない。でも大切な場面だと感じます。
ここは、退屈だと思ってる来栖雄馬の日常が、そんなに捨てたものでもなく。
その日常を支えているのが、この水瀬由那であるという、陽の部分を描き出す場面ですよね。
ここが仄かに明るいから、異界の暗さが映えるはずなのです。
もしかしたら、エンディングへ続く大事な場面かも知れませんよね。
もったいないです。

水瀬由那は、来栖雄馬のことによく気がついて、気にしてくれているキャラクタに思います。
夕食を一緒に取ろうとしたり、おかしいと思ったら後を付けてみたり。
十年、気にかけてくれていたキャラクタだと思うのですよね。
だからきっと、来栖雄馬が秋月かなめのことしか見ていないこともわかっているはず……。

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一方で、異界の中では時間の流れが非常に緩やからしく、
十年経過しているとは気づかなかった秋月かなめ。

刀を振るい、怪物と戦うことができる技術は、その長い間に身につけたものなのでしょう。
ただし、戦闘に有利となる特殊能力があるわけではなさそうで、
登場時にも刀を折ってしまい撃退しそびれます。
生来の頭の良さなどがあるのでしょう、戦っても勝てないとわかったら潔く撤退する判断力を持ち合わせていますし、
怪物の行動パターンなども見抜いて、これまで生き延びたようです。

幾人もの迷い人を送り返し、しかし自分は還ることができずに。

その間、現実の世界では、残念ながら秋月かなめの両親は捜索を諦めたのか転居してしまっています。
十年の重みがありますね。

身体は成長しておらず、しかし衣服はダメージを負っている。
秋月かなめは、この異界において不死性を持つようですが、後天的なものということでしょうか。
救うことを目的とした場合、死と二者択一になってしまっていないでしょうか……。

また、冒頭のビジュアルから、今の日本とは違う建物構造が見受けられます。
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異界は、ある程度は現実世界の変化を反映するようです。
現実の世界で建築が行われると、異界にも建つ。
しかし、建物の外観が露骨に変化する。

危険しかないような場ですが、その異界を神域と呼び、
何かを探している一団、リンドウ(芹園みやさん)たちがいます。

神隠しに遭った人を組織的に探し出し、神域への行き方を探る。
神域で、何を探しているのでしょうか。神域に、何があるのでしょうか。

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とまあ、拾おうとすれば色々と拾うことはできる、のですが。

導入と断っては居るものの、あまりにボリュームの無い体験版です。
体験版を出すのなら、ボリュームがそれなりに必要だと思います。

プロモーションとしては、小刻みに出せる素材があると助かるのでしょう。
けれども、多くの人は第一印象で作品の印象を決めてしまい、
次に本体験版を出しても、なかなかインプレッションは続かないことが分かってきています。
もう少し大事にしていくのが良いのでは無いかと考えます。
素材は一つで、小刻みに切り出していくほうがリーチしやすいのではないでしょうか。

それとも、その印象の軽さを逆転させるような仕掛けを見出しているのでしょうか。
FANZAさんは大手ですので、期待しましょう。


ビジュアルのクオリティが高く、シーンはLive2D仕様で、なかなか見応えのある仕上がりです。
(公式サイトでは、導入体験版未収録のヒロインキャラクタのシーンサンプルも掲載されています)
ビジュアル面に力を掛けている作品のようです。

次作、あるいは他媒体で続きを語る余地がある作品だと思います。
それくらい、奥行きが作れそうな舞台設定をしていますよね。

とはいえ。
参加するクリエイターさんによって味付けは変わりますが、
満足感といったものはブランドに根ざします。予算や指向性が決定づけられてしまうからですが。
さて、どうでしょうか。


2022年11月25日(金)発売予定です。

絵柄のような展開が無いとのこと。

もったいないですね。今からでも企画を練るべきだと思います。

ダウンロード販売もあります。


体験版2もリリースされました。感想はこちら