Laplacianさんの「キミトユメミシ」感想です。
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2016年発売作品。

Laplacianさんの「キミトユメミシ」は、”キミと夢見る初恋ADV”。

永瀬キミトは、事故に遭ったことで、柊英学園への入学が遅れた。
柊英学園は付属の病院があり、事故から続く頭痛について診察を受けていた。

1週間ほどの期間で訪れる頭痛は、永瀬キミトを必ず昏睡に落とす。
夢の中で、見知らぬ少女と必ず会う……。
検査結果には異常がなく、医師も困惑するしかない。

診察を受けていると、診察室に窓から飛び込んできた西崎由依と出会い、
学園の屋上に、病院に通っている子供達と遊ぶ、ボランティアのプレハブを作っていることを知る。
永瀬キミトもそのプレハブに通うようになり、ある日、子供の一人に香り瓶を渡す。

その香り瓶は、見たい夢が見られるよう、永瀬キミトが調合したもので……。

という導入でした。
それでは感想です。
ネタバレは少しあります。


先に、後発作品をプレイしていました。
初回販売版を買った方ですと、同じようにトラブルに見舞われたと思います。
うまく動作しなかったのですね。

その後、紆余曲折あったのか、エンジンを載せ替えたバージョンを無料公開するに至っています。

ただ。プレイし始めても引っかかる部分があります。

テキストが洗練されていません。
言い回しの誤りなどもありますが、エンジンを載せ替えた版でも、そのまま。
場面の把握がしづらい。
人と人とが仲良くなることの難しさを飛ばして進んでいくところ。
そのため、放って置いてしまった作品ともいえます。

ブランド初作と考えますと。
荒削りではありますが、アイディアは素晴らしいと思います。
明晰夢であること。
他人の夢に入る。香りを導入として。

ただ、アイディアに対して、為す熱量めいたものが少なくも感じます。
例えばディテールを合わせていないところ。
香り瓶には「脱脂綿を入れてある」そうですが、CGでは香り粒なのですよね。

ヒロインキャラクタの全てが、なんというか下品な中身をしています。
キミト達もそういうところがあるので、相性は良いのですが、ヒロインとしては見づらいところがあります。

選択肢進行型であるにも関わらず、整合性が合わないところもあります。
柊真里奈先輩に香り瓶を渡すのを後回しにした場合に、
いつの間にかキミトは生徒会の仕事を幾つも経験し慣れているかのように扱われたり、
何故かモモケンすら、柊真里奈先輩がずぼらであると知っているケースがあったり。
(柊真里奈先輩がずぼらという話題はどのルートにも存在しないようですが見落としでしょうか)
というか、子供向けのピアノ教室の話もそうですが、
柊真里奈先輩に対する情報が抜けている箇所が多い気がします。

共通ルート終わりのイベント、屋上縁日を成功させるために分担した役割を手伝う選択肢配置なので、
キミトはランダムに動き回ることはありえますよね。
でも、そのテストはされなかったように見えます。

良く分からないところで既読判定される。
縁日が終わり、段々と季節が変わり。
そして602号室に気づき、屋上、プレハブ前で由衣と一年前の話をしはじめるとき。
「だけど俺は、目の前の由衣を支えたいと思った。。」

縁日が成功し、クラスメイトからのイメージが払拭されたのは良いとして。
学園の先生全ても、西崎由依を悪い存在として扱っていました。
西崎由依と距離を置かないと評価を下げるぞと、キミトを呼びだして言ってきたくらいですから。
このあたりの解決も無さそうなのですよね。

場面描写が下手なのは仕方ないとして。

なるべくえっちに描きたいのはわかるのですが、
キスってテクニックだと思うので、経験がなければ上手くなるのは難しいはずで、
キミトにしろ、由衣にしろ、上手くなり過ぎだと思うのですよね。

恐らく描き手側の知覚できていないところの描写が足りなく感じます。
第三者には視点や価値観が共有されていないので、どうなっているのかわからないと感じる。
もう少し、手を伸ばしても良かったのでは無いかなと、全体的に感じます。

いきなりの時雨ディクショナリー、キャラクタはエロくしたいという意志など、突出したところはあるので、
後発作品に継承されているところは多くあります。
それこそ、「エロ倫子」シリーズでも。

工口倫子シリーズVol3 人類最強性欲の嫁の姉

でも、「キミトユメミシ」時点から、キャラクタデザインがいいと思います。
シーン中のCG、表情が特に良かったと思います。



さて。以下は蛇足です。

時雨(民安ともえさん)

いきなりこれが始まったときはびっくりしました。

下品エロ担当。
何とかバレー部を一致団結させたいとしている、ようなのですが。
しかし、バレー部では、気の弱い部員のハナ(成瀬未亜さん)の話も聞いていないし、
コミュニケーション不足に見受けられます。時雨も、相手の言っていることを受け止められていない。
全体的に向き合うことを避けてしまっている場が形成されていました。

時雨ディクショナリーは目を引くのですが、夢を見る条件が無視される形で、時雨は毎回夢を見るのがなんとも。

風呂敷広げた部内の衝突も、数クリックで解決するのですよね。
先輩と練習再開する時、あと1日って話だったような気がしたのですが、あと3日に増えましたね。

テキストが不十分で、超能力レベルの察しの良さを発揮することや、時間がワープしたような感覚に陥ることがあります。

頭痛についても、周期があることに気づいているなど、
物語においての、謎を膨らませるための設定作りには成功しているなと感じます。
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柊真里奈(春乃いろはさん)

父は柊病院経営者。母は真里奈を連れ子で柊の家に入ったという流れ。
父に賛同しているのか母も真里奈に対して厳しい。

反発してピアノを弾くことが、いきなり住む家がなくなるやり取りだったの?とびっくりしてしまいました。

夢で流れた曲。いい設定だと思いました。後の作品にも繋がるところがありますよね。
ただやっぱり余韻もインパクトも残した用い方ではないのが、もったいないです。


東条七ノ羽(三代眞子さん)
父親が書店を開いていて、しかし父が頑な。母は死去。
何故か書店にお願いしにくるサラリーマンがいます。

言いたくないことがあるような設定が、さらに父親を説明不十分キャラクタに仕立ててしまっています。

七ノ羽も、ルートに入ることになると、いきなりなのですよね。
誰の夢を見るかを選び、変な夢を見て、一緒に祭を回ることになり、一緒に帰る。
この、帰るタイミングで、七ノ羽は無言アピールしてくるのですよね。
「朝から図書委員なんだー」
「……」
「……」
「あー、じゃあ、朝に行こうかな」……となるような、誘ってくるように仕向けるというか。誘わないのかという圧をかけてくる。

雰囲気作りの段階から、すでに脱ぎ終わったCGが表示されるとか。

夢の中だと責め手にまわる七ノ羽が、三代眞子さんの声質に合っていて良かったと思います。


西崎由衣(桃山いおんさん)

学園では問題児扱いされる、心優しきエロノリツッコミキャラクタ。
これだけ書いていると要素が多すぎるように思いますが、画面には気の良い部分しか映りません。

頭痛からの昏倒を、他人の前で最初に見せたのは西崎由依。
そして、キミトを寝かせて、朝まで付き添ってくれていました。
それだけ距離感を近づけてくれたということでもありますが、心配してか朝まで傍にいてくれるというあたりが、
優しさを見せていたところ。そして、昏睡が続く小鳥遊みこと(あじ秋刀魚さん)のことをも心痛めていたのかなとは思います。

由依は、問題児扱いされた割にとても心が弱い。強がっていたのはその部分のためですから仕方ない。
進行で選択肢が増えますが、どちらであっても。

他人の夢に入るのが楽しいと、満遍なく回っていると、西崎由衣のルートに落着します。
そういう仕様なのでしょうけれども、少し首を傾げました。

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桃井犬太(電卓也さん)ことモモケンがいなかったら、色々と成立しなかったように思います。
彼は、聖人君子でした。