でぼの巣製作所さんの「神楽漫遊記~いぶきとなずな~」感想です。

2022年9月発売作品。

でぼの巣製作所さんの「神楽漫遊記~いぶきとなずな~」は、ローグライクRPGの新シリーズです。
「な? な? ええやろ? 久しぶりに二人でお仕事しよーやー」
「ふぅ……それじゃ準備出来次第、すぐに炎岳神社へ向かうわよ」
再会した嵐山いぶきと雷道なずなは、依頼のあった炎岳神社へ、一緒に……。

それでは感想です。
ネタバレは多めにあります。
km94

発表、体験版から、とにかく楽しみにしていました。

ローグライクRPGの新シリーズとなる「神楽漫遊記~いぶきとなずな~」。
前段の「神楽黎明記」シリーズとゲーム性は共通でありながら、
二人の魅力的なファースト退魔巫女を操作し、異変を調査していきます。

そう、ファースト。「神楽道中記」は2009年発売。
当初は単に巫女と呼ばれていました。

この「神楽道中記」も、ローグライクRPG。
操作は一人のキャラクタで、二人の退魔巫女が一緒に歩いているような形で、交代コマンドを使うことで、それぞれの特徴を用いて探索を進めていく作品でした。

長い時間が過ぎても通用するゲーム性なのでしょう。
それから色々な追加要素を組み込まれつつ、諸々と再登場するのが「神楽漫遊記~いぶきとなずな~」です。

さて。
端的にいってしまうと、「神楽道中記」よりもボリュームは軽いです。
ADVパートも、調査に進むための謎を置いたりすることもなく、ローグライクRPGとしてどんどん奥へ進んでいきます。
最下層のボスを倒すと解決。
修正ファイルがリリースされる前にクリアできた、プレイの早い方もいるでしょう。

そう。大きなバグがあります。
必ず修正ファイルを適用してからプレイをしたほうが良いです。

修正内容には書かれていませんでしたが、とても困る事態に遭遇しました。

一定層ごとにボスが居り、倒すと道祖神に触れることで拠点に戻ります。
ダンジョン内ではセーブができませんが、拠点ではセーブが可能です。
調査を続けるのにも退魔巫女たちが一旦休憩を入れるといった流れですね。

ところが。
ボスを倒して、拠点でセーブしたファイルをロードすると、
何故かボス戦前の会話につながります。かつ、一度負けたかのような会話がなされます。
未クリア扱い。ボスは初登場時に妖怪の名前が表示される演出がありますが、それが再び。
音楽が鳴らなくなります。
ボス戦では何故かレベル1、仲間妖怪も召喚していないので妖術ゲージも空。
必死に勝ちましたが、戻った拠点ではセーブができなくなります。
km90
とても、困りました。
この他、牛鬼に負けても何故か追加ダンジョンが解放されることがあります。

また、後からVer.1.00aを適用しても、仲間妖怪の情報も失われたまま。
Ver.1.00aを適用し、最初からプレイし直す方が安全なようです。
動作の安定感も増します。


話を戻して。
前作「神楽黎明記~ましろの章~」から、わずかにダンジョンボリュームが増していますが、
軽快な操作でクリアまで辿り着くことができると思います。


まず。
体験版や公式ムービーで確認できたように、過去作をプレイしていると、
アイテムなどを引き継ぐ機能があります。

ローグライクRPGは、入るたびにダンジョンが形を変える探索ゲーム。
プレイヤーが1アクションを行うと、同じ階層にいる全ての敵も1アクションします。
武器やアイテムもダンジョン内で拾い集め、難易度によっては持ち替えることも可能。

この、過去作において鍛え上げた武器や妖怪などを引き継ぐことができるのです。
今作の退魔巫女、嵐山いぶきは刀、雷道なずなは槍(薙刀)、防具や妖怪は共通しています。
合計3回選択することになります。
km13
これは、雷道なずなの武器選択。選択肢にあるように、武器を引き継がないことも選べます。

装備を整え、過去作で育てていれば妖怪も引き連れ、召喚して戦っていきます。

新作として、2 in 1であるところの連携。
自動的にサポートが発動するものがほとんどで、能動的に活用できる技がほぼありません。
連携必須といった展開もありませんので、なずなかいぶきかどちらかだけでプレイしクリアすることもできます。

連携技は3種類。
一刀疾風断や激砕流閃衝は、いぶきとなずなが技を連続的に叩き込む、気力消費の技。
連携の最上位である巫女舞・双流神楽は、サポート確率を上げるだけで効果が強くありません。
サポートも、有用なのはガードや鼓舞で、頼りにするほどでもないので、出れば幸運くらいのスタンスで良いと思います。

双流神楽中、まんぷくゲージが減っていると、二人とも力の無い表情になります。
km87
一刀疾風断や激砕流閃衝のカットインは格好いいと思います。
ダメージで見ると、同じ気力消費5ポイントなら、いぶきの鳳鳴斬が高くなることがあるので、
もう少し連携攻撃の係数は増しても良かったのでは無いかと思います。

ダンジョンのボリュームが少し上がっていると前述していますが、5層構造です。
ボスは5体。体験版でも戦える枕返し。なりすまし。倩兮女。子泣き爺。そして最下層には牛鬼となります。

km91
このうち、倩兮女について特筆しておきたいのは。
単体でも厄介だということ。
ボスとして登場した後に、下層でエンカウント妖怪として登場するのですが、
ボスではないから階層に登場する数が多くなる。数が強さになるタイプなのです。

倩兮女は、けらけら笑うと、相手を状態異常にします。
混乱や暗闇などを与えるのですが、近くの倩兮女は、もらい笑いをはじめます。
もらい笑いは、防御力を上げる鉄壁や攻撃回数を増やす韋駄天、攻撃力を増加する豪腕を付与します。
もらい笑いは、ターンに含まれず自動発動します。
場に居る倩兮女が一斉に強くなるわけです。とにかく厄介。
km109
豪腕、韋駄天、鉄壁を付与し合うので、こんな感じに。

これを防ぐのは、無音領域の罠を踏むこと。
無音領域は、その階層全域に、新たに出現した妖怪でさえも沈黙状態にします。

無音領域を展開している方が、敵妖怪は全体的に弱くなります。
妖怪の技の全てが術扱いであるためです。
枕返しは子守唄を使えなくなりますし、
子泣き爺は、子泣きで周囲の妖怪を集めることだけでなく、抱き付きもできなくなります。

ただ。無音領域は罠であるので、デメリットももちろんあります。
とても強く、浄化の符の状態異常無効ターンですら突破してきますし、
食べ物を食べることもできなくなります。
km69
1回無音領域を踏んでしまうと、およそ300ターン無音状態が続きます。
300ターンも過ごしていると、1ターン毎に体力が奪われてしまう妖気充満状態になりやすいです。
戦略として踏むのならば、まんぷくゲージを満たしてからにしましょう。
(警報の罠を踏むと解除されます)

倩兮女をまず仲間妖怪として連れ歩かない。
もし下層で大量になりすましが居たら、無音領域を試してみるのも良いかと思います。


km63
最下層ボスは牛鬼。
攻撃力と体力の高さという正統派の強さがあり、抵抗を貫通し回復できない毒攻撃を持つというボスらしさ。なかなか良かったと思います。

ただ、サマーソルトなどの技は何故使っているのか分かりませんでしたし、
牛鬼は凶悪ながら神様クラスとして描かれることが多いので、
「神楽漫遊記」においても、何らかのストーリー、エピソードを立てて、登場させて欲しかったかもしれません。
また、倒し方に条件を付ける。それこそ、巫女舞を一度使わないといけないとか。
そういえば、「神楽道中記」では巫女舞を舞って鎮めていました。

せっかく新キャラクタをモデリングしても倒すだけになってしまうと、もったいないと思います。


さて。お楽しみのシーンです。
「神楽漫遊記」では、「神楽黎明記」シリーズと同様、一つの妖怪に対し2パターンのシーンがあります。
退魔巫女が妖怪に1回目敗れ、2回目もまた敗れるといった形。
体験版では3つの妖怪のシーンが2パターンずつ収録されていました。

2回目シーンの良さは、1回目があったことを前提に進むということ。
2回目になると、退魔巫女はより乱れるようになります。
体験版に収録されているシーンでいえば、雷道なずなは雲外鏡に対し行為をねだるようになります。

はじめに不満を挙げておくと、過去作で築かれたイメージの通りに、
かつ今だからできるシーンが見たいということでしょうか。

それと。新しいことをやっていくのは良いとして、状況が分からないシーンがありました。
例えば座敷童といぶきの2回目のシーンです。
なずなとのシーンでもそうですが、生やすのは良いとして、では退魔巫女から出るものとは何なのか?悩んでしまいますよね。
シーン中に悩むと、夢から覚めてしまいます。

座敷童とは、いぶきの顔にテキストウィンドウが掛かる構図なのですよね。もったいない。
テキストウィンドウは透過させるとしても、テキストを読まないことはないので。
km85

そして、過去作のイメージ通りに今だからできること、というのは、
先に解決法を述べると、もっとコストのかかったシーンが、長めのシーンが見たいという要望です。

嵐山いぶきと雷道なずなのイメージは、やはり初登場作品に印象付けられています。

嵐山いぶきは、妖怪なるべく協調派。
雷道なずなは、妖怪殲滅派。出身神社の教えが違うのでしょう。

物語に活かすなら、会話が通じる妖怪。あるいは人間を個体と認識するようなタイプ。または悪い人間、などになるのでしょうけれども。
この考え方の違いは、嗜好にも繋がるように思うのです。

雷道なずなは、殲滅派と勝ち気である性質から、負けて抑え込まれても「このぉ」と反発する。
この声こそが北斗南さんですよね。
スレンダーで全体的に小さいから、鬼のような巨躯に翻弄されてしまい、肉体的にはギリギリでもされていることを心地良く思ってしまう。
これはなずなに小さい自覚があるからだと思うのです。内なるマゾヒズムが刺激されているのかもしれません。

嵐山いぶきの場合は、身体を自由にさせるわけではないけれど、いつものノリで説得したり拒否する。ここが協調派なのでしょう。
場合によっては、おしら様のように意思疎通が成立する妖怪のみせる優しさには、身体を開いてしまう。
ある意味、マターナルに近いのだと思います。
そして、いぶきの肉感的な身体は、反応が良い。

ちょうど、「神楽道中記・想」に掲載されるサンプルCGがそうですよね。
化け狸に小さい身体を抱き抱えられても、蛇に巻き付かれても、キッと睨むような雷道なずな。
後ろへ回る河童に「そんなところせんといて!」、化け狸にしがみつくように「そんな風にしたらダメになる!」と声が聞こえてきそうな嵐山いぶき。
このイメージです。

それから10年経過していますが、雪都さお梨さんも北斗南さんも変わらず良い演技してくれます。

雷道なずなは、体験版でも見られますが、枕返しとのシーンでみせた勝ち気な性質が活きていて良いと思います。
嵐山いぶきも、相手の行為を受け入れる様が、とてもらしいと思います。

今作で目を見張るのは、なりすましと倩兮女とのシーン。
なりすましは、対象の近しい人に化ける。
倩兮女は、捕まえた相手に憑依しコントロールを奪う。

当初、同じ性質の妖怪を出してシーンが被りそうと思っていましたが、なかなか凝った構想でした。

なりすましは、もう一人の巫女に化ける形です。
嵐山いぶきを襲うのは、雷道なずなに化けたなりすまし。
この場合、雷道なずな役の北斗南さんが、妖怪として責め手に回るのですが、これがまた良い味を出しています。
責められる嵐山いぶきは、なりすましに指摘されたことに動揺してしまう。
「も、もしかしてウチ、ほんまになっちゃんのことを……?」
嵐山いぶきも、雷道なずなの姿と声とで、より聞き入れやすくなってしまったのでしょうね。
いつものノリの良さがなりを潜めて、真剣に考え込んでしまう声音が、心の隙間ともいえる表現に感じました。

倩兮女は、身体のコントロールを奪って、意識を押し込め、感覚だけは与える器用な存在です。
口から出るのは間違いなく雷道なずなの声。でも雷道なずななら決して言わない誘い文句。
倩兮女は、自由に肉体を使いたいだけで、雷道なずなの意識が戻っていなくても良さそう。これもなかなか良いと思います。
初めての痛みすら楽しんでみせるのですから。
km94
なりすまし、倩兮女。
どちらも、責め手として演じる場合は、本物の嵐山いぶきや雷道なずなとはわずかに声音が違うのですよね。
これは本当に巧いなと思いました。

倩兮女、なりすましだけでなく、シーンCGはなかなか良いです。
差分もボディラインも魅力。子泣き爺とのいぶきの表情もなかなか良いと思います。
km56
牛鬼とのCGも良いですね。巫女服への汚しもあり、より敗北感が出ていると思います。


「神楽漫遊記」のシーンには満足しているところも多いのですが。
だからこそ、実力に見合った長さのシーンがあっても良いはずなのです。

体験版で味わえる、雲外鏡のシーンは、雷道なずなが堕ちるのが早すぎます。
枕返しのシーンは、その直後の雷道なずなが見たいですよね。
たぶん、なりすましとのシーンでは、二人とも、なりすましを大分受け入れていくのではないでしょうか。
倩兮女は欲の強さをみせてくれていますが、相手はたくさんいるでしょう。

うん。そういう流れでした。
良かったのです。だからなお。もっと見ていたいのです。
km95

(バディ物なので、やっぱり最後の選択肢は逆の結末に設定するのが正しそうです)


今作は、二人が場にいるために拠点会話があり、これも雰囲気が良かったです。
面白かったのは、「神楽黎明記」シリーズでの戦いが、あったこととして描写されていること。

これはユーザとしては嬉しい描写ですが、一方でキャラクタの寿命に繋がるので、勇気の要ることです。

エンディングのCGイラストがとても良いですね。
二人は太妖牛鬼を倒し、炎岳神社を救いました。その勝利を二人で分かち合っている場面です。

「神楽漫遊記~いぶきとなずな~」以降のシリーズはどうなるのか、楽しみに待ちましょう。



ダウンロード販売もあります。
一定期間、20%オフとなります。


#追記
特別ダンジョン、「帰らずの迷宮」「物いらずの迷宮」は今回も実装。
手裏剣は格安しかドロップしないなど、仕様は「神楽黎明記~ましろの章~」と共通です。

本編の敵レベルは41までですが、追加ダンジョンはレベル61までとなります。
単純にレベルが上がるだけでこんなに強いのかと思えることでしょう。

倩兮女が厄介なことは本編通りなのですが、なりすましもかなり強くなります。
km89
なりすましは、いぶきとなずなの性質を受け継いでいます。
隼猛襲斬で一気に近づき、その後は一刀両断を連続的に放つのです。
気力ゲージが無いと、こんなに強敵になるのですね。

km96
なずなのなりすましは、足払いで麻痺させ、火炎の符を連発してきます。
火炎の符の被ダメージは135程度。対策しにくいのも問題ですね。
なりすましも、複数登場することがあるので注意が必要です。

特別ダンジョンの下層では、敵妖怪がとにかく技を多用してきます。
雲外鏡は反射性能も高いので、鏡像を使ってきたら格安手裏剣を投げましょう。