Triangleさんの「魔法戦士 memory of gray」感想です。

2022年3月発売作品。

Triangleさんの「魔法戦士 memory of gray」は、“戦う変身ヒロインADV”、魔法戦士シリーズの完結編へ繋がる物語です。

キールを追うエメロードナイツは、突如現れた人工的な怪物が発する光に飲み込まれてしまう。
「お、おおおお、おおおおお、おおおおおおおおお、俺様の世界にようこそぉぉお!」

次にエメロードフィーネが目を開けると、視界に飛び込んできたのは暖かな太陽と一面の緑だった。
夜の街はどこにもない。
あの怪物が使った光は空間転移の魔法なのか。しかし知識の中にない動植物がいくつも存在している。
とりあえず探索を始めたフィーネは、しかし魔物の仕掛けた罠に掛かる。
そのフィーネを助けたのは……。
「キ、キール……!?」
キールにしか見えない少年。しかし髪の色はわずかに違う……灰色だった――。

という導入でした。
それでは感想です。ネタバレは少しあります。
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間もなく発売予定の完結編「魔法戦士FINAL IGNITION」をプレイする前にプレイしておくと、
キャラクタの関係の整理に役立つかもしれません。


しかし、必須ではありません。
今作で知った事情を、キャラクタ達は忘れてしまっています。
幕間の物語として処理されていますし、敵の一部は情報を知ったようですが、興味を持っていないようです。
そして、ユーザ視点では、情報の羅列に収まっているためです。

さて。
今作もシステムはPIX STUDIOです。
演出においてはもっと機能を発揮できるシステムのはずなので、もう少しがんばってほしいです。

残念ながら、今回も声の音質が酷いです。
動画配信サービスを使って会話をしている音質より悪いです。
音の一部が欠けたまま収録されており、キャラクタの名前を違えて発しているかのように聞こえる箇所すらあります。
これらはもう諦めるしか無いのかもしれません。

BGVは単調ではありません。これは良いと思います。

シーン中においても音楽の切り替えに首を傾げてしまう箇所があります。
例えばシーン中、キールが達した瞬間に、その音楽に切り替わるのはどうしてなのかと。
終わりを示すならもっと後に曲変更指定するべきで、しかもシーンはまだ続いていきます。このタイミングで変えた理由がわかりません。

そして、エメロードフィーネの良さは、瀬之本久史さんが描くビジュアルにあると思いますが、
瀬之本久史さんが描いていないと見えるイベントCGがあります。
独特な線をお持ちの方なので、差が明らかなのですよね。

色々と手が回っていないかな、とは思います。

全体的な質はさておき、冒頭は、少し期待させる展開でした。
異世界。
エメロードナイツたちが過ごしていた場所とは生態系に違いがあるようで、錬金術を活かしてエメロードフィーネの探索が始まるのかな、と期待しました。

残念ながら探索できそうな異世界ではなく、過去のロア。
キールの記憶の世界であり、魔物なども見知ったタイプが現れ、エメロードナイツたちを襲います。

エメロードナイツたち二人は、記憶の世界を進み、過去に何があったのかを、過去のキールと行動を共にしながら、知っていきます。
たぶん、制作陣としては、完結編前にキャラクタの関係を提示したかったのだと思います。

キールは少年時代に既に自分の出生と、取り巻く環境をも知っていたこと。
既に追われる立場であること。
一人ではないこと。二人の女性がキールを守っていたこと。

それよりも今作で目立ったのは、エメロードナイツ二人がキールに好意を抱いていること。

捕らえた男達を相手にしていても、キールのことを言われると身体の反応が増してしまうミスティ。
キールを守るために身体を差し出し、そしてキールとも積極的に交わるフィーネ。

ミスティを捕らえた男達が、キールの性教育係かと揶揄するのですが、
一方その頃、別な場所では、フィーネが少年キールに性の手ほどきをしている展開。

「いいんですよ」と少年キールを何度となく慰めながらのシーン展開は、
しかし直前まで狼相手におほ声出してたことをすっかり忘れていて、切り替えが早すぎるフィーネに唖然としましたが、精神的にタフなのでしょうね。
(あるいは慣れ。慣れがあるということは乱れるのも演技の色が強くなりますが)

そして、「全部受け止めますから」。

現在の、成長したールに鳴かされているのは、フィーネの手ほどきのせいかもしれません。
夢で体験した過去は、現在にフィードバックされないわけではないようで、
全てが終わると、エメロードナイツ二人は、キールに対し保護欲を抱いているのです。

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ミスティは、治療法だと言いながらキールに傅く。
一回で終わらないところがポイントです。
キールに対し勝ち誇りますが、やっていることはキールの情婦でしかありません。
銀髪の魔王メッツァーに従うココノ・アクアの役回りです。

つまり、「魔法戦士 memory of gray」は、エメロードナイツ二人と敵役キールとの蜜月を見る内容になっていました。
面白かったと思います。

トドメは、フィーネはキールと恋人同士の生活を夢に見ます。
見せられたともいえるのですが、可能性や指向性が無ければそんな夢に堕ちない。
「愛してるぞ」と囁かれて達するフィーネはもう、向こう側へ行ってしまいました。

ミスティはキールと手を恋人繋ぎにしながら。
キールのキスを求めて、深いところでぶつけてもらうために足を回すミスティはもう、相手をパパと呼ぶ準備ができているようです。

そして、悪夢にはキールは出て来ないのです。

確かに、必要な前置きなのかもしれませんが、
エメロードナイツ二人が既にキールに堕ちていることが示されたので、完結編を見るテンションが少し下がってしまいました。
開封は少し遅くなりそうです。
これだと、キールに傅くか、キールをくわえ込むか、どちらかの展開になりそうで。

夢の世界を抜け、元の世界に戻ったフィーネは、キールに触れられ抗議しますが拒絶はしないのです。
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完結編後にファンディスクが出るとして。
エメロードナイツがキール正妻の座を争うことがあるかもしれません。コメディ要素を入れて。
それも良さそうですね。二人ともキャラクタは良いので。

残念ながらシーンは楽しめなかったのですが、今後の発展について考えることができたのが良かったなと思います。
魔法戦士 memory of gray

ダウンロード販売単体でも購入可能ですが、「魔法戦士エメロードナイツ」「魔法戦士イクシードナイツ」をも収録した、「Triangleコンプリートディスク7」もあります。