エスクードさんの「戦巫<センナギ> ―穢れた契りと神ころも―」体験版プレイしました。

2023年10月発売作品。

エスクードさんの「戦巫<センナギ>」は。

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長らく、魔性と人が交わって産まれた夜魔との戦いを収めてきた桜舞神社。
しかし、地方の守護のひとつ、岐山御劔神社が焼け落ち、神剣が失われて、
桜舞市でも夜魔の活動が活発になってきている。

夜魔の中でも強い力を持つ銘持ちが現れたとの情報を得た桜舞神社は、
当代の戦巫に、神事を行うことを決定する。

神事とは、戦巫の身と心を捧げる、特別な儀式。
戦巫の神子園姫華に力を与える“依代”、伏守奏真は桜舞神社に招聘され……。

という導入でした。
それでは感想です。ややネタバレあり。

うん。全般的に楽しんで最後までプレイできました。
体験版で抱いたイメージ通りではありませんでしたが、全体的にまとまっていて、一通り描き切ったと思います。

冒頭、燃え落ちる岐山御劔神社での場面がとても活きていて。
目的のためなら殺す、殺す前に使う。
逃げてきた同族の夜魔だろうと躊躇いなく殺す。

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容赦の無さ。

これに対し、襲撃を受ける側の人類が擁する戦力、戦巫は、どう戦うのか。
体験版から受けた物語イメージは、殺意しかない敵に対して、人らしく立ち向かう物語。

進めていくと、少し様相が違います。
意外にも、銘持ち夜魔は人との接触を楽しんでいたり、
暴走した伏守奏真に組み敷かれても、何度も向かってくる。

そうしていくうちに、銘持ち夜魔たちにも望みがあるということを知る。

すると、そうであってほしい希望もあるからか、
確かに銘持ち夜魔も魅力的には見えてきます。

一方で、体験版で抱いたイメージとはズレが生まれます。

もう少し、あと一ひねり、シナリオにあると良かったなと思ったり。
例えば、体験版で見せてくれた、神子園姫華の信念。
夜魔であろうと殺さない。
これを選択させることがあっても良かったと思っています。

もしかしたら、それを丸ごと削ったのかなと感じる箇所もあるのですが。

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ゲームパートでも。
マップ移動について、ちょっと誤解していました。
ボードゲームのようなイメージで、隣接しているマスには移動できるのですが。

画面右上、青のADVイベントマスに止まることができるのが4回。
これを越えると、ボス戦しかできなくなる。
もし、ボスマスに隣接しているマスまで進めていなければゲームオーバー。
夜か昼かは、青マスのイベント回数で決まっている。選べません。

マップ上の青マスは5つ。しかし止まらなくても進行したことになる青マスがあり、
つまり、一本道なのです。
これが、少し残念に思ったところ。
キャラクタを深く広くを見せるのであれば、クリアに関係ないイベントマスがあっても良いと思うのです。

また、神事と呼ぶが一般的は親しい間柄の相手とすべき行為を、軒並み現在進行形で経験していることと、学園の友人に知られてしまったらと気に病むところ。
これも、派生があってもよかったのかなと。


それらがなくて。
物語としては、こぢんまりとしてしまったともいえるのですが、
最初に掲げた夜魔との戦い、桜舞の歴史はきちんと表現されていた、まとまっていたと思います。

要素として用意した、神事も面白かったと思います。
戦巫、神子園姫華を、依代の伏守奏真が責める。行為を神に捧げることで戦巫は力を得る。

その伏守奏真は夜魔で、夜魔の性質上、興奮状態になると行為が暴力性を持ちます。
これにより、神事も暴力的に、銘持ちに対しても一方的に責めようとします。
神事においては儀式の興奮状態がうつるのか、姫華は興奮に飲まれていきますし、
銘持ちも同様。
シーンはかなり楽しめます。
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神事においては、冷静状態と興奮状態と、複数バージョンあります。
状態によってシーンは短いのですが、これは、パワーアップという側面があるためでしょう。


姫華役の青葉りんごさん。
状況把握が正しく、神事のやり方にそった演技が聞けます。鼻だけで呼吸をしているかのような演技をマイクに乗せてくれている。
凛とした戦闘場面でも、年頃のキャラクタらしく生活を楽しんでいる様も、見事ですね。

姫華は、実に深掘りされたキャラクタです。
その表現は、テキスト上においても、イベントにおいても。
そして、青葉りんごさんの演技からも伺えるようになっているのです。
どこまでもヒロインだなと、プレイしていて感じ続けさせられました。

ゲームのためにシステムがあり、
ストーリーのためにシステムがある。

そして、その解説もきちんとなされている。ここは本当に良いところ。

きちんと戦っている。
その上で戦うのに必要なシーンがある。

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神社敷地内で会話していると、緑に囲まれた桜舞神社を表すかのように、木葉擦れのSEが入ります。
これが、重要な会話の際にも入っていて、会話の内容が際立つ。
伏守奏真は学園にも潜入することになりますが、依代とは知られてはいけない定めのため、
正体を隠しています。
学園の“奏真くん”は、依代の“犬咬”ではない。
学園内でのサポートに“奏真くん”となっているが、犬咬として面を被って接する、桜舞神社での会話は、
身体の接触はしていても、距離感や立ち位置を表しているようでもありました。


シナリオにおいては、もう少し先まで見たかった、もう一山欲しかったと、改めて思います。
ここまできれいな構成によく仕上げたなと思います。
でも、もう少し驚かせて欲しかった。

サブはあくまでサブ。そういう切り上げ方ではなくて、そういう道先もあると見せて欲しかったところ。
そう思ってしまうのは、サブキャラクタもかなり魅力があるから。

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例えば、廻鬼エル(乙倉由依さん)。
ノリがよく気分屋で飽きっぽい。仲良さそうに話し掛けてきたかと思ったら、突然狂気を向けてくる。
体験版をプレイして、衝撃的な登場場面に驚いた方もいるでしょう。

でも。ストーリーを進めていくと、魅力をどんどん見せてくれます。
プライベートの時間を持っていること。
ストーリー中に見せてくれるわけですが、意外性があること。
ファッションに近いキャラクタ性。
そして笑顔差分がとてもかわいらしい、のですが、この笑顔は、性格の良いキャラクタなのですよね。
近しい人を守る。

キャラクタの見せ方が巧かったとも思います。
最初にショックを与えて、そうでない面を見せていく。

シーン中でも同じです。負けず嫌いな部分が出ていたり。魅力的です。
すごくかわいらしいと、思えてしまいました。


サーリャ(君島りささん)、ムツ(倉下撫子さん)、シャルロッテ(叶一華さん)。
それぞれが良い設定だったとも思います。
例えば、全員、初めてではない、とかね。

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なんといっても、メインキャラクタの神子園姫華ですよ。
キャラクタデザインが素晴らしく、センナギ服、学園、私服、巫女服と、様々なデザインがあるのですが、
どの服デザインも良いですよね。スタイルの良さも伝わります。
シーン中ももちろん。

神子園姫華の良さは、その信念と、幼い頃に育んだ思いを大事に過ごしているところ。
そして、人と夜魔とが暮らす現在の桜舞を大事に思っているところ。
正統派キャラクタなのですよね。
こんなにも真っ直ぐなキャラクタをメインヒロインにして物語を収めた。
これだけでもすごいと思います。この時代に。

そこからブレてしまうから、選択を迫ったり、敗北してしまう終わりを付けなかったのかな、とも。
ストレートなキャラクタは、ストレートに終わりを与えてあげるからこそ、なのかも。

そして、青葉りんごさん。やっぱりすごいですね。
青葉りんごさんで良かったと思います。いろんなことをしても、辛い戦闘をしても、心が折れそうな場面に出くわしても、最後まで神子園姫華でした。


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すごく残念なことは、徒野さくや(花月さやさん)のシーンが無かったこと。
もったいない。こんなかわいらしいデザインなのに。
委員長。周りに気づいたり気を遣ったりもできて、
転入生の奏真とも親しくしてくれるだけでなく、神子園姫華との仲を取り持ってくれたりもして。
また、花月さやさんの配役が良いなと思える。
これは本当にもったいないです。




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