でぼの巣製作所さんの「神楽新風記~愛莉の章~」感想です。

2024年9月発売作品。

でぼの巣製作所さんの「神楽新風記~愛莉の章~」は、ローグライクRPG。
依頼により訪れた村で、篠宮愛莉は話を聞く。
「木こりが突然蔦に巻き上げられたという報告がございまして」
「それは……安心して森に入れなくなってる?」
妖気の強い場所を捜し、篠宮愛莉は竹林へ向かう……。

という導入でした。
それでは感想です。ネタバレは多めにあります。




3Dモデルに変わった、「神楽新風記」シリーズ2作目です。
ゲーム内容としては、長年続いている神楽シリーズ同様の、ローグライクRPG。
キャラクタを1歩動かすと、フロアにいる敵も1歩動くといったターン制のRPGです。

ダンジョンに潜り、最下層にいるボス妖怪を倒すことで村の被害を治めるものとなっています。
登場する妖怪に退魔巫女が負けてしまうと、ゲームオーバーになってしまうこともあります。

体験版では上層「囁きの竹林」のボス、靫蔓と戦うところまでがプレイできました。

篠宮愛莉は薙刀を武器としています。
kr40
スタイルとしては、犬童ちはや、武居涼香、遠野舞歌、九重梓紗、雷道なずなと、多くの退魔巫女が使うように、
1マス先まで攻撃を届かせることができます。
代わりに、刀を使う退魔巫女に比べて、わずかに攻撃力が低い。
敵が固いか、数か多いか、敵の攻撃力が強い場合に不利となりますが、
今作では、陥るのは数が多い場合と、敵の攻撃力が強い場合です。

中層「泣き叫ぶ雪山」、下層「畏れの樹海」で、雪女が登場します。
篠宮愛莉と同じ1マス先の距離から、ダメージの高い氷結攻撃を放ってきます。
kr41
15層の雪女の氷結ダメージは70。
篠宮愛莉の抵抗値にもよりますが、愛莉の体力は概ね400程度。
雪女を1体倒すのに3ターン程度かかりますので、雪女1体を相手すると、愛莉の体力は半分に。
これが同時に2体、3体と数を増していったり、回復が万全でない状態で2体目と戦うことになることもあります。
雪女が近づいてくるのが見えたら、体力を回復させたり、拾った手裏剣などを投げて雪女に先制を仕掛けるほうが良いでしょう。

脅威度から見ると、道中で出会う雪女の群れは、最下層ボスを上回ります。

最下層ボスは狒々。
kr33
ボスなので体力や攻撃力は高いのですが、デザインされる蛇尾と同時攻撃されるといったこともありませんので、
道中でしっかり探索し、良い衣を身につけて、タミフリンなどで回復しつつ攻撃をすると倒せます。
前述の、雪女を仲間妖怪として召喚すると、さらに安定すると思います。


さて、お楽しみのシーンです。
シーン相手は妖怪。それぞれの能力で、退魔巫女を組み敷いてきます。

前シリーズ「神楽黎明記」ではバッドエンドがひとつだけでしたが、
バッドエンドを複数搭載しているところが、「神楽新風記」の特徴。
がんばって戦う退魔巫女が、酷い目に遭ってしまう。それが3回見られる。

見られるポイントは、各層にいるボスに2回敗れ、敗北を受け入れること。

シーン構成、責め手の妖怪たちの行動は、過去作に沿ったものとなっているため、
目新しさは乏しい。

ですが、今作の特徴は、篠宮愛莉を演じた、蒼乃むすびさんにあります。
kr43

蒼乃むすびさんのすごさは、テキスト等を超えて伝える演技にあります。

篠宮愛莉は、やや低テンションのキャラクタ。
しかし、退魔を成功させて帰還した、同僚の花村みくるに対抗心を抱いており、
やる気をみせるところもあったり、それなりに考えて選択するなど、
キャラクタ要素はある程度提示されているわけです。
それを、増幅させているのは間違いなく、蒼乃むすびさん。
ボリュームのないシナリオであるため、ちょっとしたトーンからキャラクタを表現する必要がありますが、
本当に巧い。
これはぜひ、本編を読み進めて欲しいところです。

ちょっとした拒否や拒絶、嘆きや悲しみ、
それらと官能に陥る変化をもしっかりと演じてくれています。

これまでとキャラクタが違うことを伝えつつ、
責め手に反応してしまう、身体の敏感さも伝えている。

これはでは2回目のシーンのためにあるようだった、1回目のシーンも楽しめています。


テキストやイベントCGは、手放しで褒められるわけではありません。
短くて理由の理解が及ばないまま進んでいくシーンシナリオ。
誤字も多く、読んでいて引っかかる箇所があります。

“登り積ませる”と書いたり、“上り詰める”と書いたり。
kr42
状況にも寄りますが、シナリオは演技指示といえます。
誤字を無視し前後を読み取って乱れる演技をしてくれていますが、
さすがに“催涙効果”は、演じる声優さんに負担をかけると思うのです。
(2行下では“催淫効果”と書かれていますが、書く際に目が届かなかったでしょうか)

大事な箇所を隠して見映えがなかったり、描き手が違うと思えるイラスト。
これは本当にもったいないと思います。
それと、エンディングも。手に持たせるものとキャラクタの動作とが合っていない。
このエンディングは、キャラクタを見せるための場ですが、
そう仕上げられていないのですよね。


例えば、シーンシナリオ中では、わずかながら段階を踏んでいるのですが、
表示されるイベントCGは、既に巫女服がはだけていたり、油にまみれていたりします。
こういう箇所を、手間であっても別CGとして用意し、クリックして進めていくようにする。
こだわりの領域です。

これを、やっているサークルブランドが多いのです。同人ジャンルでは。
段階を踏んで、惹き付けようとする。
そういった比較されてしまう領域に踏み込んでしまっているのですよね。


そんな中でも、過去作ではあまり楽しめなかった子泣き爺のシーンなどは、
篠宮愛莉のキャラクタとも合っていて良かったと思います。

抵抗しなきゃいけない、と思っているけどかなりガードが弱くなってる、
「は、離して……」などの素晴らしい声の演技が聴ける、靫蔓の2回目もいいと思います。

過去、幾作も重ねてきたからか、
餓鬼の1回目のテキストなど、描写が細かくなってもいます。
その後も見ていたいと思うくらいに。
(2回目はどちらかといえば一方的になってしまっていて愛莉の反応がうすいのがもったいないです)

狒々との2回目、汗を表現したCGもいいですね。

篠宮愛莉は、胸が弱いというより快楽に対する耐性がないのですが、
それが要素としてキャラクタの根幹になっているように感じられるのがいいと思います。
一見、そうは見えないけど、妖怪の企みに応じてしまうのも仕方ないと納得できる。

また、敗北後の帰還が、なかなかいいですね。
いちばん、篠宮愛莉らしさを感じます。

kr44

さて。無事に退魔を済ませた篠宮愛莉。
神社に戻れば、花村みくるとどんな会話をするのでしょう。
そして、もしかしたら、一緒に退魔に出向くこともあるのかもしれませんね。




ダウンロード販売もあります。


#追記
バグというほどではないのですが、
シーンテキストの改行位置がおかしかったり、文字が被って表示される箇所があります。